長野県松本市にある「防水布」の専門店。傘やカッパなど、雨具が豊富で、梅雨の今、需要が増えています。創業111年の老舗で、中学の通学かばんも手掛け、ニーズに合わせた防水かばんを提供し続けています。
■紫外線対策も 梅雨時の人気商品
松本市の中心部、本町商店街の「中原防水布店」。その名の通り「防水」の専門店で、傘やカッパなどの雨具がずらりと並びます。
中原防水布店 4代目・中原孝さん(47):
「最近はどうしても暑いので、晴雨兼用の物が今は主流で出るような形です」
今は紫外線対策、そして梅雨ということで、晴雨兼用傘が人気。最近は子供用を求める客も増えています。
中原孝さん:
「のぞき窓があって、反射布を使っています。兼用でUVカットされているので、熱中症対策ということで、安全に通学できればそれに越したことはないと思います」
■自転車通学の味方 カッパ
一方、中高生に需要があるのは「カッパ」。
中原孝さん:
「バッグを背負ったまま着られる」
2026年4月から自転車の傘さし運転は「青切符」=反則金の対象に。雨の日の通学も、荷物を背負ったまま、全身、ぬれずにすみます。
中原孝さん:
「耐水圧、水が染みない強さもけっこうありますし、汗をかいても外に逃がしてくれる機能が備わっていますので、着心地としては着やすい」
■専門店ならではの多彩な機能傘
専門店とあって品ぞろえも豊富です。ボタン一つで自動で開き、自動で閉じることもできる折り畳み傘。さらに―。
中原孝さん:
「これはすぐ畳める」
折り目が形状記憶されていて、簡単に折り畳める商品も。
一方、こちらは―。
中原孝さん:
「これで開けまして、閉める。こっちがぬれています。ただ、中に入り込んじゃうので、こちら側(畳んだ時の外側)は大丈夫、ぬれなくて済む」
畳むとぬれた面が内側になるため、周囲をぬらさずに済みます。
■客が納得できる商品を 創業の精神
店には1000円台から1万円を超える商品までさまざまな傘が。こちらの客は大きな日傘を求めて来店しました。
中原孝さん:
「この辺がUVカットのシートになります」
「これは(直径)60cmですね。だいぶ大きい方です」
中原孝さん:
「商品というのは見てみないと、触ってみないとというところもありますので、当店ではなるべく仕入れて、お客さんに見て納得したものを購入していただく」
使う人が納得できる商品を―。創業以来、店が大切にしてきたことです。
■創業111年 転機は通学かばん
中原防水布店は大正4(1915)年に中原さんの曽祖父が創業。荷台を覆う「幌(ほろ)」など、防水に関わる商品を製造、販売してきました。
上高地に出かける前に、雨具やザックをそろえる客も多かったそうです。そして、昭和30年代後半に転機が訪れます。
中原防水布店 3代目・中原啓さん:
「記憶にあるのは親父の代(2代目)になってから、開成中学校の先生が、ちょっと山というか坂があるもんで、いいかばんを考えてくれないかってことで」
■「3代使える」丈夫な通学かばん
松本市の開成中学校は、昭和36(1961)年、開校。周囲から標高が50mほど高い丘の上に位置し、斜め掛けかばんでは生徒の体に負担になると、店に相談があったそうです。そこで作ったのがリュック型の通学かばんです。
3代目・中原啓さん:
「けっこう丈夫なもので、中には3代使った人もいます」
かばんは家族や職人総出で縫製。開成中を皮切りに、市内ほとんどの学校からリュック型かばんの注文が来るようになり、店は大忙しでした。
3代目・中原啓さん:
「たまたま修学旅行に来た学校の先生がみえて、連絡があって、県外も作るようになって。(忙しくて)1年終わっちゃう、ってあっという間だったですけどね」
少子化や、学用品の自由化で注文は減りましたが、今も秋ごろから新年度まで、気の抜けない日々が続くそうです。
4代目・中原孝さん:
「納期に追われてるときはもう、なんとも言えない、本当に胃が痛くなるような思い」
■丈夫で軽い「3年間壊れない」
通学かばんももちろん「防水」。厚手で強度のある布に防水性を高める合成ゴムのコーティングを施した特注の生地を使い、丈夫さと軽さも重視します。
4代目・中原孝さん:
「(肩ひもが)抜けてこないようにカシメで打ち付けてあったり、裂けないように補強してあったり。あまり補強しても重くなるのでその兼ね合いもあります。3年間はとにかく壊れない。安全面を考慮して、っていうところですね」
■生徒の安全願う「白いかばん」
通学かばんを手掛けるきっかけになった開成中学校。今も変わらず、中原防水布店製の通学かばんを使っています。生徒のカバンを見せてもらうと、教科書やノート、大きな水筒など。荷物がたっぷり詰まっていました。
3年生:
「大きなかばんで、たくさんいろんなものが入るのでめっちゃ便利です」
「肩が、重たい荷物を持っても持ちやすいですね。傘忘れたときに、めっちゃ雨降ってたんですけど、家に帰ったあと教科書が全然ぬれてなかった」
学校や保護者の要望に応じ、素材や形を進化させてきましたが、変わらないのは色。「白」のカバンは珍しく、市内で開成中のみです。かつて、3代目の啓さんが多くの学校と同じ「紺」に変えてはどうかと提案したこともありましたが―。
4代目・中原啓さん:
「だんだん交通量が多くなってきたので、白がいいということで、そのまま(白で)続けている。できるだけ、要望を取り入れてやってきていたつもりです」
生徒の安全を願う、学校や保護者の声に応え続けています。
生徒:
「目立つけど、かっこいいなと思いました」
「みんな安全に、下校・登校できていることにとても感謝しています」
開成中学校・近藤達也校長:
「白い色ですので、遠目にもわかりやすい。安全面などでもいい点ではないかと感じています。学校生活の一部として支えていただいているかなと」
3代目・中原啓さん:
「50年以上、あのカバンが見慣れてますので、(見かけると)『あれはうちのカバンだ』って。そういう意味では、やりがいはあります」
■客と共に作り上げる 老舗の未来
防水布店として地域に根差し111年。最近は客の要望に応じたオリジナル商品の製造にも力を入れるなど専門店ならではの強みを生かしていきたいと考えています。
中原防水布店 4代目・中原孝さん:
「常に新しい形に、使いやすさと安全性と、はやりもそうですけど、お客さんと一緒に作り上げていくことができるので、そういった面ではとても楽しいなとは思いますね。うちで作れるものをなるべくやっていこうと思っています」
