夏の甲子園をかけた高知大会で、この春、部員不足による廃部から5年ぶりに復活を遂げた窪川高校が劇的な勝利を収めた。
ベンチ入りメンバー13人は、なんと全員が1年生。学校を存続させるため、そして野球で町を盛り上げるため、地域が一体となって支え続けるチームの姿に密着した。
町ぐるみで支える野球部復活への道のり
窪川高校は少子化などの影響で生徒数が減り続け、2025年度の入学生はわずか17人だった。学校を存続させるため、四万十町が取り組んだのが2021年度に廃部した野球部の復活だった。
そしてこの春、野球をするために町外から13人が入学し、学校全体の入学生も39人に増えた。部員は全員、町が補助金などを使って整備した寮で生活している。選手たちは「家族みたいに過ごすことで、お互いのいいところも悪いところもわかり、野球の成長につながると思う」と寮生活の意義を語る。
チームを率いる市川監督は中学校の教師で、県の選抜チームを全国2位に導いたこともある名将。野球部復活のために町が臨時職員として招き入れた。
市川監督は、「自分が生まれ育った四万十町に恩返しと言いますか、地域貢献できるっていう思いを強く持って帰ってきた」という強い思いを胸に指導にあたっている。
地元の夢を背負って
野球部の復活を心待ちにしていたのは、選手だけではない。マネージャーの高橋心春さんは地元・四万十町の出身。
通学に時間のかかる町外の学校ではマネージャーをあきらめていたが、地元の学校に野球部が復活したことでその夢がかなった。
彼女が心を込めて握るおにぎりは、選手たちの大きな力になっている。「おいしいと言ってもらえるのがうれしい。自分の力を練習から発揮できるようにしてもらえたら」と笑顔を見せる。
また、選手たちの食生活を支えているのが、町が野球部のために用意した食堂である。長年喫茶店を営んでいた芝晶代さん(69)が、町の依頼を受けて朝晩13人分の料理を用意している。選手1人1人の好みに合わせて調理をし、「せめて食べることがプレッシャーにならないように」と、まるで孫のように愛情を注いでいる。
地域に支えられ、歩み始めたばかりの彼らが目指しているのは、単なる勝利だけではない。
キャプテンの松本夢叶選手は「自分たちが野球で有名になって、四万十町に観光客が来てもらえるよう四万十町を元気にしたい」と語る。
劇的なサヨナラ勝利、次なる目標へ
そして迎えた7月12日・夏の高知大会1回戦。追手前高校を相手に4点をリードされ迎えた7回裏、満塁から走者一掃のタイムリーヒットなどで一気に同点に追いついた。
6回から登板した山本投手は、1年生ながら140キロを超えるストレートで球場を沸かした。
しかし8回表、追手前に逆転を許すと、9回にも満塁からのタイムリー2ベースで再び4点差に。
その後の9回裏、ツーアウトで3点差と後がない中、2本のタイムリーヒットと押し出しのフォアボールで同点に追いついた。サヨナラの場面で打席に立ったキャプテンの松本夢叶選手がヒットを放ち、見事な劇的勝利を飾った。
スタンドには町長をはじめ、「熱いがやき」と書かれたお揃いの応援Tシャツを着た町民たちが駆けつけ、大声援を送っていた。
次戦は7月18日に日本トーター野球場で中村高校と対戦する。どんな熱い戦いを見せてくれるのか目が離せない。

