1人暮らしの高齢者が介護施設などに入居する際に悩ましいのが、ペットと離れ離れになってしまうという課題です。

そんな中、全国でも珍しいペットと入居できる高齢者施設があるんです。
そこでは様々な人生を歩んできた入居者と動物たちが支え合う姿がありました。

神奈川・横須賀市にある高齢者施設。
女性のベッドでくつろぐのは1匹の猫です。

入居者(91):
やっぱり心が和みますね。

おもちゃに夢中の犬や、みんなで使っているというリビングで入居者と寄り添って休んでいる犬の様子も見られました。

ここは全国でも珍しい、ペットと暮らせる高齢者施設。
施設では介護が必要な高齢者40人が13匹のペットとともに暮らしています。

ペットたちは施設内をあっちこっち動き回り、疲れたらお気に入りの場所で昼寝をするなど過ごし方は自由。
飼い主以外の部屋も行き来できるため、入居者はいろんなペットと触れ合うこともできます。

入居者(88):
楽しいよ。楽しくなかったらやっていけないもんね。かわいいのよ。家族だから。

軽度の認知症を抱えていて、約5年前に施設にやってきた飼い主の草刈さん(91)とペットのプリン。

ペットと暮らす草刈さん:
もういるのが当たり前でね、いないと寂しいですよ、いなくなったら…。

さくらの里山科 施設長・若山三千彦さん:
「犬と暮らしたい」「猫と暮らしたい」その高齢者の希望をかなえる、それだけなんです。

これまでの高齢者施設のあり方に疑問を抱いていたという、施設長の若山さん。

さくらの里山科 施設長・若山三千彦さん:
(施設で)音楽を聴いちゃいけないと言われたら納得できない人多いですよね。同じように、ペットと一緒じゃないと生きてるかいがないと、そう考える人も多い。なのに何で老人ホームに入ったらペットと暮らせないのは当たり前なんでしょうか。私はそれがおかしいと思いました。

“高齢者が生き生きと暮らせる場所にしたい”と14年前にこの施設を立ち上げたといいます。
背景には「ペットの飼い主の高齢化」という深刻な問題もありました。

さくらの里山科 施設長・若山三千彦さん:
飼えなくなる高齢者がいるために保健所に送られるペットが多い。ペットと暮らし続けることが可能になれば、高齢者がペットを保健所に入れなくて済みます。

東京都の調査によりますと、動物愛護センターでの犬・猫の引き取りで最も多い理由が「飼い主の病気や入院」、そして「高齢者施設へ入ること」です。

さらに、若山さんが考えるもう1つの課題が「高齢者の孤独死」です。

さくらの里山科 施設長・若山三千彦さん:
犬を置いていけない、猫を置いていけないために老人ホームに入るのを拒み続けて、もう本当にギリギリの状態で入ってきたという人たち、そういう高齢者とペットも何組もいます。共倒れになってしまっている例もあります。

こうした課題や高齢者の生きがいを守るため、若山さんが立ち上げたのが“ペットと暮らせる高齢者施設”だったのです。

14年前から施設で暮らしている81歳の澤田さんは「ここに来てよかった」と話します。

ペットと施設に入居した澤田さん:
(40代で)両親が亡くなってすぐにまた妹が亡くなったんですよ。みんな亡くなっちゃって、私1人だけ。

身寄りがなく、施設へ入居せざるを得ない状況に。
しかし、ペットの「祐介」と離れて暮らすことに抵抗を感じ、施設への入居を悩み続けていました。

ペットと施設に入居した澤田さん:
(一緒に暮らせないのは)「絶対に嫌だ」って言ってた。絶対にそんなところあるわけないって。

そんな時、この施設の存在を知り、入居を決意。

若山さん:
祐介君と一緒に、ここで7年半暮らして、いつも一緒でしたもんね。

この施設でともに暮らし、15歳で天国に旅立った「祐介」。
澤田さんは、この施設で最期までそばにいることができました。

ネコの「ゆりっこ」は、数年前に施設にやってきた保護猫で、今は澤田さんと仲良く暮らしています。

ペットと施設に入居した澤田さん:
いるっていうだけでいいですね。(部屋の)外に出て、ゆりっこのいる場所に行くと、ゆりっこがいる。そういう状態がすごく幸せを感じる。(一緒に暮らせる施設は)絶対に必要だと思います。

施設への入居希望は各地から相次いでいます。
高齢化が進む中、“ペットと暮らし続ける”ことに需要が高まっているといいます。

若山さん:
いつも、ちびちゃんと銀ちゃんをかわいがってくれてありがとうございます。

入居者:
もう少し頑張んなきゃいけないんだけどね。

若山さん:
これからもワンちゃんたちのこと、かわいがってくださいね。

ペットと一緒に生活することについて、入居者からは「楽しい」という声が聞かれました。

さくらの里山科 施設長・若山三千彦さん:
同じ事をやりたいと、今から挑戦しようと言っている特別養護老人ホームもいくつかあります。そうやって少しずつ広がっていって、(施設に)ペットを連れていくのが当たり前の社会になってほしい。