少子高齢化などにより人手不足が深刻化するなかで、日本の現場を支える外国人材。しかし今、その受け入れを巡り、大きな波紋が広がっている。

インドからやって来た1人の若者

「ウェブ開発の仕事をしていて、受注案件とか社内開発などいろいろやっている感じですね」と話すのは、福岡市中央区のIT企業『オリノス』でエンジニアとして働くインド出身のアナバツラ・プラビーン・クマル・プラビーンさん。

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この会社で唯一の外国人社員として、さまざまなプロジェクトを任されている。

来日して約1年半。日本語で文章を書くのが、まだまだ難しいと話すが「インドにいたときは、上司に直接、聞くのは気を使ったりしていましたので、安心していろいろ聞ける」と社員同士の距離が近く相談しやすい環境に助けられていると笑う。

オリノスの中村達郎・副社長は「入ったときから言語の壁や文化の壁みたいなものは全然、感じたことはない。採用になかなか苦戦していたので、だからこそ外国人の方までちょっと範囲を広げて募集をしていたというところなので、いい人材が来てくれてありがたい限り」と話す。

「めちゃくちゃ優秀です」と褒める中村副社長に、プラビーンさんは「いやいや…」と謙遜した。

会社も住居やビザの申請をサポート

IT業界でも人材獲得競争は激しく、民間の転職エージェントによるとITエンジニアの転職求人倍率は10倍以上と他の職種と比べて圧倒的に高く、優秀なエンジニアはまさに“争奪戦”の状況だ (『doda』2026年5月 転職求人倍率レポートより)。

この会社は、プラビーンさんが安心して長く働けるよう住居やビザの申請をサポートしたほか、地域との交流も後押ししてきた。

オリノスのコーポレートマネージャー、若松恭一さんは「住居やビザの申請が、懸念された部分だったので、そこの部分は弊社としてサポートさせて頂いたほか、プラビーンさんは福岡に初めて来ましたので、福岡で外国籍の友人作りや地域の方との交流ができるよう支援させて頂きました」と話す。

会社から紹介されたコミュニティを通じて地域との交流も広がり、福岡の暮らしはとても充実していると話すブラビーンさん。「最初は寂しかったけれど、今は友だちもできたから。これからもずっと日本に住んでいきたいと思っています」。

こうした外国人材は、今やさまざまな業界で欠かせない存在となっているが、その受け入れを巡り、現場では今、不安が広がっている。

「直ちに経営が立ち行かなくなる状況にはない」

2026年3月下旬、政府は、外国人が日本に滞在するために必要な『在留資格』のひとつ『特定技能・外食』について、2026年4月以降、新規の受け入れを停止すると発表した。

2026年3月、鈴木憲和農林水産大臣は「ファミリーレストランやファーストフードなどの一般的な外食業界からの聞き取りを行っておりますが、特定技能外国人の新たな雇用が一時的に停止をされたとしても外食業界全体として直ちに経営が立ち行かなくなるといった状況にはないと伺っております」と述べた。

上限である5万人に達する見込みとなったことから受け入れ停止を決めた政府。「直ちに経営が立ち行かなくなる状況にはない」としているが、特定技能『外食』には、レストランなどの飲食店だけでなく施設や食堂などの調理業務も含まれている。

業界団体は今回の措置を「産業の存続を脅かす事態」として、上限枠の拡大などを求める要望書を提出している。

このままでは施設の運営計画に影響も

フィリピンに住むカバフグ・レジさん。福岡・田川市の福祉施設の厨房で働く予定だった。

「結果を待っている間、今は毎日の生活費を稼ぐためにフィリピンで働いています。家族を経済的に支えたい。日本人の真面目さも学びたいと思い日本で働くことを選んだ」と話すレジさん。今回の日本の措置を受け駆け込みでビザを申請したが、まだ折り返しはなく、フィリピンにとどまっている状況だ。

福岡市内の病院で調理の仕事が決まっていたサンチェス・ナディンさんも懸命に学んだ日本語で1日も早い申請の許可を訴えた。

「ここ数年間自分が、一生懸命学んできたことが無駄になってしまうと思うと悲しいです。日本政府には、期限内に申請した人たちに対しては、例え受け入れ枠を超えてしまっていたとしても、全員、許可して頂いたら助かります」(サンチェス・ナディンさん)。

医療・介護業界では日本人の働き手がなかなか集まらず、外国人に救いの手を求める施設も少なくない。

筑豊地域の或る介護施設関係者は「人手不足は介護士に限った話ではなく、うちの厨房でも人がなかなか集まらず、外国人の採用に向けて準備を進めてきた」と電話取材に応じた。

この介護施設でも今回の事態を受け、予定を前倒しし、政府が申請を締め切った4月13日の直前にビザを申請。通常、3カ月もあれば結果が出るというが、駆け込み申請が相次いだこともあり、入管は「交付までに相当な遅延が生じることが見込まれる」としていて、施設側は頭を抱えている。

介護施設関係者は「許可が下りるのかどうか分からないので、新たに採用活動を進めるか決めかねている。このままでは施設の運営計画にも影響が出る」と話す。

介護施設・病院の厨房は崩壊しつつある場所

特定技能で来日する外国人を支援し、採用を希望する施設との橋渡しを担う登録支援機関『スターリックス』の奈木野大裕・代表は「今回の一件を受けて、介護に転身しますとか、別の国に行きますとかいう方はたくさんいらっしゃる。5万人という枠が、私たちから見ても体感的にも足りない枠ではないか。特に介護施設・病院の厨房は、本当に崩壊しつつある場所じゃないかと思いますね」と危機感を露わにしている。

西日本新聞社編集局の坂本信博上席専門委員は「外食産業は、休日や夜間の仕事もあるので、日本人のなり手が少ない。少子高齢化のなか、外国人労働者は、同時に地域の消費者、生活者でもある。高市政権も日本の歴代内閣も、建前では移民政策はとらないと言っているが、移民政策を真正面から論じる時期に来ているのではないか」と話す。

突然の受け入れ停止に戸惑う当事者たち。深刻な人手不足が続く現場の声は果たしてどこまで届いているのか。

(テレビ西日本)

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