宿泊業界を取り巻く慢性的な人手不足。こうした中、従業員の働き方改革を実践しながらも、利用者の満足度を高め売り上げを伸ばしている温泉宿がある。キーワードは泊食分離だ。

観光地を襲う深刻な人手不足

豊富な海の幸を求めて国内外から多くの人が訪れる沼津市。

一方、観光客がもたらすにぎわいの裏で宿泊事業者はいま、慢性的な人手不足に直面している。

帝国データバンクによると、2026年1月時点で「非正規社員が不足している」と答えた国内の旅館・ホテルは実に44.0%。

全業種の平均、28.8%を大きく上回っている。

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こうした中、休館日を設けるなど働き方改革を実践することで、人手不足を補いながらも 売り上げを向上させている旅館の取り組みがいま、注目されている。 

食事は外で!異例の”泊食分離”

ナトリウムやカルシウムが豊富な天然温泉を楽しむことができる沼津市戸田地区のAWA西伊豆。

コロナ禍だった2022年のオープンということもあり、当初こそ集客に苦労したものの、 宿泊者数は年々、順調に伸びている。

一方で、悩みの種となっていたのが人手不足。

そこで、開業翌年に始めたのが“泊食分離”という取り組みだ。

AWA西伊豆の藤田卓也 支配人は「無理にここで朝食・夕食と、すべてを食べてもらうのではなく、我々が普段ここで生活している中で『ここが楽しい』『ここがおもしろい』というところをお客さんに伝え、そこに誘導した方が、最終的には『この町が楽しかった』という満足度につながる」と、その狙いを打ち明ける。

AWA西伊豆・藤田支配人(手前)
AWA西伊豆・藤田支配人(手前)

温泉宿としては異例とも言える素泊まりや朝食だけが付いたプランを中心に据えることで、調理場を担当するスタッフの負担を軽減。

飲食店も歓迎!地域をつなぐ”新形態”

宿泊客にはチェックインの際、周辺にあるオススメの飲食店を紹介していて、この日は近くの店が良いマグロを入荷し、大トロもあるという。

愛知県から観光に来た大関さん夫妻は、説明を受けるとさっそくAWA西伊豆が無料で貸し出している自転車に乗って戸田の街へ。

10分ほどでオススメされた創作料理店に到着すると、地元で獲れた海産物や野菜を使った料理のほか、ハンバーグなど自慢の逸品を堪能し大満足の様子だ。

妻のすみれさんによれば、“泊食分離”の魅力は食べ歩きができて、時間にも縛られないこと。

もちろん、飲食店側も”泊食分離”の取り組みを歓迎していて、大関さん夫妻が訪れた港の想咲キッチン ふかっちぇの深瀬諒オーナーは「食は食、泊まりは泊まりでやってくれると地域全体活気づく」と話す。

温泉宿に休館日?それでも売り上げアップ

また、AWA西伊豆では繁忙期と閑散期がはっきりしている宿泊業の特性を生かし、年間95日にも及ぶ休館日を設定。

それでも、2025年度の売上高は開業初年度と比べすでに3割ほど増えているそうだ。

このため、藤田支配人は「近隣の飲食店のハブになるような価値を提供すると共に役割を担い、人も町も元気になるような旅館を目指していきたい」と意気込む。

従業員にとっても、宿泊客にとっても、地域の飲食店にとっても満足度の向上につながっている”泊食分離”。

これまで1泊2食付きが当たり前だった旅館業に新たな風を吹かせている。

(テレビ静岡)

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