世界でも男女平等が進んでいる北欧。その国の一つ、スウェーデンに本社を置くのは、日本でもおなじみの輸入家具メーカー、IKEAだ。

男女平等の先進国から女性活躍を進めるヒントを探すため、イケア・ジャパンのCEO兼CSOのペトラ・ファーレ氏に話を聞いた。

“女性活躍のヒントを探しに”

日本でも「『女性活躍』とよく聞くものの、実際はどうなのだろうか。 厚生労働省の調査では、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は13.1%。また内閣府の調査によると、男女平等の実現度を示すジェンダーギャップ指数も148カ国中118位とまだまだ低い。

そんな日本国内でも、イケア・ジャパンの場合は、マネージャー職の男女比率が50:50となっている。

島田彩夏アナウンサーとイケア・ジャパンのペトラ・ファーレCEO兼CSO
島田彩夏アナウンサーとイケア・ジャパンのペトラ・ファーレCEO兼CSO
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2017年に50:50を達成し、その後もほぼ半数の比率を維持し続け、2026年1月には女性マネジャー職比率52.3%を達成した。

IKEAはどうやってこの男女比率に至ったのか。そのヒントを探るべく、フジテレビの島田彩夏アナウンサーと共にイケア・ジャパン本社に向かうと、社内には女性が活躍しやすくなる、施設・制度、そして文化があった

コーヒーブレイクの習慣「フィーカ」

本社でまず驚いたのが、開放感のあるワークスペース。大人数でミーティングができる「オープンスペース」では、従業員が階段に座って会議をすることもあるそうだ。

イケア・ジャパンの社内 開放感のあるオープンスペースとなっている
イケア・ジャパンの社内 開放感のあるオープンスペースとなっている

また社内にはキッチンスペースがあり、そのまわりではコーヒーを飲みながら談笑する社員たちの姿があった。スウェーデンにかかせないコーヒーブレイクの習慣、「フィーカ」を楽しんいるのだ。社員は自由に「フィーカ」の時間を過ごし、時にはそこで仕事の話もするという。

スウェーデン式のコーヒーブレイク「フィーカ」 もちろん無料
スウェーデン式のコーヒーブレイク「フィーカ」 もちろん無料

さらに窓の外に目を向けると、子どもたちが遊ぶスペースがあった。

「私もそこで子どもを預けていたんです」と、社員の一人が話す。

オフィスの窓から子どもたちを預かる企業内保育所が見える
オフィスの窓から子どもたちを預かる企業内保育所が見える

IKEAは、「ダーキス」という企業内保育所を設けていて、職場のキッチンスペースから窓の外で子供が遊んでいる様子を見守ることができる。自由で開けた社内風土を感じた。

その狙いについて、島田アナウンサーがイケア・ジャパンのトップ、ペトラ・ファーレ氏に話を聞いた。

島田彩夏アナウンサーとイケア・ジャパントップのペトラ・ファーレ氏
島田彩夏アナウンサーとイケア・ジャパントップのペトラ・ファーレ氏

――イケア・ジャパンも元々は男女平等ではなかったのでは。どのように改善できたのですか?
男女平等は人権上当然のこと」という価値観だけでは実際は難しいと考え、「制度的なアプローチ」をとることも必要だと考えました。

IKEA的3つの制度的アプローチ

イケアがとった「制度的なアプローチ」とは、
①同一労働同一賃金の導入
②社内のポジションに社員が自由に応募できる=オープンイケア制度
③昇進し続けるのではなく現在の役職にとどまったり別の職種に就いたりと幅広く自由にキャリアを形成していくスタイル=ジャングルジム型キャリア

イケア・ジャパンのペトラ・ファーレ氏
イケア・ジャパンのペトラ・ファーレ氏

まずは賃金の保障、そして自由なキャリア設計と社員が安心して働ける環境を整えたことが職場での平等の実現につながったという。

職場での平等は家での平等から

ファーレ氏は、「職場での平等を実現するには、まず家庭での生活における平等から始める必要があります。そして、働き方や社会を変えるには時間がかかることに私たちは気づきました」と話す。

「家庭での平等」というのは具体的にいうと、パートナー間での家事や育児の分担について公平であるかどうかだ。

国立社会保障・人口問題研究所のデータによると、日本では、家事の分担差が妻と夫で8:2と妻の方に偏りが大きくなっている。

IKEAでは、職場とともに家での平等も進めているという。しかし、IKEAで働く社員らは、最初から家庭での平等を実現できていたわけではないそう。

30代の男性社員は、「IKEAでいろんな働き方や家事や育児の分担の仕方をみて、10年かけて考え方が変わった。手伝うという考え方がなくなった」と話す。

対話を続けましょう

では、ファーレ氏は「家庭での平等」の実現について、どのように考えているのか。

――イケア以外でムーブメントを起こすにはどうしたらよいと思いますか?
対話が何より大切だと思うのです。家庭でどんな生活を送りたいか、どんな働き方をしたいか、社会をどう変えたいか。こういったことを相手と話し合いましょう。そしてその対話を続けるべきです。働き方や会社の構造を変えることではなく、何をしたいか、どうしたいかを話し合うことが必要です。日本だったら可能です。特に日本は絶対できます。

「keep a dialogue going.(対話を続けましょう)」と強く語るファーレ氏
「keep a dialogue going.(対話を続けましょう)」と強く語るファーレ氏

ファーレ氏が「日本は絶対にできる」と強く推す理由のひとつとして、日本では「他者への尊重・配慮」や「社会規範を徹底する」文化が根付いていることがあると話す。

ファーレ氏が日本に住み始めてから、電車で電話をしないなどといった公共マナーやゴミ箱が設置されていないにもかかわらず街がきれいであることに驚いたそう。

日本のこうした「他者を尊重する姿勢」こそがジェンダー平等の実現を後押しする大切な土台ではないかとファーレ氏は考える。

社長室がない

社内をめぐっていると、「私はきょうここに座っているんです」とファーレ氏が話した。

取材当日のファーレ氏のデスク。社長室はなく目の前には仕事をする社員の姿が
取材当日のファーレ氏のデスク。社長室はなく目の前には仕事をする社員の姿が

紹介されたのは、社員が座っているフリーデスクの一角だ。IKEAでは、職場環境においても平等を重視していることから、社長室や役職によるデスクを設置していない。

ファーレ氏は、目の前の社員と気軽に会話を交わしていた。

取材中に印象的だったのは、ファーレ氏をはじめ、広報担当者など話をした社員の皆が、最初から最後まで相手の話を頷きながら真摯に聞いてくれた事だ。いわゆる「傾聴する姿勢」を感じた。

平等につながる「対話」とは、まずは相手を尊重し会話をする姿勢を示すことも大切であり、ファーレ氏が指摘する「他者への尊重・配慮」が職場、家庭での男女平等、そして、日本での女性の活躍につながるのではないか。

【取材・執筆:フジテレビ報道局 中山瑞稀】

中山 瑞稀
中山 瑞稀

2024年フジテレビ入社。報道局で内勤記者として「ホースセラピー」「防災下着(女性の災害対策)」「子ども靴のサブスク」など、暮らしや防災にまつわる内容を取材。