2025年、秋田県の社長の平均年齢は66.3歳と全国最高を5年連続で更新した。全国平均も過去最高水準に達する中、後継者不足による廃業が深刻化している。こうした状況下で、能代市の自動車板金塗装店が第三者承継に成功した。地域に根差した事業を次代へつないだ現場を追った。
高齢化が止まらない経営の現場

2025年の都道府県別の社長の平均年齢が公表された。秋田県は66.3歳で全国最高となり、全国平均も63.8歳と過去最高を更新した。経営者の高齢化は、地方経済が抱える構造的な課題の一つとなっている。
高齢化が進む企業ほど業績が伸び悩む傾向があるとも指摘され、その背景には新たな挑戦への慎重姿勢や、設備投資・人材育成の遅れがある。
そして、その根底にあるのが「事業承継の遅れ」だ。後継者が決まらないまま時間だけが過ぎ、黒字でも廃業を選ばざるを得ない企業は少なくない。
「独立できる最後のチャンスだった」
秋田・能代市二ツ井町で自動車の板金塗装を手がける「藤耀(とうよう)ボディー」。社長の藤田裕二さん(46)は2025年3月、同じ町で長年営業してきた「さとうボデー」を引き継ぎ、独立を果たした。
藤田さんは15年間、兄が経営する自動車整備工場に勤務し、現場で経験を積んできた。
独立を模索していた藤田さんのもとに、2024年11月、思いがけない知らせが届く。前経営者の高齢化を理由に、「さとうボデー」が承継先を探しているという情報だった。
「年齢的に考えても、独立するならこれが最後のチャンスだと思った」と当時を振り返る藤田さん。思い切って一歩を踏み出す決意をした。
事業承継を支えた“つなぎ役”

事業承継は、単なる社長交代ではない。事業譲渡契約、不動産の扱い、従業員の雇用継続など、複雑な手続きが伴う。藤田さんと前経営者を結びつけたのが、「県事業承継・引継ぎ支援センター」だった。
センターは自治体や商工会と連携し、承継を希望する事業者へのマッチングや、専門的な事務手続きの支援を行っている。秋田県は後継者不在率が全国で最も高く、こうした支援の重要性は年々高まっている。
センターの担当者は「地域で長く続き、必要とされてきた事業を残すことは、雇用や暮らしを守ることにつながる」と話す。
引き継がれたのは“信頼と技術”
藤田さんは前経営者の佐藤正人さんとの面会で、設備や顧客だけでなく、「信用や人とのつながりを大切に引き継ぎたい」という思いを伝えた。
その姿勢が評価され、2025年3月、承継は成立した。
新たな社名は、2人の名前に共通する「藤」の字をとって「藤耀ボディー」と名付けられた。
開業後しばらくは佐藤さんが毎日のように工場を訪れ、顧客対応や技術面、仕事への向き合い方を丁寧に伝えたという。
従業員と顧客が支える新たなスタート
現在、藤田さんは「さとうボデー」で約7年間働いてきた従業員とともに事業を続けている。
従業員の田村舞子さんは「不安もあったが、常連のお客さんから『いてくれて良かった』と言われると、この会社に残って良かったと思える」と語る。
承継によって守られたのは、事業そのものだけではない。雇用、顧客との関係、地域の安心感――目に見えない価値が確かに引き継がれている。
第三者承継という現実的な選択肢

県事業承継・引継ぎ支援センターによると、承継先を5年以上探しても条件が合わないケースは珍しくないという。一方で、「親族が家業を継ぐ」という従来の考え方にとらわれず、第三者への承継を選ぶ事業者は増えている。
藤田さんは「佐藤さんが築いてきた信頼を裏切らないよう、これからも誠実に仕事を続けていきたい」と語る。
経営者の高齢化が進む中、第三者承継は地域の事業を守るための、現実的で力強い選択肢となりつつある。
(秋田テレビ)
