山野知事が知事選の公約に掲げた「移動知事室」が始まった。初日(23日)は輪島市、2日目(24日)は珠洲市などを訪れ、地震や豪雨からの復旧状況を視察。各市長からは、想定を上回る申し込みがあった復興公営住宅の追加整備など、復興に向けた切実な要望が出された。これに対し山野知事は、県の責任で対応する考えを示すなど、現場の声に耳を傾け、復興を停滞させない姿勢を強調した。
「移動知事室」始動 復興住宅の追加要望に知事「県が責任持つ」

公約実現へ、現場に赴く。県民の声を広く聞くとして、山野知事が知事選で公約としていた「移動知事室」が7月25日から始まった。初日は輪島市を訪問。スタートは、輪島市の能登空港内にある奥能登行政センターでの出先機関の職員とのランチミーティングだった。各自が昼食を持ち寄って懇談する場で、山野知事はその狙いを語った。

「組織にとって最も大切なことは、トップの顔が見えることだ。なかなかリアルで、知事や副知事の生の顔を見たり、生の声を聞くということも、そんなにないんじゃないかと。トップの思いの一端を感じてもらえれば嬉しいなと」
このミーティングは冒頭を除き非公開で行われ、山野知事は約1時間、食事をしながら職員の声に耳を傾けたという。

輪島市長からの要望「満額回答も」
続いて山野知事が向かった輪島市役所では、坂口市長との意見交換が行われた。坂口市長は「しぼりにしぼって10のご要望をさせていただければ」と切り出し、復興に向けた課題を伝えた。要望の一つは、奥能登に新設される病院に分娩機能を残すこと。そしてもう一つが、復興公営住宅に関するものだ。家賃の3年間無償化に伴い、想定を200戸以上も上回る申し込みがあったとして、その分の対応を県に求めた。

これに対し、山野知事は「200以上想定を上回りましたので、その分については県がそこ(申し込み分)を上限にして責任を持つとお答えしました」と述べ、県の責任で対応する考えを明確にした。意見交換後、坂口市長は「こちらから要望していたことに対して、満額回答な要望もありましたので良かったなと、その都度その都度、さまざまな課題も生まれてきますので、有意義に活用できれば。」と評価した。
港や工房…現場から上がる切実な声

市長との意見交換だけでなく、知事は被災した現場も直接見て回った。輪島港では、被害や復旧の状況を視察。市からは、施設の復旧に対する補助率かさ上げの継続や、海女漁の本格再開までの支援継続といった、漁業関係者の生活に直結する要望が出された。

また、輪島塗の仮設工房も訪れた。ここでは、来年が期限となっている施設の使用許可について、延長してほしいとの切実な声が上がった。伝統産業の担い手たちが、安心して事業を続けられる環境の整備が求められている。
2日目は珠洲市へ 「創造的復興」の提案も

2日目となる26日、山野知事は珠洲市などを訪れた。午後に向かったのは、能登半島地震で岸壁や防波堤などに大きな被害が出た飯田港。県の担当者から工事の進捗状況について説明を受けた。

ここで珠洲市の泉谷市長から出されたのは、単なる復旧にとどまらない未来への提案だった。「以前からプレジャーボートとか、そういうマリーナ機能を持たせたいという思いがあったんですけど、これからまた創造的復興ということで、これは山野知事もぜひご検討いただいて」

また、珠洲市でも復興公営住宅の課題が浮上している。入居の申し込みが161戸増加していることから、県に対し追加の整備、もしくは4分の1の財政措置を求めた。泉谷市長は「増加した分について石川県として整備していただくか、もしくは4分の1の分の財政措置をお願いしたいということを申し上げました」と要望内容を説明した。
復興は止めない 前知事の方針踏襲を強調

輪島市、珠洲市と続いた2日間の「移動知事室」。現場からは、生活再建から産業復興、そして未来を見据えたまちづくりまで、多岐にわたる要望や課題が示された。こうした声に対し、山野知事は復興を停滞させない決意を強調する。
「基本的に、知事が変わったからといって復興がとどまるとか、大きな方向が変わるということはありません。基本的には、しっかりと前知事がおっしゃったことを踏襲していきながら、しっかりとその方向に向けて取り組んでいきたいと思っています」

山野知事は、その後、奥能登に新設する統合病院の方向性について住民や地元の団体などと議論するタウンミーティングにも参加した。始まったばかりの「移動知事室」が、被災地の声を行政に届け、復興を加速させる原動力となるか、その手腕が問われる。
(石川テレビ・7月23日、24日放送)
