AIの進化が、働き方の常識を塗り替えつつあります。

かつて「安定した職業」の代名詞だった事務職や士業などの“ホワイトカラー”の仕事が「AIに代替されるリスクが高い」として敬遠される一方、建設業や製造業といった“ブルーカラー”の現場仕事が若者を中心に注目を集めています。

その背景には、将来への危機感と待遇改善という二つの大きな変化があります。

■「AIができない仕事をやりたい」 高校生の就活に異変

7月1日、高卒生の就職活動が事実上スタートしました。

大阪市内では80社以上が参加する大規模な就活イベントが開催されましたが、取材を通じてある特徴が浮かび上がりました。

人材を募集するブースには、スーツ姿よりも作業服姿の担当者が多く、体験できるのは手や体を動かす仕事が多くありました。

参加した高校生からは、こんな声が聞かれました。

【就活イベントに参加した高校生】「AIができない仕事をやりたいです」

別の高校生は、警察官や自衛隊を目指す理由をこう語りました。「AIでは人を思いやることはできないと思うから、そこでやっていきたい」。

高卒生をめぐる求人倍率は近年、右肩上がり。

ことし3月に卒業した高校生については4.12倍と、過去最高を記録しました。
企業側の人材獲得競争が激化するなか、特に活気づいているのが現場仕事の分野です。

■「総務・経理は5人から1人に」 建設現場の本音

建設業の担当者は、今の就活事情をこう指摘します。

【三大建設・深井潔取締役】「総務とか経理は今、AIの時代になってきているので、5人でやっていたのを1人に減らそうとか、2人にしようというのがあるんですけど。この仕事(建設業)とか職種は、多分それはなかなか難しいと思います。人を管理しなければいけないし、現場に出て工事自体を管理しないといけないので」

“ホワイトカラー”とは、知識やスキルを用いて働く頭脳労働者を指す言葉で、その語源は白い襟のワイシャツにあります。一方、“ブルーカラー”は建設業などの現場で肉体労働を行う職種を指し、青い襟の作業服のイメージに由来します。

今、この“ブルーカラー”が「AIに取って代わられない仕事」として、改めて注目を集めているのです。

■「給料面も考えた」 事務職から溶接工へ転身

“ブルーカラー”人気は、高卒生だけにとどまりません。

大阪府摂津市にある職業訓練校では、幅広い世代の人たちが電気設備や金属加工といった技術を学び、手に職を付けようとしています。

金属加工を学ぶ44歳の受講生は、以前は経理・総務の事務職でした。転身の理由をこう語ります。

【溶接工として就職予定(44)】「ずっと続けるには不安なところはありました。AIに成り代わってっていうような仕事が多いかと思うんですけれども、やっぱりそういったものには代えられない、人の手でやらないといけない仕事の中の1つかなと思ってますので」

さらに、待遇面も重要な判断材料になったといいます。

【溶接工として就職予定(44)】「事務職で転職をしたとしても、あまり大幅に変わるということはなかったので」

民間会社の調査でも、2020年から2024年にかけてタクシー運転者や建設業従事者など“ブルーカラー”職の年収の伸び率が高まっていることが確認されています。

■「未経験でも30万円」“ホワイトカラー”に負けない好待遇取り組む会社

実際に給与水準の改善に取り組む企業も出てきました。

建物の空気の通り道となる「ダクト」の製造・取り付けを手がける湯浅鈑金工作所(大阪)には、高い技術を持つ職人が約20人在籍しています。

ある職人歴30年のベテランは「ハンマーでたたくとき、ハンマーの傷が付かないように。微妙な手加減というか、それは素人だと難しい」と語ります。

人事を担当する次期社長の湯浅弘明さんは、若い世代に技術をつなぐため、従業員の平均給与を直近3年で15%引き上げました。

【湯浅鈑金工作所 湯浅弘明さん】「うちで給料のいい層は、年収800~850万ぐらい。月でいうと忙しさによるが、50~70万の間ぐらい。休みが増えて、かつ給料も上がる制度に変えた」

未経験でも初任給はおよそ30万円と、“ホワイトカラー”にも引けを取らない水準です。

【湯浅鈑金工作所 湯浅弘明さん】「今は20代、30代の人にいい待遇で来てもらって、彼らが成長してもらうことで、将来の会社の成長につながっていくと思っている」

■AI先進国アメリカの現実「最も深刻なのは若手」

一方、AI先進国のアメリカでは、“ホワイトカラー”の仕事に対する危機がすでに現実のものとなりつつあります。

ニューヨークでAIネイティブの法律事務所「General Legal」を立ち上げたライアン・ウォーカーCEOは、企業の契約書に法的リスクがないかチェックするAIを開発しました。

【ライアン・ウォーカーCEO】「一般的な契約書のチェックを外部の法律事務所に依頼すれば、簡単に数万ドルかかります。複雑な契約書なら、2万ドル(約320万円)請求されることも珍しくありません。私たちのAIは、従来の10分の1、あるいは20分の1のコストで、同じクオリティを提供できます」

特に深刻なのは若手層への影響です。

【ライアン・ウォーカーCEO】「若手弁護士や事務職員の業務はかなり自動化できるので、彼らを雇う必要がなくなっていきます。熟練者の経験が重視され、彼らから最大の効率を得ようとする世界になるでしょう」

■「AI革命は産業革命に匹敵する」専門家の指摘

技術革新と労働の関係に詳しい神戸大学大学院法学研究科の大内伸哉教授は、今の変化を歴史的な転換点として捉えています。

【神戸大学法学研究科 大内伸哉教授】「今のAI革命も産業革命に匹敵するものだと。情報処理能力は知的な仕事で、賢い仕事というイメージで、実際そうだったんですけれども、AIがやっちゃうわけですよ。そうすると仕事がなくなっていくことになっても全然おかしくないわけです」

さらに大内教授は、将来的には“ブルーカラー”と“ホワイトカラー”の区別そのものが意味を失う可能性も示します。

【神戸大学法学研究科 大内伸哉教授】「(人間の)身体的な動きをロボットが担い、それにAIが搭載された最強のAIが登場しつつある。“ブルーカラー”とか“ホワイトカラー”とか関係ない、そういうものが働いてくれるようになる」

そのうえで、これからの時代に求められる人材像についてこう語ります。

【神戸大学法学研究科 大内伸哉教授】「AIを使って、どう社会を変えていくのか、幸せになっていくのかを考えられる人が仕事を担っていく」

AIによって人間の仕事が本当に奪われるのか。私たちの働き方は今、大きな転換期を迎えています。

(関西テレビ「newsランナー」2026年7月6日放送)

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