新緑の季節、富山県南砺市の山あいに静かに佇むブナの巨木がある。幹回りは3メートルを超え、風雪に耐え続けてきた年月が、その姿に刻み込まれている。江戸時代から守られてきた森が今、命の輝きを放っている。

旧五箇山街道をたどる登山道


南砺市のつくばね森林公園。夫婦滝近くの若杉集落跡から、高落場山を目指す登山道が延びている。この道はかつて五箇山と城端を結んだ旧五箇山街道の跡であり、人や牛の背に和紙や煙硝を乗せて運んだ歴史ある街道だ。

急な登りがしばらく続いたのち、稜線に近づくと姿を現すのがブナの原生林である。登山口から約1時間半で高落場山の山頂に到達する。山頂からは利賀の名峰・金剛堂山と、水の張られた砺波平野の広がりを一望できる。


加賀藩が守り、戦争が削った森

このブナの森には、守られてきた歴史と、失われた歴史の両面がある。江戸時代、加賀藩が水源の森として伐採を禁じたことで、豊かなブナの原生林が長く残された。しかし第二次大戦中、資源不足を理由にその4割が伐採されるという打撃を受けた。




戦後80年あまりが経った今、森は着実に回復し、幹回り3メートルを超えるブナの古木が点在するまでになった。鳥のさえずりが響き渡るなか、登山道に鎮座する神秘的な形のブナは、長い年月を生き抜いてきた証を全身で語りかけてくる。


命が輝く、つくばねの森


仰ぎ見るブナの緑と、足元を彩る可憐な草花。歴史と自然が重なり合うつくばね森林公園の森は、新緑の季節にその美しさが際立っていた。
(富山テレビ放送)
