長野県東御市の海野宿で特産のクルミを生かした「胡桃ガラス」が訪れた人を魅了しています。“涼”を届けるガラスを汾陽アナウンサーがその工房を訪ねました。
■淡い緑色に輝く胡桃ガラス
涼やかな音を響かせる風鈴に、透明感が美しい食器。
汾陽アナウンサー:
「光が当たると、淡い緑色に輝いて見えますね。見た目の涼しさが夏の暑さを和らげてくれます」
手掛けるのは、ガラス職人歴約30年の寺西将樹さん(57)。
27年前(1999年)、横浜のガラス製造会社を退職し、地元・上田市に戻りました。
お隣・東御市の海野宿に構えた工房「橙(だいだい)」。
旧北国街道の町並みが残るこの町で、生み出したガラスがあります。『胡桃ガラス』です。
ガラス工房「橙」・寺西将樹さん:
「クルミの殻を燃やした灰をガラスの原料に混ぜて溶かしたもの。ガラスっていうのは透明じゃないですか。どこで作っていても透明なんで、できればガラスの中に特徴を、この場所で作っている特色を打ち出したいと」
■窯は1150℃、工房は40℃
東御市は全国1、2を争うクルミの産地。
晴天率が高く雨の少ない気候が栽培に適していて、市内には約8000本が植えられています。
これが、クルミの殻を燃やしてできた灰です。
この灰をガラスの原料の「珪砂(けいさ)」に混ぜ、窯の中で溶かします。
窯は1150℃―。
汾陽アナウンサー:
「工房内はサウナのような熱気に包まれています。じっと立っているだけでじわじわ汗ばんできます。とても暑いです」
工房の中は1年を通して40℃前後。
夏場はうだるような暑さです。
■オレンジ色が消えるまでが勝負
寺西将樹さん:
「作業自体は5時前からやってます。(今は)梅雨だから湿気がひどくなって、暑さより湿気の方がすごい(こたえる)」
この日、作っていたのはデザートカップ。
寺西将樹さん:
「このオレンジ色が消えるまでの間に全て終わらせないと。冷めたら温め直して、また軟らかくして作業します」
冷める前に形を決める。ガラス職人に許される時間はほんのわずかです。
■作品は「子供のよう」
こうして出来上がる「胡桃ガラス」。クルミが生み出すのは素朴で優しい緑色です。
寺西将樹さん:
「(お客さんには)『懐かしい感じがする』と特別感を感じてもらっています。アンティークな雰囲気のガラスができた。海野宿という町に合っているんじゃないか」
工房に併設するショップでは同じガラス作家でもある妻・真紀子さん(57)が販売を担当します。
寺西真紀子さん:
「胡桃ガラスの色自体を生かして、泡を入れたり、揺らぎを出したりとか、砂を巻いたり。(器の)中に物が入って完成するくらいの、削ぎ落としてシンプルなものを作る。(自分たちの)子供のような感じ。生み出した子供たちがいっぱいいるよう。どんどんお嫁に行っていただいて」
■カフェで味わう胡桃ガラス
工房の2階ではカフェも営業。
夏限定で提供するのは約20種類のかき氷です。
こちらは、杏の果肉を使ったソースと自家製シロップがかかっています。
使う器はもちろん「胡桃ガラス」です。
汾陽アナウンサー:
「杏ソースが果肉感もあり濃厚で、すごく甘酸っぱいです。ヒンヤリとした氷とよく合いますね」
■客の声が創作の原動力に
そしてこちらも涼感たっぷり!クリームソーダです。
大きなグラスに、自家製のフルーツソースのかかったアイスが浮かびます。
汾陽アナウンサー:
「丸みを帯びたグラスがクリームソーダのかわいらしさを引き立てています」
橙カフェ・ショップ・寺西真紀子さん:
「実際に使って使い心地を試していただいて、触ってヒンヤリするとか、口に当ててやわらかいとか、そういうのを感じていただいて、大きさがもっと小さい方がいい、丈を大きく、小さくしてほしいとか、そういうオーダーにも応えています」
暑さに疲れた人を癒やすカフェ。
お客さんとの交流は、新しいものを作る原動力にもなっています。
■暮らしに寄り添うガラス
夏に向かう5月ごろからは、個人や販売店、飲食店など県内外から注文が増えます。
ひと月に手がける作品は平均1000個以上。
忙しい日々が続きます。
寺西将樹さん:
「暑い方がやる気になりますよね。求められている時は、夏場の方が、お客さんから声かかることが多いから」
妻・真紀子さん:
「とにかくガラスが好きで真しに向き合っている。本当に好きなんだなと思います。生活の一部として、気軽に手に取って使って良さを感じてもらえれば」
ガラス工房「橙」・寺西将樹さん:
「瞬間瞬間に一発で(形を)決めなきゃいけない(作業の)躍動感は面白いところの一つ。ここに来れば、新しい物、今まであった物に出会える空間をつくり続けられたら」
暮らしに寄り添う「胡桃ガラス」。夏の日常にそっと涼を届けてくれそうです。
ガラス工房「橙」カフェ・ショップ
営業:午前10時~午後4時(火・水曜定休、不定休あり)
