2歳の娘への傷害致死罪に問われ、7年以上の時を経て無罪が確定した今西貴大さん。

無罪判決が確定した今西さんは「無罪が確定して心が軽くなりました。心ががんじがらめにされて、いろんなことが制限されていた」と振り返り、自身と同じように“身に覚えのない虐待”を疑われている男性の裁判に通い続けている。

13日の判決を前に、今西さんは「(男性の)判決が出たら黙って抱きしめてあげます」と述べ、男性に寄り添う理由を明かした。

■「7年以上もの間、置かれてきた被告人という立場からようやく解放」

今西貴大さん:川崎先生から電話かかってくること滅多にないんで。電話がかかってきた瞬間にうわっと思って。出たら『今西くん確定したで』って言われました。

今西さんは、主任弁護人の川崎弁護士からの突然の連絡で、自身の無罪が確定することを知った。

今西貴大さん:7年以上もの間、置かれてきた被告人という立場からようやく解放されました。

今西貴大さん
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■自宅で2歳の娘が突然倒れ亡くなり、虐待を疑われた今西さん 一審では懲役12年の実刑判決

2017年12月、自宅で2歳の娘が突然倒れ、7日後に亡くなり、最後に一緒にいた今西さんは虐待を疑われた。

死因は、揺さぶりなどの暴行か、病死かが争われた裁判で、一審では「強い外力がなければ生じない」として、懲役12年の実刑判決が言い渡された。

今西さんのノートより:終わってる。もうどうでもいい。もうどうなってもいい。

二審での審理は3年以上にも及び、今西さんの勾留は続いた。およそ5年半の拘置所生活が終わったのは、二審判決の直前だった。

今西貴大さん
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■保釈後も、今西さんは常にGPSで行動が把握される生活

保釈後も、今西さんは常にGPSで行動が把握され、いつ、どこで、誰と会ったかも記録することが求められた。

今西貴大さん:これがGPS。いつも首からぶら下げてるんですよ。

偶然道で知人とすれ違ったときも報告が必要だった。

今西貴大さん:どこで検事が見てるか分からない。レジで買い物するときも店員の名札も見て書いているし。

支援者が集まる会合に直接参加することもできず、拘置所の外でも不自由な生活は続いた。

今西貴大さん
今西貴大さん

■「6年も人の自由を奪っておいて、またさらに自由を奪うのでしょうか」

大阪高裁は、「虐待を示す事情は認められない」として、逆転無罪を言い渡した。これでようやく自由な生活が戻るはずだった。

しかし、検察は上告。

今西貴大さん:6年も人の自由を奪っておいて、またさらに自由を奪うのでしょうか。

それからおよそ1年3カ月後、最高裁が上告を棄却し、ようやく今西さんの無罪が確定したのだ。

今西貴大さん
今西貴大さん

■「本当に『見えない手錠』ってあるんですよ」

無罪が確定したいま、今西さんは振り返る。

今西貴大さん:無罪が確定して、心が軽くなりました。法律って全く目に見えないものじゃないですか。

それに心ががんじがらめにされていて、いろんなことが制限されてたんだなって思います。

本当に『見えない手錠』ってあるんですよ。

今西貴大さん
今西貴大さん

■“自分の事件に似ている”…今西さんが気にかけている裁判

今西さんには、自分の事件に似ているとずっと気にかけている裁判がある。

毎週末、交際女性の家に通い、2歳と生後4カ月の赤ちゃんの世話をしていた男性。女性がごみを捨てに外に出た5分の間の出来事だった。

赤ちゃんの様子が急変し、男性はすぐに病院に連れて行った。検査の結果、急性硬膜下血腫などが見つかり、最後に一緒にいた男性が揺さぶって暴行したと疑われ、起訴された。

傷害罪に問われた男性(40代):これだけは分かってほしいのは、僕はやってません。僕は隣の部屋にいて、様子が急変してから気づいているので。

傷害罪に問われた男性(40代)
傷害罪に問われた男性(40代)

■検察側は「揺さぶりなどの外力により硬膜下血腫などの出血があった」と主張

専門家の意見は分かれている。

裁判で検察側は、「揺さぶりなどの外力により硬膜下血腫などの出血があった」と主張。

検察側の主張
検察側の主張

■弁護側は「低酸素状態に伴う出血の可能性が高い」と主張

一方、弁護側は、赤ちゃんには重度のけいれんがあったことから、「低酸素状態に伴う出血の可能性が高い」と主張した。

男性の主任弁護人 秋田真志弁護士:内因(病気)でも硬膜下血腫が起こりうることは、海外ではかなり言われてきてるんですけども、残念ながら日本ではまだそこまでの議論には至っていない状況です。

弁護側の主張
弁護側の主張

■小児眼科学会のトップを長年務めるA医師の証言が検察側の拠り所に

男性の裁判で、検察は「眼底出血からだけでも強く複数回揺さぶられたと推認できる」と主張。

検察側の大きな拠り所となったのは、小児眼科学会のトップを長年務めるA医師。

A医師(検察側)の証言:これは暴力的に極めて強く揺さぶる行為だけが可能である。

A医師は、「揺さぶりにより、眼球の大部分を占める硝子体が引っ張られた」と説明した。

検察側の主張
検察側の主張

■弁護側の眼科医は、「A医師の見解は根拠がない」と指摘

これに対し、弁護側の眼科医は、「A医師の見解は根拠がない」と指摘。頭蓋内出血で脳圧が高まることに伴う出血だと説明した。

弁護側の主張
弁護側の主張

■「日本の眼科医の中でSBSの問題をよく知っいる人はほとんどいない」男性の主任弁護人

男性の主任弁護人 秋田真志弁護士:日本の眼科医の中でSBS、(AHT=虐待)の問題をよく知ってる人ってほとんどいないんです。

(学会の)ボスみたいな人が中心になって(見解を)言うと、その人の言うことが全部まかり通ってしまっているのでないか。非常に深刻な事態として考えてます。

男性の主任弁護人 秋田真志弁護士
男性の主任弁護人 秋田真志弁護士

■「判決が出たら黙って抱きしめてあげます」

ことし1月、男性の裁判は結審。検察は懲役6年を求刑した。

(Q:男性の判決は傍聴に行くんですか?)
今西貴大さん:もちろん行きます。

今西貴大さん:赤ちゃんと2人きりに(になった約5分)の間にそんな暴行を加える親がいてるんか?僕はすごい疑問に思いました。

刑事裁判の被告人って法廷で何もすることができない。当事者がちょっと置いていかれてる感じが常にあるし、何かあったときに全部責任負うのは自分という気持ちがすごい強い。

でも、僕も同じだったんで。『そうじゃないんやで、みんなおるねんで』って(男性に)伝えられたらいいな。

最後に、今西さんは「判決が出たら黙って抱きしめてあげます」と話した。

男性の判決は13日、大阪地裁で言い渡される。

(関西テレビ「newsランナー」 2026年3月12日放送)

今西貴大さん
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関西テレビ
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