北海道江別市で2024年、大学生・長谷知哉さん(当時20)が集団暴行を受け死亡した事件は、多くの人に衝撃を与えた。強盗致死などの罪に問われた男女6人の裁判が続く中、7月13日には主犯格とされる川口侑斗被告(当時18)の初公判が開かれた。

 これまで共犯者の裁判では証人として出廷しながらも、「自分の裁判があるから」と宣誓を拒否し、わずか数分で退廷していた川口被告。しかし、自身の裁判では起訴内容を認め、「本当にひどいことをしました。申し訳ありません。この裁判で正直に話します」と述べ、初めて事件について詳しく証言した。

 一方で、その供述には共犯者の証言と食い違う点や、責任を他者へ向けるようにも受け取れる内容も含まれており、法廷では事件当時の凄惨な実態が次々と明らかになった。


■交際トラブルをきっかけに始まった暴行

 事件の発端となったのは、被害者と交際していた八木原亜麻被告との交際トラブルだった。

 川口被告は事件当日に八木原被告と知り合い、「トラブルを解決しようと思った」と供述。自身の家族にも似たような出来事があったことから、「良かれと思って」「ゆがんだ正義感」で行動したと説明した。

 しかし、公園で被害者と対面すると、話がかみ合わないことに腹を立て、腹部を蹴ったという。その後、暴行は急速にエスカレートしていく。

■「血ついたべ、弁償しろ」暴行は強盗へ発展

 川口被告は暴行を続ける中、自身のズボンに被害者の血が付着したことから、「血ついたべ!早く弁償代払え」と現金を要求したと供述している。

 さらに暴行を続ける中で、「被害者の口からバキッという音がして血が出ていた」と認識していたにもかかわらず、背中や全身への暴行をやめなかったという。

 約2時間に及んだ暴行では、被害者は何度も謝罪を繰り返していたとされる。

 その間も暴力は止まらず、髪の毛などにライターで火を付ける行為まで行われた。

 川口被告は調書で、その様子を動画撮影した理由について「楽しい雰囲気を動画に残すためだった」と説明している。


■「もっとやって」暴行を止めなかった理由

 7月15日に行われた被告人質問で、川口被告は暴行を止めなかった理由について、新たな説明をした。

 被害者の出血が増えたことから、八木原亜麻被告に対し「許せば」と訴えたものの、「許す気ねえ。もっとやって」と言われたため暴行を続けたという。

 川口被告は「暴力を止めることができなかった」と証言し、八木原被告の言動が暴行継続につながったとの認識を示した。

 一方、この点については川村葉音被告の証言とも一致する部分がある。

 川村被告は「まだやんなきゃいけないの」と川口被告が尋ねた際、八木原被告が「許してないからもっとやって」と答えていたと証言。また、「もし八木原被告がやめていいと言っていたら、川口被告は暴行をやめていたと思う」と法廷で述べている。


■「リーダー的存在だった」川村葉音被告が語った川口被告

 一方で川村葉音被告は、事件当時の川口被告について「リーダー的な人」「中心人物だった」と証言した。

 「川口被告には思ったことが言いづらかった」「断れなかった」と話し、共犯者たちが川口被告に逆らえない空気があったことをうかがわせた。

 さらに、川口被告が滝沢海裕受刑者に飛び蹴りをさせたり、自身にも「やれ」と言って長谷さんを蹴るよう指示したと証言。

 集団暴行は100回以上に及び、このうち川口被告は50~60回、当時17歳だった少年は60~70回暴行を加えていたとも述べた。

 また、あおむけに倒れた被害者の頭部を、川口被告と少年が左右から交互に蹴り続けていたとも証言している。

 ただし、この川村被告に対し「やれと指示した」という点について、川口被告は「一切ありません」と法廷で全面的に否定しており、双方の証言は食い違っている。


■「俺が一番頑張ったから」現金を最も多く受け取った理由

 事件後、被害者のキャッシュカードから現金が引き出されると、川口被告は「俺、今日一番頑張ったから」と話し、最も多い9万円を受け取ったとされる。

 被告人質問では、この発言について「一番暴力を振るったという意味です」と説明した。

 また、被害者の服を脱がせたことや、髪に火を付けた行為については、「滝沢受刑者から『俺より面白いことできるのか』と言われ、面白半分でやった」と証言している。


■「被害者は死なないと思っていた」

 川口被告は法廷で、「被害者さんが亡くなるとは全く思っていませんでした」とも証言した。

 その理由として、自身が過去に9人から暴行を受けても死ななかった経験を挙げ、「だから被害者さんも亡くならないと思った」と説明した。

 さらに、被害者が死亡したことを知った当時については、「俺は被害者さんを殺していない。誰かがとどめを刺したんだろうと思った」と述べ、「誰かとは」と問われると、「通行人とか」と答える場面もあった。

 川村被告は「当時良かれと思ってゆがんだ正義感で暴行した」などと謝罪したが、検察官から「ゆがんだ正義感とは何か」と問われた際には、何度も言葉に詰まり、明確な説明ができない場面も見られた。

■法廷で再生された映像と音声

 公判では、被告らが撮影した暴行の映像や音声も証拠として法廷で再生された。

 その内容は裁判員が目をそらすほど凄惨だったとされ、被害者が震える声で謝罪を繰り返す音声が流れると、傍聴席では涙を流し、肩を震わせる人の姿も見られた。

 検察側は、「被害者に落ち度はなく、精神的・肉体的苦痛を与える暴行が繰り返された。酌量の余地はない」と厳しい姿勢を示している。

■判決は8月7日へ

 これまでの裁判では、川村葉音被告に懲役30年(双方控訴)、滝沢海裕受刑者に懲役20年、当時16歳だった少年には懲役9年以上13年以下の不定期刑が言い渡されている。

 川村被告は控訴し、検察側も控訴している。

 暴行の主犯格とされる川口被告の裁判では起訴内容そのものに争いはなく、量刑が最大の争点となる見通しだ。

 初公判では謝罪し、「正直に話す責任がある」と語った川口被告。しかし一方で、共犯者と食い違う証言や、自身の責任を他者へ向けるようにも受け取れる発言も相次いだ。

 一連の裁判を通じて、事件当日に何が起き、誰がどのような役割を果たしていたのか、その全容解明が続いている。川口被告への判決は8月7日に言い渡される予定だ。

北海道文化放送
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