「あなたたちはとんでもないことをした」。被告は裁判長の説諭を時折、うなずきながら聞いていました。
北海道江別市で男子大学生が集団暴行を受け死亡した強盗致死事件の裁判で、札幌地裁は6月25日、事件の発端となった女に懲役30年の判決を言い渡しました。
死亡した大学生を現場に呼び出すなど事件の発端を作り出した川村葉音被告。川村被告に対し、札幌地裁は6月25日、懲役30年の判決を言い渡しました。
「こちらが長谷さんが暴行を受けた現場です。周りを見渡すと斜面が急になっていて、声が出せない状況だと、助けを呼ぶにも厳しい状況だったと考えられます」(川瀬雄也記者)
江別市の公園で男女6人から殴ったり蹴ったりするなどの暴行を受けた大学生の長谷知哉さん(当時20)。遺体を解剖した医師によりますと、長谷さんは輪郭が変わるほど顔が腫れあがり、脳や臓器の損傷もあったということです。
強盗致死などの罪に問われている川村葉音被告(21)と滝沢海裕被告(当時18)、当時16歳の少年の裁判で争点となったのは、そぞれの事件への関与度合いによる量刑です。
検察側の主張によりますと暴行は大きく3回にわけて行われ、主犯格とされる川口侑斗被告(当時18)が長谷さんの顔や腹部を殴打し、始まりました。1回目の暴行は数分間で終わりましたが、現金やクレジットカードを要求した2回目以降にエスカレートします。
「被告らは被害者から現金を奪い、たばこを買って戻ったあとも、こちらで暴行を続けました」(川瀬記者)
3回目の暴行は滝沢被告も「ライダーキック」と称して飛び蹴りをするなど、この場にいたほぼ全員が加わる最も凄惨な暴行に発展しました。2回目と3回目の暴行は2時間以上に渡り、強盗目的が加わった激しい暴行が致命傷となりました。
「主文、被告人川村を懲役30年の刑に処する」(高杉昌希裁判長)
6月25日、札幌地裁で判決公判が開かれ、検察側が無期懲役を求刑していた川村被告に対し、高杉昌希裁判長は「端緒を作り出したといえる」と指摘。さらに「共犯者の暴行をエスカレートするような行動をとった」などとして、懲役30年の実刑判決を言い渡しました。
また滝沢被告には「犯行を助長する行動をした」として求刑通り、懲役20年の実刑判決が言い渡されました。
一方で、川口被告に促されて暴行に加わったと主張した当時16歳の少年には「死亡への寄与は限定的だった」として、求刑を下回る懲役9年以上13年以下の不定期刑が言い渡されました。
判決を読み上げた後、高杉裁判長は3人に対し「あなたたちはとんでもないことをした」と指摘したうえで、「本件をなぜ止められなかったのか、生涯をかけて問いかけていく必要がある」と説諭しました。
主犯格とされる川口侑斗被告の裁判は7月13日に初公判が行われる予定です。
3人の被告に対する求刑と判決は次の通りです。
川村葉音被告は無期懲役の求刑に対し、判決は『懲役30年』。川村被告は1回目と3回目の暴行に参加していました。
滝沢海裕被告は求刑通り『懲役20年』。3回目の暴行で飛び蹴りなどをしています。
事件当時16歳の少年は、求刑は懲役10年以上15年以下の不定期刑でしたが、判決は『懲役9年以上13年以下』となりました。少年は3回目の暴行のみに参加しました。
元検事の磯部真士弁護士は、量刑の違いについて次のように分析します。
「今回の犯罪は三つの要素に分けられる」
「一つ目は制裁として暴行を加えるという決定がされた段階、二つ目はその暴行が被害者を死亡させるに至るほどの苛烈な暴行となった点、三つ目は単なる制裁目的ではなく強盗目的というところまで発展した点です」
「各被告がこの三要素にどこまで影響を及ぼしたのか、その被告がいなければ起こり得なかったと言えるかどうかが、責任の度合いを左右した」
注目されたのは川村被告への量刑です。検察の無期懲役求刑に対し、判決は懲役30年でした。
磯部弁護士は、「川村被告については三つの要素について、きっかけを作ったり、それを強めたりした要素が認められた」としながらも、「必ずしも川村被告がいなければ起こり得なかったというまで言えるかというと、そこまでの判断はされていない。そこが無期から有期に落ちたという結論に至ったのではないか」と分析しています。
川村被告の弁護側は『被告が被害者に直接振るった暴力は頭部以外の7回程度。関与は従属的だった』として、懲役13年が妥当と主張していました。
これに対し磯部弁護士は「主導的とまでは言わなくても従属的という評価はされておらず、積極的に関与していたことは間違いない。共犯者を通じて行った暴行も責任に含まれる」と指摘。必ずしも弁護人の主張が受け入れられたわけではないとしました。
また、判決で3人全員に使われた『死亡への寄与は限定的』という表現については、「直接手を下したかどうかではなく、心理的な影響も含め、結果発生にどこまでその人物の役割が果たされたかという評価になる」と説明しました。
7月からは、今回の裁判で「積極的に暴行を加えた中心人物」と名指しされた“主犯格”とされる川口侑斗被告(当時18)の裁判が始まります。
川口被告は1回目、2回目、3回目の暴行全てに関与し、ライターで髪の毛に火をつけたり、現金を奪うなどの凶悪な行為も行っています。また、今回の裁判に証人として出廷した際には宣誓を拒否し、証言することもありませんでした。
川口被告について磯部弁護士は…
「終始主導的な役割を担ったという構成になると思われ、一番重い責任として無期懲役が求刑される可能性が高い」との見方を示しました。
一方、死刑が求刑される可能性については、「残虐で悪質極まりない犯罪ではあるが、死刑は極刑で、極限の犯罪に限って課されるもの。今回のような計画性のない強盗致死の事案だと、死刑が求刑される可能性は低いのではないか」と述べました。
