総務省によると、日本の15歳から34歳までの働いていない若者いわゆるニート(若年無業者)はコロナ禍以降徐々に増加していて、2024年には約61万人となっている。一方、海外に目を向けると、ニートの定義が日本とは異なるものの、イギリスでは16~24歳のニートが約100万人いるとされ、若者のおよそ8人に1人を占めているという。このまま対策をしないと将来、さらなる増加が指摘されている。
20年間で求人数が約160万件減少
2026年5月、イギリス政府は若者の雇用に関する報告書を公表した。

その中で、16~24歳のニートが101万2000人にのぼっていると報告された。これは、2025年時点の山形県の人口に匹敵する。
ニートの約6割が「仕事を探していない」状態で、「一度も就業経験がない」としている。将来的には、125万人以上に拡大する可能性があり、政府は若者の雇用支援の強化に取り組んでいる。日本と違い、イギリスはニートの定義を「職を探している人」も含むが、それでもものすごい数だ。なぜここまで増加してしまったのか。

増加の要因について、イギリスの公共放送BBCによると、過去20年間で求人数が約160万件減少し、特に若者は“仕事不足”に直面しているという。また、仕事がAIに取って代わられる時代になっていて、若者も「働いたことがなく、自信がない」という。
グーグル元CEOにブーイング
こうしたAIと雇用の動きは、他の国でも起きている。AIの開発が進むアメリカでは、若者たちの不安や不満から、恒例の「卒業スピーチ」に異変が起きた。
5月、アリゾナ大学の卒業式でグーグルの元CEOのエリック・シュミット氏が演説を行ったのだが、シュミット氏に向けられたのは、歓声ではなく「ブーイング」だった。

「私たちは今、変革の瀬戸際に立っています。AIはあらゆる職業、教室、病院、研究所、人、交友関係に影響を与えます。私は皆さんの多くがどう感じているのか、わかっています。恐怖が存在しているのです」
シュミット氏がAIについて触れた瞬間、会場ではブーイングが沸き起こった。

約15分間のスピーチで、少なくとも8回大きなブーイングがあった。若者がAIに対して抱く“負の側面”が浮き彫りになっている。AIの開発が雇用に対して悪影響を及ぼすとして、若者の間に危機感が広がっているという。
AI普及で、高学歴でも仕事が見つかりにくく…
さらに、若者の失業が常態化しているインドでは、政権批判の動きにまで発展している。

きっかけは、5月、最高裁の長官が失業中の若者について「(害虫)のような若者たちがいる」と、やゆするような発言をしたことだった。これに怒った若者が「害虫」の名前を使った、架空の政治団体のSNSアカウントを作成。若者を中心にフォロワーが2277万人を突破し、インド与党の公式アカウントの2倍以上になった。

首都ニューデリーでは先週末、害虫の名を冠した架空の新党が教育への不満を抱く若者たちを主導し、政府に対する初めての街頭デモを行った。デモには、数百人の若者たちが集まった。
デモに参加した女性は「私はとても怒っています。若者たちから働く機会が日に日に失われているんですから!」と訴えた。
インドは元々IT企業が盛んな国だが、AIの普及で今、高学歴の若者でもなかなか仕事が見つけられない状況だ。こうした不満があったところに、失言があったことでさらに火がついた形だ。
「人間にしかできない仕事」に希少性
様々な国でAIによる雇用不安が起きているが、今後どうなっていくのか。国際情勢に詳しい、経済産業研究所のコンサルティングフェローの藤和彦さんに聞いた。

海外で広がっているのは、ホワイトカラー(事務作業や知識労働の職種)の方が仕事が少なくなる問題。アメリカでは、ブルーカラーの仕事(力仕事の運送・建築業)が高給取りになりつつあるという流れがある。AIでは代替できない、人間にしかできない仕事に希少性が生まれている。
藤さんは、日本への今後の影響は「比較的起きにくい」と指摘する。その理由として、少子化で若者が減っていることから、「若者の売り手市場が続くのでは」としている。また、IT技術をうまく活用できていない日本企業も多いことも理由の一つだという。
海外と日本では雇用のありかたにも違いがあるが、こうした動きが今後どのような影響をもたらすことになるのか注意深くみていく必要がある。
(「イット!」6月10日放送より)
