「ホルムズ海峡に艦船派遣を」というドナルド・トランプ米国大統領の言葉が最初に伝えられた時、一部メディアが「要求」「要望」という強い言葉を使っていて、おかしいなと思った。
というのは原文では「hopefully」という単語が使われており、これは「うまくいけば」とか「できたらいいな」という意味の言葉だ。読売の「艦船の派遣を願う」という見出しが1番近いものだった。
石破氏の指摘は“悪手”
これに関連して19日に行われる日米首脳会談でトランプ氏から高市早苗首相に対し艦船の派遣を求められるのではないかという指摘があるが、別に高市氏は即答する必要はなく、「慎重に検討します」と言えばいいだけのことだ。
トランプ氏は日本の艦船派遣よりは、例の対米85兆円投資第1弾の「原油積み出し港建設」「人工ダイヤモンド製造」などの話が難航していることの方により関心を持っているとの情報もある。
またこの問題をめぐって石破茂前首相が15日のフジテレビ「日曜報道THE PRIME」で、イランへの攻撃が国際法違反でないことを高市首相が首脳会談でトランプ氏に確認する必要があると指摘したが、これは「悪手」なので高市さんは決してやってはいけない。
そもそも米国の攻撃は国際法違反なのか。形としては先制攻撃なのでその疑いはある。
“国際法違反”議論は意味が無い
一方でイランは長年にわたって核開発を続け、ミサイル攻撃を周辺に対して行い、さらにハマス、ヒズボラ、フーシなどのテロ組織を支援してきた。
これらのことは、米国および友好国にとって「国の存立を脅かす脅威」であり、反撃をしたとも解釈できる。
そもそも国際法の根拠を国連憲章に求めるならば、国際法を全く守る気がない中露が常任理事国である限り、国際法違反うんぬんの議論はあまり意味がないと思う。
高市首相が米国のイラン攻撃について、「自衛のための措置なのかどうかも含め詳細な情報を持ち合わせていない」として法的評価を控えている事に対し同じ「日曜報道」に出ていた橋下徹元大阪府知事は「高市さんは逃げている」と批判したが、いい加減にして欲しい。
ちなみに英国は今回の米国の最初のイラン攻撃に際し、英国の基地使用を認めなかったが、キア・スターマー首相によると、イランの反撃が「言語道断」なもので、「英国民と国益と同盟相手への脅威」になったため、その後、基地使用を認めた。
そして空母派遣をトランプ氏から拒否されたが、タンカー護衛のための艦船の派遣については現在検討を行っている。つまり英国は自国の利益を最大限にするための行動を取っているだけで、それ以外の余計なことは言わないしやらない。
これが「賢い」外交であり、安全保障である。
薄っぺらい正義感はいらない
だからトランプ氏に高市首相が「国際法違反ではないですか」と確認することなど愚の骨頂であり、そういうことをしない高市氏を「逃げている」と批判するのは日本の国益にとって何のいいこともないのでやめた方がいいと思う。
外交と安全保障は「正しいか正しくないか」ではなく、国民と国家が「どうすれば生き延びることができるのか」という判断だ。「正義」は必要だが薄っぺらい「正義感」ならいらない。
さてそれでは日本はどんな「貢献」ができるのか。2015年の安保法制の国会質疑で安倍晋三首相は「ホルムズ海峡の機雷敷設」によるエネルギー供給断絶は日本の死活問題であり「存立危機事態」になる可能性を指摘した。
同時に「違法な武力行使は国際法上認められない。我が国がそういう国を支援することはない」という答弁もしている。
これまでの国会審議で中道改革連合の議員はこの安倍答弁をタテに「自衛隊を派遣することはありませんよね」と何度も念を押していたのだが、これはちょっとおかしいと思う。
と言うのは「違法な武力行使をした国を支援しない」という安倍答弁には前段があり、安倍氏は「仮にある国が何ら武力攻撃を受けていないのにも関わらず」と述べているのだ。
つまりこれまでのイランの核開発、ミサイル攻撃、およびテロリスト支援をどう捉えるかということを考えると、米国やその友好国が「何ら武力攻撃を受けていない」とは言い切れない。
また英国のように最初の攻撃を認めなくても、その後のイランの反撃が「国益に反する」と考えれば、事態が変わったとして行動に参加することは不可能ではないだろう。
一方、戦闘が続いている現状で米国が日本に機雷掃海を依頼することはないし、海上自衛隊の艦船によるタンカーの護衛は集団的自衛権の発動になるのでハードルが高い。
ただ停戦後なら機雷掃海もできるし、海上警備行動でタンカーの護衛をしたり給油などの後方支援もできるのではないか。
問題はこれで十分な貢献と世界にみなされるかということだ。
ショウ・ザ・フラッグ
2001年の911テロ後に米国のリチャード・アーミテージ国務副長官が日本に対して「ショウ・ザ・フラッグ」=「旗幟を鮮明にしろ」と述べて支援策の明示を求めた。
日本が憲法上の制約で実質的に戦闘には加われないことは米国をはじめ理解はしているのだが、「石油は欲しいが船は出さない」という態度が本当に納得してもらえるのか。
ロシアはウクライナを侵略し、中国は軍拡と領土拡張を隠さない。こうした中でイスラエルはテロを仕掛けてきたハマスに反撃するだけでなくその後ろ盾のイランを潰しにかかり、そこに米国も加わった。
世界は冷戦後の混乱を経て、新しい秩序が形作られつつあるように見える。
この状況で日本が国民の命と国益を守るために、場合によっては他の民主主義国家並みの国際貢献をできるよう、憲法を改正することが必要なのではないか。
