人手不足に悩む企業が多い中、特に深刻なのが自動車整備業界だ。職業別の有効求人倍率は5倍を超えていて、専門的な教育を受けた即戦力以外にも間口を広げることで人材確保を目指している。
引く手あまた!自動車整備業界から“熱視線”
静岡県沼津市にある飛龍高校。
自動車の整備について専門的に学ぶことができる学科が県内で唯一設置されている高校だ。

生徒に同校の自動車工業科を志望した理由を尋ねると、鈴木統春さん(2年)は「(自動車整備について)学ぶことができるのがここしかなかった。愛知にもあったようだが、県外には出たくないとおもった」と話し、小学生の頃から整備士に憧れていたという安藤伊吹さん(2年)は、当初、他の工業高校への進学を検討していたものの「今後2級・1級(自動車整備士)を取得するにあたり、高校3年間、他の人よりも多くを先に学んでおいた方が今後の仕事に有利になるのではないかと思った」と答えた。

いま、この自動車工業科の生徒に企業から熱い視線が注がれているといい、同科の生野正弘 先生は「整備関係(の企業)からは、とにかく『いないか?』『いないか?』っていうことで、直接、声が掛かっている状況」と証言する。
一体なぜなのか?
飛龍高校自動車工業科が”アツい”ワケ
飛龍高校自動車工業科の特徴は、国家資格である3級自動車整備士の受験資格を得られることにある。
通常、試験を受けるためには6カ月以上の実務経験が必要となるが、定められた課程を履修することで2年生を修了した時点で受験が可能に。
このため、例年、卒業までに全員が3級自動車整備士の資格を取得。

即戦力としての活躍が期待されるため、毎年、自動車整備に関連する企業からの引き合いが絶えない。
ただ、生野先生によれば企業側への人材供給は全然間に合っていないといい、「静岡県自動車整備振興会を中心に人材育成・確保ということで取り組んでいるが、個人経営の会社は高齢化の中で後継ぎがおらず、事業を停止しなければならないところも実際出ているので何とかしなければいけない」と危機感を募らせる。
待遇改善で人材確保は順調 ただ業界全体は…
飛龍高校の卒業生4人を含め、9人の自動車整備士を抱えている沼津中央自動車。
資格の取得に必要な費用を全額会社で負担する支援制度に加え、福利厚生の充実や整備場への冷暖房の完備など、“働きやすさ”を追求することで現在のところ人材確保は順調で、整備士の植松湧希さんは「有給休暇の取得しやすさもそうだが、融通が利くところが結構ある。時間を取ることができれば、自分の車を整備することもできる」と満足げな表情を浮かべ、同じく整備士の菅野精司さんも「ずっとここで使って(雇って)もらっていて、他で働こうと思ったことはない」と愛社精神をのぞかせる。

ただ、業界全体を見渡すと人手不足を感じる場面が多いといい、同社の今野雄一郎 専務は「”3K”と思われがちな点や待遇面で子供も親も厳しいと考え、その結果、有効求人倍率が高いということもあると思う」と推察する。
厚生労働省によると、2024年度の職業別有効求人倍率は全職種の平均が1.14倍に対して 自動車整備・修理工は5.09倍。

また、帝国データバンクのまとめでは、2024年度における自動車整備事業者の 休廃業や解散、倒産は計445件と過去最多になっている。
未経験者歓迎!未来を担うシン・人材戦略
こうした中、県内の自動車整備業界がいま力を入れているのが異業種からの中途採用。
まずは業界への興味を持って入社してもらい、教育体制を手厚くすることで専門的な知識や技術は仕事を通じて覚え、その先に資格の取得につながっていけばよいという考えだ。

今野専務は「車自体はこれまでも、これからも無くならないので、整備士は絶対に必要。国家資格を取得すれば一生働くことができる仕事なので、大変魅力的な仕事だと思う」と強調した上で、「こうした点を各企業としても業界としても伝えていけるように取り組んでいかなければならない」との認識を示す。
慢性的な人手不足の背景には若者の車離れに加え、労働環境の厳しさがあると言われる自動車整備業界。
自動車大国・日本の安全を支えるためにも、魅力の発信など業界としての自助努力はもちろん、国としての施策も求められている。
(テレビ静岡)
