鹿児島県内の中高生が東南アジアのラオスに滞在し、現地の子どもたちと書道や折り紙を通じて交流した。言葉は通じなくても、笑顔と笑い声が飛び交う特別な時間となった。そして訪問先では、日置市伊集院町出身の青年海外協力隊員との出会いもあった。「鹿児島名物『しろくま』を今すぐ食べに行きたい」——郷土への愛着を語りながら現地での使命に力を尽くす彼女の姿が、中高生の心に深く刻まれた。全3回シリーズの第2回。
「今から何が起きるかも、ラオス語で全然わかっていない」
朝早く、家の外に出てきたのは鹿屋高校1年の牧美乃莉さんだ。気づけば見知らぬ伝統的な服を着せられており、「今から何が起きるかも、ラオス語なので全然わかっていない」と状況を受け止め切れていない様子だった。

ほどなくして近所の人たちが次々と外へ出てくる。遠くからやってきたのは、オレンジの服をまとったお坊さんたちだ。行われていたのは、食べ物やお金などを捧げる「托鉢」。牧さんは「もち米が熱すぎて渡すのに手間取る。宗教が日常的に強い関わりがあるのかな。日本と全然違う」と驚きをあらわにした。

生活環境の違いも大きかった。楠隼高校1年の竹之内智廣さん(肝付町)は、「ここでは使う水がトイレと歯磨きと風呂、全部一緒」と話す。お風呂はお湯ではなく、あらかじめ溜めておいた冷たい水だ。「最初冷たかったけどだんだん慣れてきた。昼は暑さもあるから気持ちいいけど、朝の午前6時ごろはすごく冷たい」と竹之内さん。夜は虫刺されを防ぐため、布団の周りを蚊帳で覆って眠りにつく。日本とはかけ離れた日常が、そこにはあった。

漢字の当て字で名前をプレゼント 「家の壁に飾りたい」
ラオスでの生活に少しずつ慣れてきたころ、ホームステイ先の寺で行われたのは村の子どもたちとの交流会だ。鹿児島の中高生たちはこの日のために準備を重ねてきた。
まず行われたのが書道だ。子どもたちの名前を漢字の当て字で和紙に書き、プレゼントした。中高生の周りにはあっという間にラオスの子どもたちが集まり、笑顔を浮かべながら自分の名前が書かれた和紙を受け取った。「すごくきれい」「家の壁に飾りたい」と子どもたちは喜んだ。大笠中学校2年の窪古詠さん(南さつま市)は「本当にうれしかった。一生懸命書いたので」と満足そうに語った。

続いては折り紙だ。カエルや花などを中高生が教えながら一緒に作っていく。樟南高校3年の北原あかりさん(鹿児島市)は、ある男の子から名前を呼ばれて声をかけられた。「何を言ってるのか分からないけど、好かれてるのは感じる」と北原さん。その男の子に「カエルで遊んでどうですか?」と聞くと、「すごくいい。教えてくれてうれしい」と答えた。ラオスの女の子たちも「少し難しかった」「楽しくてうれしい」と口々に話した。

川内高校3年の河澄裕貴さん(薩摩川内市)は交流を終えてこう振り返った。「言葉は通じないけど楽しいっていうのはみんな一緒だから、それでつながれているのかな」。言葉の壁を超えて心が通じ合う、笑顔あふれる時間となった。

「助けすぎない」——日置市出身の協力隊員が伝えた障害者支援の哲学
今回の事業は、県国際交流協会などが主催するものだ。ホームステイだけでなく、青年海外協力隊として現地に派遣されている人の活動を学ぶことも大きな目的の一つとなっている。
中高生が訪れたのは、ラオスの障害者の就労を支援するシクード障害者職業訓練校だ。ここで英語教師として働いているのが、日置市伊集院町出身の牧浦えみさん(27)である。笑顔が印象的な牧浦さんは、ラオスの障害者支援の特徴をこう説明した。「支援しすぎない。助けすぎない、自立を促す、特別扱いしないのがラオスの障害者支援に根付いている特徴」。

牧浦さん自身も幼いころから左手の麻痺という障害を持ち、これまで周囲の人に支えられた経験から、自ら障害者支援の道を志したという。仕事で大切にしていることについて、牧浦さんはこう語った。「自分も一人の障害者として思うのは、障害者を排除しすぎというか特別なものとして扱いすぎ。敬意を持って、人として、健常者と障害者ではなく私とあなたとして関わるということを考えている」。
日々、生徒一人一人の声に耳を傾けて寄り添い続ける牧浦さんの目は輝き、表情は晴れやかだった。

「伊集院に住んでいたと聞いてちょっと親近感湧いた」
牧浦さんとの交流は、中高生にとっても印象深いものとなった。志學館中等部3年の小林藍さん(鹿児島市)は「伊集院に住んでいたと聞いたので親近感が湧いた」と話す。そして「『障害者を助けすぎない』と聞いて、これからの将来のことも考えて支援していてすごいな」と感心した様子だった。

交流の最後は、学校に通う生徒たちからの歌のプレゼントだ。温かな歌声に包まれる中、牧浦さんとの時間は幕を閉じた。
牧浦さんは中高生たちへこんなメッセージを送った。「自発的に他者のために動いてくれる人がたくさん増えたらうれしい」。鹿児島への思いを問われると、「とても恋しい。『しろくま』を今すぐ食べに行きたいけど難しいので、あと1年おいしい『しろくま』を食べられるように頑張る」と笑顔で答えた。

現地の子どもたちとの書道・折り紙の交流、そして牧浦さんとの出会い。ラオスで感じた人とのつながりは、鹿児島の中高生たちにとって世界をより身近に感じる、かけがえのない経験となったようだ。
【動画で見る▶「言葉が伝わらなくても楽しいことはできる」鹿児島の中高生がラオスで書道・折り紙で心つなぐ 青年海外協力隊員との出会いも】

