『手足口病』の流行が加速している。
国立健康危機管理研究機構が14日に発表した速報データによると、患者数は前週に比べて52.5%増、27都府県で警報レベルの基準を超えている。
手や足、口の中に水泡性の発疹ができるウイルス性の感染症で、子供を中心に広がるが、大人も感染する。しかも大人の方が重症化して長引く傾向があるという。
症状は、とにかく“痛い”。大人は、子供より発疹の痛みが強く、時には歩けないほど酷い状態になることもあるらしい。
しかし、毎年夏になると『手足口病』流行のニュースを見ている気がするし、なぜ毎年、流行するのだろうか。
感染症学が専門の昭和医科大学・二木芳人名誉教授に話を聞いた。
さらに「夏休みに気を付けたい感染症」の特徴についてもお伝えする。
■原因となるウイルスは数十種類以上! 1シーズンに2回3回かかる人も
【昭和医科大学 二木芳人名誉教授】
梅雨から夏にかけて「手足口病」は毎年のように流行します。
なぜなら、原因となるウイルスは多種類あり、その年によって流行するウイルスが変わるからです。
しかも同じ年に複数のウイルスが存在していることもあるので、1シーズンに2回かかる人も珍しくありません。3回かかる人もいます。
感染症は一度かかったら免疫ができますが、違うウイルスの感染にはその免疫の効果は十分ではありません。
同じウイルスでもそのタイプが違えば、何度でもかかってしまうのです。
これは新型コロナウイルス感染症の変異株で我々が経験したことです。
また、『手足口病』の中でも、ウイルスごとに症状の特徴が若干異なります。
典型的な症状は「手のひら、足の裏、口の中に水泡性の発疹が出来る」というものですが、ウイルスによっては、ひざや肘、お尻や顔など発疹が広範囲に出たり、水泡の形が平べったく大きかったりします。
他にも高熱が続いたり、頭痛や嘔吐を伴うこともあります。ずい膜炎や脳炎など中枢神経系の合併症を起こしやすいウイルスもあるので注意が必要です。
■夏好きウイルスが引き起こす“三大感染症”
『手足口病』の主な病原体は「コクサッキーウイルス」と「エンテロウイルス」。
いずれも「エンテロウイルス属」に分類されるウイルスの一種です。
夏に流行する感染症として『手足口病』と並んで多いのが『ヘルパンギーナ』で、こちらも「コクサッキーウイルスA群」や「B群」、「エコーウイルス」など数種の病原体がありますが、いずれも「エンテロウイルス属」のウイルスです。
『ヘルパンギーナ』の主な症状は「突然の高熱(38~40度)」「のどの痛み」「口やのどに水泡ができる」など。一般的に経過は良好で2~3日以内に回復しますが、まれに合併症で髄膜炎や心筋炎などが起こるので注意が必要です。
今年も暑さと共に患者数が増加しており、大阪府の最新データ(7月14日集計分)では、前週と比べ11%増えています。
これらのウイルスに共通するのが“高温多湿を好む”こと。気温が高く湿度のある場所で長く生き延びやすい、つまり夏に活動が活発化し、感染拡大を引き起こすのです。
また、同様に高温多湿を好むウイルスの1つである「アデノウイルス」によって、子供を中心に夏に流行するのが『プール熱』です。
『プール熱(咽頭結膜熱)』は発熱(38~39度)、のどの痛みのほか、「目が真っ赤に充血する」「目やにが出る」といった結膜炎症状がみられます。
眼の症状が強い場合は、眼科での治療が必要になることがあります。
■猛暑で感染症がさらに拡大か
もうひとつの共通点が感染経路です。主に「飛沫感染」「接触感染」「糞口感染」で広がります。
エンテロウイルスもコクサッキーウイルスも非常に感染力が強いので、同じ空間に患者さんがいて、せきやくしゃみをすると飛沫が飛び散り、直接的に「ヒトーヒト感染」します。
今年も猛暑の影響で早くからエアコンを利用し、ご家族が同じ部屋で過ごす時間が増えているのではないでしょうか。同じ理由で保育園などの集団生活の場での感染も生じやすくなります。
夏でも定期的な換気が重要です。
また、感染者がくしゃみや咳を押さえた手で物に触れるとそこにウイルスがつき、他の人に感染していきます。
夏は半袖など肌の露出が多いので、接触感染が増えます。タオルなどの共有は避け、手洗いをしっかりとして下さい。
■症状が消えてもウイルスが腸に残る…
そして「糞口感染」とは、お子さんが「お尻を拭き切れていない」とか、「手や玩具についたウイルスを落としきれていないまま口を触ってしまう」などで感染します。
エンテロというのは「腸」のこと。手足口病などの原因となるエンテロ属の「エンテロウイルス」も「コクサッキーウイルス」も、症状が治まった後も腸の中に長く残るので非常に厄介です。
だいたい2~4週間ほど便の中にウイルスが排出され続けます。
症状が消えた後も、トイレやおむつ交換の後はしっかり手洗いすることが重要です。
また、夏に元気なウイルスは、アルコールが効きにくい傾向があります。
予防のためにも、こまめな「うがい」と「流水・石けんでしっかり手洗い」を習慣づけて頂ければと思います。
■インバウンドで感染拡大の危険か
『手足口病』も『ヘルパンギーナ』も『プール熱』も世界中で発生しています。
特に東南アジアなど暑い地域では、日本より重症化しやすい型が流行することも少なくありません。
ウイルスそのものは昔から世界中に存在していますが、人の往来によって海外で流行している型が日本に持ち込まれ、日本での新たな流行の引き金になる可能性があります。
夏休み時期を迎え、インバウンド客がますます増えると思われます。
政府には、インバウンド誘致と共に、水際対策のより一層の強化に取り組んで頂きたいと思います。
そして、夏の感染症の多くは予防薬もワクチンもありません。
流行の拡大を防ぐためにも、みなさんひとりひとりに「流水・石けんでの手洗い」と「うがい」を心がけて頂ければと思います。
(昭和医科大学 二木芳人名誉教授)
