6階建てのビルと同じ高さ、およそ20メートル。

道路を突き破り、噴き上がる水柱。2026年8月3日の夕方、大阪市生野区で撮影された映像には、道路が隆起し、前にも後ろにも水が噴出する衝撃的な光景が記録されていました。

【片平敦気象予報士】「排水の能力を越えるような激しい雨が降ってしまって、雨水を排水しきれず、浸水を起こしてしまう現象」

”内水氾濫”と呼ばれるこの現象。

関西テレビ「newsランナー」は、内水氾濫の脅威を徹底取材しました。

■ 同じ場所で2度起きた異変 大阪市生野区で何が

実は8月3日の浸水は、この地域にとって今夏2度目の出来事でした。

6月にも“ゲリラ豪雨”が大阪市で発生し、生野区の同じ交差点付近でアスファルトが破壊され、地下から水が噴き出す事態に。1時間に40ミリを超える雨が観測され、市内では120棟以上が浸水、停電も発生しました。

「まさかそんなになっていると思っていなかったので、めっちゃびっくり」と近隣住民は振り返ります。

問題を複雑にしているのは、6月の大雨で雨水を排出する施設のポンプが全て水没したことです。復旧には数年かかる見通しで、現在は代替ポンプが設置されていますが、その排水能力はかつての1%未満。

つまり8月3日の豪雨は、排水機能がほぼ失われた状態の地域を直撃したのです。

「ちょうど店で仕込みしてたんですけど、店の厨房の排水が逆流して、厨房が水浸しになったんですよ」と付近の店の関係者は話します。「あれぐらい降ったら、こうなるって分かったんでね」と、繰り返す被害に疲労の色がにじみます。

■ なぜ交差点で水が噴き上がるのか 大阪大学教授が解説

現地を調査した大阪大学大学院工学研究科の福田知弘教授は、「道路がめくれてしまうというのは、かなり強い圧力で吹き飛んだなと思います」と語ります。

特にリスクが高いのが交差点です。

【福田教授】「交差点は車の交差点だけじゃなくて、下水の方も下で交差してるんですよね。なので、いっぱいに水がたまってくると、ここ(交差点)で一番噴き上げやすい」

さらに、橋と橋の間に挟まれた市街地にも危険が潜みます。橋があると周辺の地盤が高くなりやすく、その間の土地がくぼ地状になって水がたまりやすくなるのです。

そして福田教授が「命に直結する危険」として挙げたのが、道路が立体交差するアンダーパスです。

【福田教授】「ドアの半分ぐらいまで(水が)たまってしまうと、ドアが開かないという状態にもなってしまうので、水ぐらい大丈夫だろうと思っていたら、大変なことも」


■ 地下25メートルで起きた”前例なし”の事態

取材班は、大阪府が建設を進める巨大地下施設「寝屋川南部地下河川」を訪れました。

地下25メートル…8階建てマンションが入るほどの深さに広がるこの施設は、25メートルプール1750杯分に相当する約63万立方メートルの水を貯めることができます。

大雨の際に雨水を一時的に貯留し、内水氾濫などの被害を防ぐために暫定運用されています。

しかし6月の大雨では、この巨大施設でも前例のない事態が起きました。

プールの底からおよそ15メートルの高さに、大きなブルーシートが引っかかっていたのです。

「過去にも今まではなかったんじゃないかと思います」と、大阪府寝屋川水系改修工営所の内屋雅人主査は語ります。

6月の豪雨では少なくともその高さ以上まで水位が上昇したとみられ、想定を超える大雨の凄まじさを物語っています。

なお南部地下河川は2044年度の完成を目指して整備が続けられています。

■ 自治体が相次ぎ対策を強化 堺市は避難発令エリアを拡大

こうした事態を受け、自治体も対策の見直しを急いでいます。

堺市は2026年4月、河川氾濫や内水氾濫に関する避難情報の発令範囲を拡大。今回の改定で対象校区は27校区追加されました。

「下水道は1時間で時間50ミリの雨量に対応はしていますが、昨今それ以上の雨が非常に増えていて、なかなか能力が追いつかないという状況があります」と、堺市危機管理室防災課の成田茂雄課長は現状を明かします。

突然の発令範囲拡大に「まさか指定されたことはびっくりしました」と驚く市民がいる一方で、「ゴムボートやライフジャケットを既に用意している」という住民も現れています。

■ 今すぐできる備え・知っておくべきリスク

内水氾濫は屋外だけでなく、自宅の中でも被害をもたらします。

下水が逆流することで、トイレや風呂から水があふれる事態が起こり得るのです。

福田教授はこれに対し、「栓をするということですね。それから水をためて、水のうを作って押さえ込むことも大切」と対処法を示します。

片平敦気象予報士は「近畿地方のどこに住んでいても、内水氾濫のリスクはある」と強調します。

【福田教授】「実は大阪に限らず神戸の辺りも海が近いですし、六甲から出てくる川の水が急激に流れてくることもありますので、注意が必要」

内水氾濫を引き起こすような激しい雷雨は、この30〜40年で増加傾向にあるという統計もあります。

自分が住むエリアにどのようなリスクが潜んでいるのか、改めて確認しておく必要があります。

(関西テレビ「newsランナー」2026年8月4日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。