国内外の観光地で、地元の住民と価格差をつける「二重価格」の導入が広がっています。世界遺産・姫路城もことし3月からこの制度を導入しました。
対象は18歳以上で、姫路市民はこれまで通り1000円ですが、姫路市民以外は2500円と2.5倍の値上がりです。
この「二重価格」について、関西テレビ「newsランナー」では、2人の弁護士・橋下徹氏と元テレビ朝日アナウンサーの西脇亨輔氏が激論。
橋下氏はマイナンバーカードを利用し、日本人と日本に中長期にわたって住む外国人以外には、「円安という環境もあるのだから高額な料金を支払ってもらえばいい」と主張。
一方の西脇氏は、「二重価格導入の流れが民間にももたらされれば、国内向けの料金も高くなっていき、お金を払えない人には手が届かないものが増え、分断になってしまう」などと指摘しました。
■二重価格 市民以外で「2人で5000円。『高っ!』と思ってやめたんです」との声も
今年3月から始まった姫路城の二重価格。姫路市のいう「市民優先価格」導入の前と後を比較すると、ことし3月の総入城者数は去年3月に比べ、2万8263人減って約14万人。16.8%減となりました。
姫路市は「この減少が料金改定の影響かどうか分析できていない」とコメントしています。
一方で収入は、1.3億円から2.7億円へと2倍以上に増えました。
姫路城を訪れた人に話を聞きました。
【姫路市民】「姫路市民としては、いい取り組みじゃないかなと思う」
(Q.姫路市民以外の人と入る時は?)
【姫路市民】「なだめて納得してもらう(笑)」
【京都・舞鶴からの観光客】「2人で5000円。『高っ!』と思って(入るのを)やめたんです」
【愛知県からの観光客】「最初は高いかなと思ったけど、見た後からするとまあまあ妥当かな。やっぱりしょうがないかな」
■フランス・ルーブル美術館でも「二重価格」導入
こうした“二重価格”は世界でも導入が進んでいます。
フランスのルーブル美術館では、今年1月から、EUや一部の周辺国に住んでいる大人は22ユーロ、日本円でおよそ4000円、それ以外の人は32ユーロ=6000円近くかかることになりました。
その理由として、フランス政府は「文化遺産の改修費用に充てたい」と説明しています。
【条件付き賛成・フランス人】「EU外の観光客だからといって、高く払うのはよくないけど、ルーブル美術館の修復のためなら賛成も出来る」
【反対・フランス人】「別料金は不公平だと思います。観光客に対して優しくありません。料金を全体的に少しだけ上げればいいのです」
一方、EU以外の国から訪れた人は…。
【二重価格に賛成・ケニアから】「ここは多くの観光客が訪れる国なので(二重価格でも)公平だと思います」
■「二重価格」導入の動きは京都にも
こうした「二重価格」導入の動きは関西有数の観光地・京都でも検討されています。
江戸時代、徳川慶喜(とくがわ・よしのぶ)が大政奉還を表明した場所としても知られる世界遺産・二条城で、京都市民とそれ以外で入場料を分ける案などが議論されています。
「二重価格」が必要な理由に挙がったのはここでも「修繕費」。徳川家康が建てた二の丸御殿は、築400年以上の歴史ある建物ですが、老朽化が進んでいて、維持・管理のために入場料による収入の拡大が必要不可欠なのです。
【京都市元離宮二条城事務所 日野貴之総務課長】「2011年度から順次いろんなところを修繕していって、いよいよこちらの二の丸御殿を2028年度から工事着手という形で」
(Q.総工費はどれぐらい?)
【京都市元離宮二条城事務所 日野貴之総務課長】「概算で約200億。皆様にご理解される形での二重価格の導入というものに踏み切らないといけないと思っております」
さらに、「二重価格」の導入は観光名所だけでなく、京都市バスでも検討されていて、京都市は、市民の運賃を観光客などより安くする「市民優先価格」制度の導入を目指しています。
さまざまな場所で導入が進む“二重価格”。今後、スタンダードになっていくのでしょうか。
■橋下氏「マイナンバーカードで線引き・一時滞在の外国人はそれなりの高い金額を」
姫路城の二重価格制度は2年前、姫路市の清元市長が「外国人観光客に限って入城料を30ドル、日本円で4700円程度にしたい」という意向を当初明らかにしました。
しかし、「外国人の差別につながる」などの意見があがったことや、外国人の線引きの基準が困難なことなどから、「市民か否か」で線を引くことになったという経緯があります。
こうしたことも踏まえて、橋下徹氏は、「マイナンバーカードは中長期にわたって在留する外国人も取得できるので、これを線引きに使って、円安なのだから観光客などの外国人には高額な費用を払ってもらえばいい」と主張しました。
【橋下徹氏】「僕は、線引きは『マイナンバーカード』。『外国人か、日本人か』で分けると、これは『外国人差別に繋がりかねない』ということになる。
マイナンバーカードは、日本人だけではなくて、中長期の在留資格を持った外国人も交付されます。だから『外国人か、日本人か』よりも、この日本という国、地域において、中長期に在留する・居住しているそういう人は安い金額で。
一時滞在の外国人には、それなりの高い金額を払ってもらって、その収入で、観光施設などの修繕に充てる。
マイナンバーカードは、実務的にも、デジタルで処理できるから、簡単ですよ。読み込みの機械さえ備えれば、簡単にチェックできる」
なお日本人でもマイナンバーカードを持っていない人は、高い料金を支払ってもらうべきだという考えだそうです。
■西脇亨輔弁護士「理屈を重視して慎重にすべき」
一方、元テレビ朝日アナウンサーの弁護士・西脇亨輔氏は「二重価格」について、「慎重にすべき」と主張しました。
【西脇亨輔氏】「私、実は二重価格自体について、『理屈を重視して慎重にすべきなのではないか』と思っているんです。
例えば、姫路城の例は『修繕の費用がかかる』とか、『必要な負担がある』ということで、理屈が立ちやすいのはわかります。
けれども、こういった二重価格、外国人価格というものがどんどん広がっていくと、民間のサービスにも広がっていくかもしれない。
そうすると、どんどん日本人には手に届かない世界というか、そういった価格が外国人標準になっていく。
日本の国の中が豊かというか、お金をたくさん持っている外国人のための贅沢な世界と、そして現地の人にとっての普通の世界。
これまで発展途中の国などに観光に行くと、そういった観光客向けの世界と現地の人の世界が分かれている、分断されているという世界があったように見えていたんです。
それに近いものに日本がなっていってしまうんだとすると、こういった二重価格の導入については、国のあり方も含めて実は慎重に考えないといけないのではないかなとも思うんです」
■橋下氏「円安だからそれなりの金額を」西脇氏「高い方に値段がシフトする」
これに対し、橋下氏は「円安なのだから、大金を払って日本を訪れるような一時滞在の外国人にはそれなりの金額を払ってもらうべきだ」と反論。
一方の西脇氏も「でもそうすると、今度は業者側も外国人の方が儲かるので、高い方にどんどん値段がシフトしていき、世の中が変わっていく」と懸念を示し、激しい議論となりました。
(関西テレビ「newsランナー」2026年5月6日放送)