夏休みも残りわずかとなった8月20日、鹿児島・錦江湾で中学生を対象とした体験航海イベントが行われた。鹿児島水産高校の実習船「薩摩青雲丸」に乗り込んだ中学生たちは、操舵室でのハンドル操作やはえ縄漁の実物展示など、普段は目にすることのできない「海の仕事」を2時間かけて体験。「漁師のお父さんの後を継ぎたい」「将来へのわくわくが大きくなった」と、子どもたちの目に確かな輝きが宿った。
期待と不安が入り交じった表情で船に乗り込む
イベントは、海や船、魚に興味を持つ子どもたちに進路を考えるきっかけを提供しようと企画されたもの。午前の部には県内各地から中学生あわせて26人が参加した。
船は午前9時半に鹿児島港を出港。未知の体験を前にした子どもたちの緊張感と高揚感が入り混じる船出となった。
操舵室でハンドルを握り、実際に「動き」を実感
最初に向かったのは操舵室だ。乗組員から通信用の無線やレーダーなどの役割について説明を受けた後、子どもたちは実際にハンドルを握ってみた。
乗組員が「動いているのが分かるでしょう?」と問いかけると、中学生からは「お、おお~!」と驚きの声が上がった。画面や教科書の中だけで知っていた「船の操縦」が、手の感触を通してリアルなものとして迫ってきた瞬間だ。

780本の針、マイナス60度の冷凍室――漁業の「本物」に触れる
甲板に出た後は、鹿児島水産高校の生徒たちが実習で実際に行っているはえ縄漁について説明を受けた。同校では年間約45日間この船で漁に出ており、マグロなどを水揚げしている。
乗組員の説明は具体的だった。「約60kmの長さの縄を流します。それに針が780本ついている。本物の針だからね、マグロ漁の針」。この言葉に中学生たちは「リアル~!初めて見た!」と声を上げた。

さらに、獲った魚や食料を保管するマイナス60度の冷凍室、船のメインエンジンや発電機が並ぶ機関室も見学。漁業と船舶運航を支える技術の全体像を、体で感じながら学ぶ2時間となった。
「漁師のお父さんの後を継ぎたい」――子どもたちの言葉に宿る未来
体験を終えた子どもたちの口からは、将来への具体的な思いがこぼれた。
長島町の獅子島から参加した中学1年生は、「はえ縄漁の針は数百本あるのに、5匹くらいしか釣れないことがびっくりした」と率直な驚きを語りつつ、「夢は漁師のお父さんの後を継ぐこと」と力強く話した。島で暮らし、身近に漁業を感じながら育ってきた子どもにとって、この体験は夢をより具体的なものとして映し出したはずだ。

船の操縦に一番の興味を持って参加したという中学3年生は、「船に乗るのに興味があって、一番の目的だった運転ができてうれしい。将来へのわくわく、楽しみが大きくなった」と笑顔を見せた。
鹿児島水産高校の上田勇一校長は「子どもたちの人生選びの少しでも助けになれば。明るい表情で満足して帰ってくれたのではないか」と語り、イベントの意義を穏やかな口調で表現した。

夏休みの終わりに錦江湾で得たこの体験が、地域の海と向き合いながら生きることを選ぶ、次の世代の背中を押す一歩になるかもしれない。
【動画で見る▶【体験航海】水産高校の実習船 将来を考えるきっかけに 鹿児島 】

