新学期が始まっておよそ1カ月。進学や進級によって生じる疲れやストレスを、学校側はどう受け止めるべきか―。富山県砺波市の小学校が今年度から導入した「40分授業」は、単なる時間短縮ではなく、子どもたちが「安心できる学校」をつくるための仕掛けだった。

授業を5分短くしたら、何が変わったか

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砺波市は今年度から、市内すべての小学校で授業時間を従来の45分から40分に短縮した。一般的な小学校では1コマ45分で、午前中は4時間目まで。40分授業に切り替えたことで、午前中に5時間目までを組み込める時間割が実現した。

砺波北部小学校の5年生の教室では、算数の授業が午前中のうちに5時間目まで終了する様子が見られた。児童たちの反応は前向きだ。

「脳を回転するスピードも速くなったから、成績とかもアップしてるから良いなって」

「5分短くなったから友達と交流したり自分で集中して考える時間を決めてやることが多くなった。集中力が高まった」

担任教員も変化に対応している。砺波北部小学校の三枝李成教諭は「授業の構成もアレンジしながら。5分短くなったので学習がしっかり定着するような授業のつくりを勉強している」と話す。

1日45分の「ゆとり」をどう生み出したか

40分授業の導入にあわせ、登校後の「朝の会」も短縮した。1日6コマ分の5分短縮と朝の会のカットを合わせ、1日あたり計45分の余剰時間が生まれた。

この45分を活用し、昼休みを5分延長。さらに下校時間をこれまでより10分早めることができた。児童にも教員にも、日常的なゆとりが生まれている。

授業が5分短くなることで学習への影響を心配する声もあるかもしれない。しかし、給食と昼休みのあとに新たに設けた「アップデートタイム」が、その懸念を補う形になっている。

「アップデートタイム」が生む、安心のサイクル

昼休みが終わると、子どもたちはタブレット端末を取り出す。ここから30分間が「アップデートタイム」だ。

まず取り組むのは「心の天気」の入力。砺波市独自のアプリを使った健康観察で、心身の状態を自分で申告する仕組みだ。悩みや相談ごとがあればコメントも記入できる。申告は朝と昼の1日2回行われ、午前と午後で気持ちの変化が生じた場合もすぐに把握できる。

「何かあったとき、みんなが知らないことや知ってほしくないことを先生に相談できる」

「朝との気持ちの変化を正直に伝えられる。その気持ちの変化を入力できるのが良い」

申告後は漢字や計算ドリルなど、自分に必要だと判断した学習に自分で取り組む。自律的に学ぶ習慣を育む時間にもなっている。

一方、教員はこのアップデートタイムを使って全校児童の申告内容を確認する。すべての教員が全校児童の状態を共有できる体制が整っている。

砺波小学校の北島由紀子校長はその効果をこう語る。「まず全員の心の状態をチェック。文章を書き込む子もいるので、しっかりと見る。もし何かあれば、『どうしたの?』と、ちょっとそばに行って声をかける」。異学年間のケンカが申告されれば、教員同士がすぐに連絡を取り合い、その場で状況を聞いて解決に導く。「その日のトラブルをその日のうちに解決することができるので、笑顔で帰すことができる。これがいちばん良い」

不登校の低年齢化という現実

今回の取り組みは、心のケアを強化したというのも大きな特徴だ。

近年、全国的に増加している不登校は「低年齢化」していて、全国では小学生の不登校がこの10年でおよそ5倍に増加している。富山県内でも小学生の不登校は高止まりの状況が続いており、人口1000人あたりの数は全国平均を上回っている。

学校以外の選択肢が増えていることも一因だが、行きたくても行けない子どもたちが存在することも事実だ。そうした子どもたちを孤立させない仕組みを学校側がつくろうとしている。

砺波北部小では今年度からもう一つの取り組みも始まった。新1年生が学校生活になじめない「小1プロブレム」の解消だ。近隣の認定こども園と連携し、入学直後の2週間、保育士などが朝、小学校に来て声をかけたり見守ったりする体制を整えた。入学したばかりの1年生にとって、環境の変化は大きなストレスとなる。保育園・こども園から小学校へのスムーズな移行を支援することで、最初の「つまずき」を防ごうとしている。

「安心」が学びの土台になる

北島校長は「どうやって子どもたちの心をキャッチするか。今回はアプリでキャッチするが、アプリだけじゃなくてどう聞くか。時間がないとゆったりと聞いてあげることができない、ほかの子どもたちの話を聞くってこともできない、これからますます大事な時間かなと」と話す。

アプリはあくまで手段であり、目的は子どもの心をすくい上げる「時間」と「余裕」を確保することにある。40分授業によって生み出された45分のゆとりは、授業効率の改善にとどまらず、教員が子どもたちと向き合うための時間そのものだ。

5分という小さな変化が、子どもたちの「安心できる学校」へとつながっている。北島校長が語るように、学びの土台には「安心」が必要だ。子どもたちの小さな変化を見逃さないための取り組みが進んでいる。

(富山テレビ放送)

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