松山駅前の今と、市民が描く未来

愛媛県松山市の玄関口・JR松山駅周辺の再開発で、松山市は4月、これまで中核的施設と位置づけていた「アリーナ」の建設計画を見直すことを明らかにした。

今後のまちづくりの行方に影響があるのか、再開発の“現在地”を取材した。

再開発の全体像―6万平方メートルをどう使うか

野志克仁市長:
「いい駅周辺にしていきたい。子供や孫の世代に引き継いでいきたい。100年に1回のまちづくりですから、頑張っていきたい」

松山市が今年3月に公表したのは、JR松山駅周辺のまちづくりプラン。駅を取り囲む約6万平方メートルが再開発の対象だ。

プランは、駅の東西にまたがるエリアに、ホテルや商業施設など、にぎわいの核となる民間の施設を誘致する構想。東側には新たな交通ターミナル「バスタ」も整備。さらに伊予鉄道の市内電車の電停をJRの駅舎側へ約30メートル移設し、路面電車を引き込む計画だ。

JR松山駅周辺のまちづくりプラン
JR松山駅周辺のまちづくりプラン
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わずか1カ月半で崩れた「アリーナ構想」

そして駅の西側にあるJRの車両基地跡には、5000席規模の観客席を備えた「多目的アリーナ」を建設するとしていた。

しかし…

サイボウズ・青野慶久社長(愛媛OVオーナー):
「何度も図面を描いたが、なかなかいい図面が作れなくて、JR松山駅南西で作るのは難しいと一旦判断した」

松山市は当初、「アリーナ」を男子バスケットボールBリーグ・愛媛オレンジバイキングスの本拠地として想定していた。

しかし、オーナーを務めるサイボウズの青野慶久社長は4月、「この場所での建設は難しい」と撤退を表明。ほかの用地を探すと発表し、動き出した計画はわずか1カ月半で変更を余儀なくされた。

「この場所での建設は難しい」と撤退を表明
「この場所での建設は難しい」と撤退を表明

更地のまま2年―現場の声

山崎真依アナウンサー:
「JR松山駅の西側です。駅舎はリニューアルしてすっかりきれいになっていますが、駅舎とは対照的に駅前は更地がまだ広がったままです」

開発が進まない状況に市民からは…

市民の女性:
「ちょっと寂しいかな。いろいろな事情があるんでしょうが、グリーンがあってほしい」

大学生:
「電車の本数が少ないので、ここ(駅周辺)で過ごせるように早くなってほしい」

「ちょっと寂しいかな」
「ちょっと寂しいかな」

JR松山駅に入居する商業施設からも…

この再開発を巡り、JR松山駅の駅舎は2024年9月にリニューアル。商業エリア「JR松山駅だんだん通り」がオープンし、16店舗が入居しています。

テナントの飲食店の経営者は、開発の遅れに…

うなぎ小椋・小椋安明社長:
「県民だけじゃなくて、県外、外国の方でも『松山の駅ってこんなの』って、びっくりしている。お店の前がまだ舗装もされていない。土ぼこりが立つようなところに店を構えて早2年が経とうとしている」

また駅前の温泉施設「喜助の湯」のスタッフも…

喜助の湯・臼意卓マネージャー:
「駅前という立地もあるが、まち全体の動きは少なからず(集客に)関係しているのは正直感じている。様々な調整が必要なことは理解しているが、今後どういった取り組みや施設建設がされるのか、知りたいのが正直なところ」

舗装もされていないJR松山駅周辺
舗装もされていないJR松山駅周辺

問い直される「跡地の使い道」―文化ホール派の主張

再開発の遅れや今後の見通しに不安の声がこぼれる。

“再開発の目玉”にもなっていたアリーナ建設の見直し。松山市の担当者・交通拠点整備課・有光一成課長は、周辺にぎわい施設の完成目標は「2033年度」と変わらないと強調。この一方で、多目的アリーナは2031年度の利用開始を目指していたものの、サイボウズの青野社長の撤退表明で、建設予定地だった車両基地跡の利用計画は白紙に。「できるだけ早く今後の方向性を判断したい」と明言を避けた。

野志市長:
「今後、文化施設のあり方検討会や市議会の意見を聞いた上で、できる限り早く判断をしたいと考えている」

野志市長は、松山市民会館の代わりとなる「文化施設」という選択肢も含め、5月中にも検討会を開く予定を示している。

松山コンサートホールを創る会・池田慈代表:
「今こそ、また10年前の構想に戻して、文化ホールをぜひ建てていただきたいと、私自身強く思っている」

愛媛県内を中心に活動を行うピアニストの池田慈さん。松山市に文化ホールの建設を求めているグループ「松山コンサートホールを創る会」の代表だ。

「できるだけ早く今後の方向性を判断したい」
「できるだけ早く今後の方向性を判断したい」

市は老朽化した松山市民会館の代替施設に「劇場型ホール」を

松山市は当初、車両基地の跡地には、2015年に策定した基本構想に沿って、「劇場型ホール」を整備する方向で検討を進めていた。老朽化した『松山市民会館』の代替施設を建設する構想だ。

しかし、2024年に愛媛県内の経営者らでつくる愛媛経済同友会の提案もあり、スポーツの試合と音楽ライブが開催できる「アリーナ」の建設方針に、舵を切った。

この状況を受け、池田さんは市内の音楽関係者らと共に2024年10月、「松山コンサートホールを創る会」を立ち上げ、議論の場を設けるよう要望。その後に開かれた松山市の検討会にも委員として参加し、必要性を訴え続けてきた。アリーナ見直しが、車両基地の跡地の活用について、“前向きな議論につながるきっかけになれば”と期待を寄せている。

池田慈代表:
「難しい問題だから(再開発の遅れを)一口に叩くのは簡単だが、そうじゃなくて、更地の部分をこれからどうしていくかにパワーを向けて、子供も大人もご年配の世代も、ワクワクするものを考えていったらいいのでは」

松山市議会の田中エリナ議員も、『今後はスピード感を持って議論を進める必要がある』と話す。

松山市議会・田中エリナ議員:
「今は時代の変化も早いので、決定が変わることはこれからの時代、仕方のないことだとは思っている。だからこそスピード感が求められると思う。いい捉え方をすると、市民の関心も集まった。今回みなさんの意見がたくさん出てきているので、前向きに市民のみなさんに関わっていただけるやり方を、ここを機に考えられたら」

前向きな議論につながるきっかけになれば
前向きな議論につながるきっかけになれば

市の方針と今後のスケジュール

松山市が「100年に1度」と位置づけるJR松山駅前の再開発。市民が考える「松山の未来」とは。

市民の女性:
「来られた方が『松山って素敵』とか、『便利がいいところなんだね』という声が聞けたらうれしい」

うなぎ小椋・小椋安明社長:
「『また愛媛に来たいよね』『松山に来たいよね』と言って、『さようなら』と言えるところにしたい。県民のみんなで、市民のみんなですれば“できる”と思います」

松山市の陸の玄関の再開発。市民が誇ることができ、日常に使いたくなる場所を市民は期待している。

日常に使いたくなる場所を市民は期待している
日常に使いたくなる場所を市民は期待している
テレビ愛媛
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