子どもの発育に深刻な影響を及ぼす「面前DV」とは

長年、夫からDV(家庭内暴力)にあっていた1人の女性。

夫からのDV被害者:
とにかく怖かったんです。言葉の暴力とビンタ、殴打、あとは首を絞めたり蹴ったり壁に打ちつけたりという暴力ですね

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女性には、子どもが1人いた。

夫からのDV被害者:
自分は我慢しようと子どものために、お父さん、お母さん、子どもがいるこの3人の家庭というのを守ろうというのがあって、自分の中で(子どもが)20歳(になる)までは頑張ろうって思って、目標立ててずっと頑張ってきたのですね

DV被害者の多くは、子どものために、と我慢する。しかし、実は「子どもが家庭内暴力を目撃する」いわゆる「面前DV」は児童虐待で、長期間に及ぶほど子どもに深刻な影響を及ぼす。

そもそも児童虐待は、大きく4つに分けられる。
殴る蹴るなどの「身体的虐待」や性的行為をする、見せるといった「性的虐待」、育児をしないなどの「ネグレクト」、そして暴言や面前DVなどの「心理的虐待」だ。

2019年度、広島県内の児童相談所に寄せられた虐待相談件数は4518件。その半分近くが「心理的虐待」だ。
そして、このうち6割を「面前DV」が占めている。
「心理的虐待」による被害は、身体的な傷以上に子どもを傷つける。

福井大学 子どものこころの発達研究センター・友田明美教授:
心や脳に受ける傷は、非常に癒されにくいということが脳科学的な研究でわかってきた。社会に適応できなくなる。うつ病になったり、それからIQも低下したままと分かっている

心理的虐待により子どもの脳の一部が変形することが明らかに

友田教授は、ハーバード大学と共同研究し、虐待が脳に及ぼす影響を可視化した。
そこで判明したのは、体罰で感情や思考などに関わる部分が縮小。暴言により、言語やコミュニケーションに重要な役割を果たす領域が変形。
DVの目撃は、さらに深刻だ。

福井大学 子どものこころの発達研究センター・友田明美教授:
視覚的な感情処理がうまくいかない。カッとなって急に殴ったりとか。一番大事なのは、学習の伸びに影響を及ぼしますね。家庭内でのDVを子どもに目撃させる行為は、「マルトリートメント(避けたい子育て)」ですよということをメッセージとして送りたいです

カウンセラーにDV被害を相談し、この事実を知った女性は…

長年DV被害を受けていた一児の母:
知った時は、私はなんで逃げなかったんだろう、なんでこの人と離れなかったんだろうという後悔。早く気づけばよかった

夫から逃げる決意を固めた。

子どもを児童虐待の被害者にしないためには、環境を変えることが大切だと専門の弁護士は指摘する。

和法律総合事務所・寺西環江弁護士:
緊張感のある所で育つのは子どもにとっても良くないし、あなたにとって良くないことは子どもにとっても良くないよねという話をして、自分で(家を)出ようと決断できるようなアドバイスをするようにしています

弁護士の無料相談など、まずは誰かに話すことが大切だという。

虐待の早期発見・防止のために 地域が始めた新たな取り組み

一方、広島県内の子ども家庭センターには、相談窓口や相談ダイヤルがあり、さらに今、早期発見と防止に向け、新たな取り組みも始まっている。
ここで1年半勤めるこちらの職員、実は現役の警察官。
2019年から警察官を児童相談所に配置し、連携を強化している。

広島県西部こども家庭センター 初期対応係(現役警察官)・三保壮大主査:
警察も協力して、一緒に一件でも虐待を減らしていく。警察の方へフィードバックしていきたいと思います

こうして逃げ出した親子を、状況に応じて保護する所もある。

石井記者:
場所が特定されるので一部しか撮影はできませんが、ここは中国地方にあるお母さんと子どもを支援する施設です

職員には保育士や心理療法士などさまざまな専門家がいて、学習支援や心理的ケアなど虐待を受けた子どもをサポートする。
プライベートが守られた部屋があり、着のみ着のままで逃げてきても生活ができるよう、電化製品や日常品もすべてそろっている。

こうした施設は、全国に230、中国、四国地方に30カ所ある。

全国母子生活支援施設協議会・村上幸治副会長:
まず安全を第一に考えて、「経済的な支援」や「精神的な支援」、社会のいろいろな所と連携をしながら、地域で生活していただけるような支援をさせていただいています

より早く発見し防止に努める、そこには理由がある。

福井大学 子どものこころの発達研究センター・友田明美教授:
「脳が傷ついたままか」とよく聞かれるんですが、もちろんそうではありません。脳は回復するんです。早い時期に悪しき環境、マルトリートメント(避けたい子育て)を止める、それから安全な場所に子どもを置いてあげる。学習支援や生活支援、心の治療、そういったことを受けることによって、「脳もちゃんと回復しますよ」ということも、お忘れいただきたくないことです

あの女性も施設に逃げ込み、人生を再スタートさせた。母子支援員のサポートのもと、仕事も見つけた。
すると、子どもにも変化が生まれたという。

長年DV被害を受けていた1児の母:
子どもも、当時は2人でびくびくしながらお父さんを怒らせないようにしていたので、今は伸び伸びというか好きなことを言える。それはすごく感じます。本当に心から良かったなと思います

(テレビ新広島)