札幌市民に「丸井さん」と親しみを込めて呼ばれる老舗百貨店「丸井今井札幌本店」。明治5年創業、150年以上の歴史を持つ北海道初の百貨店です。

 なぜ「丸井さん」と呼ばれるのか。道産子に親しまれる「丸井さん」の秘密を探ると、意外な歴史が見えてきました。

消えた正面玄関の謎

 みなさんは、丸井今井札幌本店の正面入口はどこかわかりますか?

 大通公園から南へ歩き、南一条通り側に進むと、現在の丸井今井一条館が見えてきます。

 「こちらの方が古い建物なんです」と、マチ歩きの達人・和田哲さんが案内してくれたのは、一条館の館内に入ってすぐの重厚感のある階段。

 「一条館が100年前に竣工した当時からある階段です」と話すのは、札幌丸井三越の西田良幸さん。

 この建物、実は今年で築100年なんです。

 明治5年(1872年)、いまから154年前に「今井呉服店」として創業した丸井今井。

 1926年、現在の一条館が誕生しました。

 一条館の南側の壁に残る装飾。

 西田さんは「あれが、過去の入口だった跡の残りという風に言われております」と話します。

 100年前の新聞広告には、南一条通り側に堂々とした正面玄関が描かれています。

 建設当時、札幌のメイン通りは東西に走る南一条通りでした。そのため正面玄関も南向きの中央に作られていました。東側にも当時の入口の名残が残っており、百年前の姿を今に伝えています。

4階建ての建物から石狩平野を一望!? 北海道初の客用エレベーターも

 100年前の誕生当時、まだ高層の建物も少なかった札幌の街。その中で丸井今井は、北海道初となる客用エレベーターを4基も備えた最先端の建物でした。

 当時の丸井今井は札幌市民にとって憧れの場所。

 広告には「幌都第一の最高所」と記され、4階建ての建物から石狩平野を一望できると宣伝されていました。

 今回、当時から同じ場所に残るという従業員用エレベーター特別に乗せてもらいました。

 細長い窓から光が差し込む様子をエレベーターの中から見ることができます。

 「100年前の人もこういう景色を見ていた」と思うと感慨深いですね。

北海道初のエスカレーターも

 エレベーターから遅れること約30年。1955年には、北海道初となるエスカレーターも登場しました。

 設備は更新されていますが、設置場所は当時のままです。

 昭和の時代になっても、丸井今井が札幌の最先端を走る百貨店だったことがわかります。

デパートの中の郵便局

 9階には、もっと珍しいものが。

 それは郵便局です。1950年に誕生した丸井今井内の郵便局は、道内で初めて百貨店の中にできた郵便局なんです。しかも土日や祝日も営業しており、長きにわたって買い物客に親しまれてきました。

 和田さんは「デパートは昔から贈答品を買われる方が多い。買ってからすぐ送りたい。札幌の商業の中心で、デパートがいかに重要なインフラだったかが伝わってきます」と話してくれました。

飛行機を導く“航空灯台”も

 続いて向かったのは、「札幌丸井三越物流センター」。

 普段は入ることのできないこの場所に、ある貴重なものが保管されていました。

 暗く人気のない通路を進んだ先、物流センターの地下には…。

 一条館に当時あった航空灯台が保管されていました。

 まだ飛行機の航空システムが発達していなかった時代、当時北24条にあった札幌飛行場へ向かう飛行機を、この明かりで誘導していたんです。

 丸井今井札幌本店は1937年、7階建てに改築されました。その屋上に航空灯台が設置されていて、この灯台を目標にして、飛行機が降りてきていたんです。

 かつて丸井今井の塔の上で札幌の空を照らしていた大きな航空灯台。当時、札幌で随一の高さを誇った丸井今井が、札幌のランドマークだったことがわかります。

“丸井さん”と呼ばれるワケは―

 100年前から札幌市民にとって、この地域で一緒に暮らす顔なじみのような存在だった丸井今井。さまざまな形で市民の生活を支えてきたからこそ、「丸井さん」と親しみを込めて呼ばれ続けているんです。

 これから先も札幌市民に親しみのある場所であり続けてほしいですね。

北海道文化放送
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