去年、日本人29人が摘発されたカンボジアの特殊詐欺事件で、愛知県警は拠点のオーナーとみられる男を逮捕しました。被害総額は数十億円にのぼるとされ、警察が組織の実態解明をすすめています。
■「A先生」と呼ばれた佐々木容疑者…拠点のオーナーか
16日、多くの捜査員に囲まれながら羽田空港に到着した佐々木裕介容疑者(38)。去年2月、警察官などになりすまして茨城県の女性にウソの電話をかけ、現金3140万円をだまし取った疑いで、愛知県警に逮捕されました。
佐々木容疑者は6月5日にタイで現地警察に拘束され、16日に強制送還となり、移送中の飛行機の中で逮捕されました。

佐々木容疑者がオーナーをしていたのが、タイとの国境近く、カンボジア・ポイペトにあった特殊詐欺拠点です。
愛知県警によりますと、この詐欺拠点は横750m・縦500mほどの広さで、敷地内には食堂やコンビニも。そして、この建物が詐欺の電話をかける「かけ場」だったといいます。

詐欺の電話をかけていた場所には、部屋を囲むように防音ブースが並んでいます。

さらに「AIルーム」と呼ばれる部屋もあり、被害者とビデオ通話をする際に、生成AIを使って自分たちの顔を別人のものに差し替えていたとみられています。

この詐欺拠点をめぐっては、去年、詐欺電話の“かけ子”をしていたとみられる日本人29人を愛知県警が逮捕。
その後、指示役とみられる中国人夫婦や、現地に“かけ子”を送り込んでいたとみられる“リクルーター”ら7人が逮捕されました。

かけ子らに「A先生」と呼ばれていたという佐々木容疑者は、かけ子の日本人、指示役の中国人夫婦ら、そのさらに上の立場で拠点のオーナーだったとみられています。
■ジャーナリスト「上の人間も逮捕される時代」
タイ警察によりますと、佐々木容疑者はカンボジアの拠点ではなく、タイ・バンコク市内の高級マンションで妻と2人の子供と生活。
複数の詐欺拠点を管理し、資金や人材を現地に送り込んで、指示を出していた“オーナー”とみられていますが、犯罪ジャーナリストの石原行雄さんは、その背後には大きな黒幕がいる可能性が高いと指摘します。

犯罪ジャーナリストの石原行雄さん:
「黒幕としては中国マフィアがいて、日本人のかけ子を管理するには日本人の方が便利だろうということで、その管理役のトップとして据えられ、並行してリクルーター役もやらせる、そういう立ち位置の可能性が高いんじゃないか」
詐欺拠点に置かれていた、日本人の「かけ子」に成績を競わせるためのホワイトボード。

「留」は詐欺が継続している状況を示すもので、「死」は失敗。「無効」は最初から相手に疑われてしまったことを意味していて、成績の悪いかけ子は、ターボライターで鼓膜を焼かれたり、爪をはがされたりするなどの制裁が加えられていたといいます。
犯罪ジャーナリストの石原さんは、組織的な特殊詐欺に対する捜査には最近、変化が起きていると話していて、これまでは、末端のかけ子などは逮捕されても上層部は摘発できないケースも多かった中、最近は捜査のレベルが上がっているということです。
犯罪ジャーナリストの石原行雄さん:
「末端の現場の実行役はしっぽ切りの捨て駒として逮捕されても、上の人間の指示役、管理役、首謀者、黒幕には捜査の手が及ばないというのが定石だったわけですけれど、これが完全に崩れて、上の人間も次々に逮捕される時代に突入した。世界的に捜査のスピードもクオリティーも非常に上がってきている」
佐々木容疑者は調べに対して黙秘していますが、警察はこの詐欺拠点をめぐる被害総額が数十億円にのぼるとみて、組織の実態解明を進める方針です。

佐々木容疑者は、だまし取った金のうち、報酬として得ていたのが月に1億円を超える金額だったとみられています。
今回の1カ所の拠点だけで被害は数十億円にのぼり、佐々木容疑者はカンボジアの国内外にある複数の別の拠点も管理していたとみられていて、まだまだ氷山の一角といえそうです。

