大西洋を航行中のクルーズ船での集団感染をもたらした「ハンタウイルス」。3人が死亡しました。
かつては大阪でも流行し、奇病「梅田熱」として知られたという、ハンタウイルスによる症状。
「newsランナー」には、関西医科大学附属病院で感染症が専門の宮下修行医師が出演し、ウイルスは2つの型があり、そのうち「南米型」の危険性について、「致死率は30%から50%。ワクチンも特効薬も存在せず、対症療法になる」と説明しました。
一方で、このウイルスはネズミなどのげっ歯類を通じて感染が広がるということで、衛生状態の向上した現在の日本では大規模な感染拡大は考えにくいと指摘し、「過度に恐れる必要はない」と話しました。
■「ネズミのフンが乾燥して舞い上がり、吸い込む」
ハンタウイルスは、ネズミなどげっ歯類が宿主となるウイルスです。
宮下医師は感染経路について、「噛まれる」か、「フンが乾燥して舞い上がったものを吸い込む」パターンが多いと説明します。
ウイルスは大きく”アジア型”と”南米型”に分かれ、症状などにも違いがあるといい、宮下医師は南米型は「危ない方」、アジア型は「危なくないほう」と分類しました。
<ウイルスの型による症状などの違い>
・アジア型:腎機能障害、腹痛など/致死率0.5〜15%
・南米型:呼吸器障害、呼吸困難など/致死率30〜50%
今回クルーズ船で集団感染をもたらしたのは、南米型です。
肺炎を起こして呼吸不全に陥るケースが多く、人工呼吸器などICU(集中治療室)での高度な治療が必要になります。
■「抗ウイルス薬もワクチンも存在しない」
特効薬やワクチンはあるのでしょうか?
宮下医師は「抗ウイルス薬やワクチンが残念ながら存在していない」と解説。
感染した場合、頼れる手段は対症療法のみだということです。
呼吸不全の場合は、人工呼吸器、腎機能障害が生じれば透析と、「ウイルスが自然に体外へ出ていくまで粘り続けるしかない」と宮下医師は表現します。
■「今回はアンデス株だったということで、逆に言うとほっとしている」
そして今回のクルーズ船で感染が広がっているのは、南米型の中でも「アンデス株」というものです。
チリやアルゼンチンで集団感染を起こしたことがあり、ハンタウイルスの中で唯一、ヒトからヒトへの感染が確認されている株だということです。
ヒトからヒトへの感染は夫婦間や入院患者から、さらに感染者とのキスやハグといった「濃厚な接触による」とされ、宮下医師は「かなり近い状態じゃないと感染しません。コロナよりもさらに密な状態で感染する」と指摘しました。
さらに宮下医師は集団感染自体は「非常にまれ」と説明しつつ、今回の集団感染については、「オランダの夫婦がアルゼンチンを旅行していたそうで、たまたま感染し、潜伏期間中に乗船した可能性が考えられる」と述べました。
潜伏期間は長いということです。
まれな集団感染が起きた中で気になるのは、新型コロナのように、クルーズ船からパンデミック=世界的な大流行に発展しないか、ということです。
これについて宮下医師は、「WHOが最も警戒していたのは、『今回の感染がアンデス株以外だった場合』と指摘、その理由について解説しました。
【宮下修行医師】「アンデス株以外はヒト・ヒト感染が確認されていなかった中で、他の株が変異を起こしてヒトからヒトへ感染してしまうと、コロナのようになってしまう」
今回はアンデス株であることが判明したため、パンデミックになる可能性は「現段階ではほとんどない」との見解を示しました。
■日本での感染リスクは? かつて“梅田熱”と呼ばれたことも
では、日本での感染リスクはどう見るべきでしょうか。
国立健康危機管理研究機構によると、日本でも1980年代まで感染が確認されていたということです。
1960年代には、居住環境が悪かった大阪・梅田などで119人が感染し、2人が死亡。原因不明の”奇病”として「梅田熱」と呼ばれていました。
宮下医師は、危険度の高い南米型は「日本には現在生息していない」としつつも、アジア型については「日本にいる可能性は当然ある」と説明します。
ただし、ハンタウイルスはネズミなどのげっ歯類によって感染する、つまり、衛生状態が悪い環境で広がりやすい特性を持ちます。
現在の日本の衛生水準であれば、1960年代のような大規模な感染拡大は考えにくいということです。
南米型が日本に入ってくる可能性について宮下医師は、「チリやアルゼンチンにしか生息できないネズミが、果たして日本で生息できる環境かどうかにも疑問がある」と指摘。「過度に恐れる必要はない」と結びました。
(関西テレビ「newsランナー」2026年5月7日放送)