東京都で「1日1160人感染」の危険性

新型コロナウイルスの感染者が急増している。11月12日、東京都では393人の感染が新たに確認された。11日の感染確認も317人と多かったが、それよりもさらに増えた形となる。

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東京都の小池百合子知事は、11日の発言で「過去最多の100名が無症状患者であり、全世代に感染が広がっている」としたが、12日に開かれた都のモニタリング会議では、衝撃的な予測が発表された。

国立国際医療研究センター 大曲貴夫センター長:
現在、増加比は147.7%ですが、これが4週間そのままの増加比で継続すると計算すれば、新規陽性者数は約4.8倍、1日あたり約1160人程度となります。これは極めて深刻な深刻な状況です。

モニタリング会議の資料を基に、具体的な都の感染者の予測を見てみると、11日までの1週間の新規陽性者は約241.6人で、先週からの増加比は147.7%となる。この状況が続くと、4週間後には新規陽性者数が1日で1160人程度発生することになるという。

加藤綾子キャスター:
二木先生、この東京都の予測はどうご覧になりますか?

昭和大学医学部 二木芳人客員教授:
大きい数字ですけれども、考えてみれば今ヨーロッパ各国とかアメリカで見てみると、1日6万とか10万といった数字が出るような状況になっています。それが増える時を見ていくと、1日にも倍々と増えていくんです。爆発的増加ですよね。今少しそういうリスクがある状態ですから、そうならないように何とかしなければいけないと感じます。

加藤綾子キャスター:
今は検査数も、以前と同じく1日だいたい約5000件ぐらいなんですよね。その中で感染者数が増えているということは、やはり陽性率が高まっているということですよね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
ということだと思います。検査数が増えているから新規感染者の数が増えている、当然と言われますが、陽性率で見ると完全に陽性率も上がってますからね。

加藤綾子キャスター:
そこは気にしないといけないところですよね。

全国の自治体でも感染者が急増

東京都の医療提供体制を見ると、11日時点で確保病床数2640床のうち、1076床が利用されているなど、入院患者数も増えつつある。そして、感染者の増加は東京だけではない。

FNNのまとめによると、11月に入ってから全国の9自治体で感染者数が過去最多を記録した。9日には北海道で200人、11日には大阪で256人の感染者が確認されている。

こうした中、12日に開かれた政府の新型コロナウイルス対策分科会では、次のようなポイントが示された。

・情報や対応が遅れがちになる外国人や若者への支援
・クラスターの多様化に基づいた政策の必要性
・大規模イベントの人数制限の維持(2021年2月末まで)

加藤綾子キャスター:
地域によって感染が拡大している理由はさまざまだと思うのですが、医療体制がひっ迫する前に踏み込んだ対策というのも必要になってきますよね。

昭和大学医学部 二木芳人客員教授:
そうですね。ある程度経済を動かそうと思えば、新規感染者が人の動きや接触の頻度の増加によって起こってくるのは仕方のないことかもしれませんね。ですが、やはり一番大事なのは、重症者の方や亡くなる方を増やさないことです。政府も東京都などもずっと言っていることですけれども、これだけ数が増えてきますと、重症者の人がそれだけいなくても、医療機関に対する圧力はじわじわ来ているんです。ベッドの占有率なども出ていましたが、出ている数字以上にすでに医療提供体制に対する圧力が上がりつつあると考えていただいた方がいいと思います。

加藤綾子キャスター:
重症者の数が11日の時点で39人、入院患者は1076人という数字なんですね。そこで医療体制が大丈夫なのかと。

昭和大学医学部 二木芳人客員教授:
私は決して十分にゆとりがあるというわけではないと思います。特に地方に行きますと、もっとギリギリでやっているところもありますよね。北海道辺りでで聞いてみると、すでに宿泊療養する人たちを振り分けると。以前、東京都もそういう問題がありましたが、そういうところでもいろいろと苦労されているようですね。

