冬眠から目覚めたクマとの遭遇が懸念される春。山歩きや農作業などで野外へ出る機会が増える中、万が一の備えは欠かせない。その対策グッズの代表格が「クマよけスプレー」である。
福井・鯖江市の企業が開発したクマよスプレーが異例のヒットとなっている。その理由は、一般的なものの10分の1程度という手頃な価格にある。
わずか1カ月での商品化と異例のヒット
環境省によると、2025年度に全国でクマ被害にあった人は238人にのぼり、そのうち13人が命を落とした。これは過去最悪の数字だ。
こうした事態を受け、クマスプレーを開発したのが鯖江市に本社を構えるフジコンコーポレーション。マスクなどの衛生商品やハンディ扇風機といった日用雑貨の企画販売を手がける企業だ。
クマよけスプレーを開発することになった経緯について担当者は「何かクマ対策で何かできないのかとプライベートで言われることもあって…困っている人のお役に立てないかと考えた」と語る。

開発に着手したのは2025年10月。
これまでにもスプレー商品を扱ってきた強みを生かし、クマに効果的な成分などを一から研究。懇意にしているスプレーメーカーとの協力開発により、わずか1カ月という驚異的な短期間で商品化にこぎつけた。
ヒットの鍵は「誰でも買える価格」
開発したスプレーを自社のオンラインショップや県内外の自治体に向けて販売開始。ホームセンターにも販路を拡大すると、5カ月で約およそ7万5000本を売り上げた。クマよけスプレーとしては異例のヒット商品となった。
なぜ、これほどまでに売れたのか。その最大の理由は、同社が最も重視した「誰でも買える価格」にあった。
「手軽に持って登山に行けるもの、というのが一番のポイントでした」と担当者。
一般的に、市販されているクマよけスプレーは、海外製は1万5000円から2万円、国内製でも5000円から1万円ほどと高価だ。
しかし、同社の商品は小さいサイズが750円、大きいサイズでも1450円と、圧倒的な安価を実現させた。
独自のノウハウで実現した低コスト
低価格を実現させたのは、同社が持つ独自のノウハウだ。
普段から取引のある中国の工場との生産ルートを活用。さらに、商品輸送の際には、他のラッカースプレーなどと一緒にコンテナに混載することで、運送費を大幅に削減した。
「ほかのスプレーと一緒に混載して満車にして入れれば、運送費もコスト的に削減できます」(担当者)
加えて、企画開発から販売までを短期間で進めたことによる人件費の抑制や、スプレーの保管に必要な特殊な倉庫を自社で保有していたこともコスト削減につながった。

同社は、クマよけスプレーのほかにもクマ鈴やホイッスルといった対策グッズを自社商品として販売している。
「さまざまな商品でクマ対策の売り場を充実させ、客の期待に応えていきたい」
顧客の“困りごと”を解消したい、その思いがヒット商品へとつながった。
