2026年7月の熊本地震をはじめ、全国で災害が相次ぐ中、「ドローンを使って世界中の人を救えるのでは」と語る14歳の中学生がいる。鹿児島県霧島市の日当山中学校に通う中村輝斗さんだ。民間資格「ドローン減災士」に全国最年少で認定された彼は、資格取得からわずか約10日後に熊本の被災地へ赴き、早くも実績を積み上げている。人を助けたい一心で奮闘する14歳の姿を追った。
「全国最年少」の操縦士が通う、霧島市の中学校
鹿児島県霧島市隼人町にある日当山中学校。3年生の中村輝斗さん(14歳)は、同級生からも「その場の雰囲気を盛り上げてくれる」「臨機応変に対応できるので、落ち着いて対処ができそう」と評される存在だ。
しかし彼には、その明るい人柄に隠れた「もう一つの顔」がある。ドローンの前に立つと表情は一変し、真剣なまなざしで機体を見つめる。リモコンを操る指さばきは数センチ単位の精密さで、その繊細さはとても中学生とは思えない。
輝斗さんは2026年7月、災害現場でドローンを活用して被害を抑えるための民間資格「ドローン減災士」に、全国最年少で認定された。2021年に始まったこの資格は、現在全国で約400人が取得している。
ドローン減災士とは何か
「土砂崩れや浸水した地域は危険で人が立ち入れないが、ドローンなら安全に上空から状況が把握でき、情報伝達のスピードが格段に上がる。夜に体温を検知して遭難者を探すこともできる」

そう語るのは、ドローン減災士協会鹿児島支部の小森園豪支部長だ。人が足を踏み入れることができない被災地でも、ドローンであれば上空から迅速に状況を把握できる。夜間の捜索では熱感知機能を使い、遭難者の体温を検知することも可能だ。技術の発達が生み出した新たな被災地支援のかたちが、ドローン減災士という存在である。
自分が被災した経験が原点に
まだ中学生の輝斗さんが、なぜこの資格を目指したのか。そこには自身の被災体験があった。
2025年8月8日、鹿児島県内で線状降水帯が2度発生し、霧島市に大雨特別警報が発表された記録的な豪雨。輝斗さんの自宅がある霧島市の日当山地区は、特に浸水被害が激しかった地域のひとつだった。
「目の前が全部水で川みたいだった。花壇も全部水に浸かっていて、水がここまで来ていた」
生まれて初めて感じた命の危機。幸い、家族にけがはなかったが、水が引いた後は断水が続いた。災害の恐ろしさと、被災後の生活の不便さ。その両方を肌で経験した輝斗さんが、そのあと出会ったのが「ドローン減災士」という存在だった。
「『みんなの役に立ちたい』と、小学生のころから気持ちがあって資格を取ろうと思った」
1日3時間の勉強、そして認定へ
思い立った輝斗さんはすぐに行動に移した。減災士の講習を受け、資格取得に向けて勉強を重ねた。弟の瑛士さんは「3時間くらい勉強をしていた。教科書を見たりしていた」と、兄の努力を振り返る。
そして2026年7月、ついに念願のドローン減災士に認定された。地道な努力が実を結んだ瞬間だった。
認定10日後、熊本の被災地へ
認定からわずか約10日後の2026年8月、輝斗さんのもとに早くも依頼が届いた。同年7月の熊本地震で特に被害が集中した八代市で、家屋の被害状況を確認する調査だ。
現地で目にしたのは、古い家屋が何軒も倒れた光景だった。「古い家が何軒か倒れていて、自然災害の怖さを見て感じた」と輝斗さんは語る。自身の被災経験とも重なりながら、学んだ技術を生かして調査を行った。
そして調査を終えたとき、家主からかけられた言葉が輝斗さんの胸に深く刻まれた。「家主さんに『ありがとうございます』と感謝され、人の役に立てたと実感した」。ドローン減災士として大きな一歩を踏み出した瞬間だった。
体育館で見せた「5分で発見」の技術
取材当日、日当山中学校の体育館でドローンの操縦技術を披露してもらった。「今週届いた」と自慢の機体を手にする輝斗さんの表情は、誇らしさにあふれていた。
実際の捜索能力を試すため、記者が体育館のどこかに黄色いボールを隠し、ドローンで探してもらうことにした。
チャレンジが始まると、輝斗さんはまず上空から体育館全体を俯瞰する。続いて機体を精密に操作しながら、隅々まで丹念にチェックしていく。そして2階の柱の裏を調べたとき、「黄色いボールが見つかった」と輝斗さんが言った。
広い体育館の中から小さなボールを見つけ出すまでの所要時間は、わずか5分。一分一秒を争う災害現場において、この技術の高さは多くの命を救う可能性に直結する。
「世界中の人を救えるのでは」
輝斗さんはドローンへの思いをこう語る。「ドローンを活用して、たくさんの人の命を救っているのを見て、ドローンを使ったら世界中の人を救えるのではと思い資格を取ろうと思った。少しでも多くの人を救えるように頑張りたい」

霧島市での被災体験が生んだ使命感は、今や「世界中の人を救う」という壮大な夢へと育っている。同級生が「臨機応変に対応できる」と評した彼の気質は、まさに予測不能な災害現場で最大の強みになるだろう。
「一人でも多くの人を救う」という思いを胸に、ドローン減災士・中村輝斗さん14歳の挑戦は始まったばかりだ。
【動画で見る▶【全国最年少】14歳のドローン減災士 豪雨を経験し「人を助けたい」 鹿児島・霧島市】