加藤綾子キャスター:
柳澤さん。経済を回していくと感染者は増えるだろうと予想されていたんですけれども、ここに来てぐっと上がっているというところは、今一度緊張感を持つことが必要になってきますよね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
感染抑制のための積極的なこれまで以上に踏み込んだ策というのは、今何も取られていないんですよね。結局そうなってしまえば、我々一人一人が自分で感染予防策をとるしかないですけれども、ここはひとつ考えてほしいなと思いますね。重症者についても、全ての世代で感染者が増えているということは、ハイリスクの高齢者も増えてきているということ。今の時点で東京都で39人ということですけど、さらに40人50人と増えていっても、まったく不思議じゃないような段階に来ていると思います。

石本沙織アナウンサー:
感染者はいろんな世代で増えているのと、感染経路不明者も増えている点でいうと、若者から高齢者へという流れも少し変わってきている、市中感染が広まっているということですか。

昭和大学医学部 二木芳人客員教授:
その通りですね。以前だとクラスターを中心に対策をとっていましたし、クラスター対策をとればある程度、囲い込みができるのですけれども、クラスター自体が非常に多様化している。どこで起きてもおかしくない。それに加えて今一番多いのが、おそらく家庭とか職場とか。普通に生活している場で、感染経路がクラスターでないような散発例が多いので、おっしゃる通り市中感染が増えた。一人一人が常に注意しておかなきゃいけないということになります。

大阪・吉村知事は2つのルールを呼び掛け

加藤綾子キャスター:
ものすごい数字が出た時、以前はクラスターが至るところで起きていたから、それで人数が増えていたという印象だったんですが、今回はそうでもないんですよね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
個別のクラスターというより、もう社会全体がクラスターになっていると考えたほうが自然な気がしますね。

石本沙織アナウンサー:
そういった意味だとクラスター対策を国に求めたいところですけれど、やっぱり私たちの対策というのが大事になってくるのかなというところですね。感染拡大が続く大阪府の吉村知事は、このように私たちに呼びかけています。

大阪府 吉村洋文知事:
マスクの徹底をお願いしたいと思います。そして飲食する際は大騒ぎせずに、静かに飲食をして楽しんでいただくということをこの2週間ぜひお願いしたいと思います。

加藤綾子キャスター:
今回は数が増えてきても、夜出歩かないでくださいとか飲食店に行かないで下さいということではなく、しっかりとルールを守った上で楽しみましょうという呼びかけということですよね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
営業についての要請をすると、また春にあった議論で補償の話に戻りかねない。そうはしたくないというところが、どうも政府側のモノの言い方、対応からにじみ出てきているような気がするんですよ。

加藤綾子キャスター:
二木先生、吉村知事の言っている通り、マスクの徹底、それからあまり喋らないように静かに飲食をする、これは重要になってきますよね。

昭和大学医学部 二木芳人客員教授:
大事だとは思いますが、なかなか若い人には静かに飲食というのは難しいんじゃないかなと思います。若い人たちを中心にどんどん社会に広がっているような雰囲気もありますので、ぜひ若い人にいろんなメッセージを伝えていかなきゃいけないかなと思います。

加藤綾子キャスター:
少し世の中の流れにも、コロナに慣れてきてしまったという部分もあって、そこが気の緩みにつながりすぎないようにしないといけない。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
ここのところ発表される数字も確かに多くて、「うわっ増えたな」と思うのですけど。春に我々が感じていた時ほどのインパクトを持って、果たして自分たちを受け止めているかどうかというと、さほどでもないような気がする。「また増えた」の感じじゃないかなと。やはりもう一度原点に立ち返って、個人レベルでやらなきゃいけないことを点検してやっていくことが必要になってくると思います。

加藤綾子キャスター:
こういう状況になってくると、もう一度、自治体に権力をもう少し持たせたほうがいいんじゃないかという議論も生まれてくると思うんですけれども、いかがですか。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
地域の実情は自治体が一番よく分かっていますから。全体的に網をかけようとすると無理があるかもしれませんけど、地域の実情に即した対策をとっていくことを、国レベルで後からバックアップするという考え方。上から落とすのではなくて、自治体がそれぞれやっていくことを中央から応援してあげるというようなことを考えていくことじゃないでしょうか。

(「イット!」11月12日放送より)