「制服を着せることに違和感」がある中、制服を導入する動きも

「アルマーニの制服」を採用した日本の公立小学校の騒動は、フランスでも報じられた。
大きな話題になった訳ではないが、アルマーニは小学生の服としては高価すぎると失笑を買った。

また、フランス人の友人に「服育」が目的のひとつであることを説明すると、決められた服を着せたら、個性を潰してしまうのではないかと指摘された。
私はパリに駐在して3年半になるが、子供の制服姿をほとんど見たことがない。

フランスでは一部の私立学校を除いて、制服を採用している小学校はない。
ドレスコード、状況に合わせた服装規定を学ぶ機会はあっても、「制服を着ることで学ぶ」という考え方は基本的にはない。
そんな背景から、この国では「小学生に制服を着せる」こと自体に違和感があるのだろう。

しかし、最近、一部の学校で、制服を導入しようという動きがある。
貧富の差を考慮しての対策だ。
自由な服装にしていると、経済的に貧しい家の子供が、裕福な家庭の子が着る高価な服を買えないような状況が生まれる可能性があるためだ。
 

安全管理のために「紺色か白色の服を着る」ルール

私の子供が通う私立の小学校には制服はない。
しかし「紺色か白色を着る」というルールがある。
ほどんどの小学生が自由な服を着ているパリで、紺色と白色を着た小学生は目立つ。
学校の狙いのひとつはここにある。

安全管理のために、自分の学校の児童と他校の児童の見分けがつくようにしている。
パリの小学校は、校庭が併設されていないケースが多く、私の子供の学校にも校庭はないため、休み時間に児童らは校舎前の公園で、一般の人に交じって遊ぶ。

色とりどりの服装の人が集う公園の中で、紺と白の服の児童らは、確かにすぐに見分けがつく。
誰が一人きりでいるか、けんかをしている相手が同じ学校か他校の児童か、すぐにわかる。
制服姿が他にいないから、日本のように制服の色や形、校章で判別する必要がない。
 

 
 
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制服の価格や思惑に惑わされず自由な精神を育ててほしい

児童らからは、もっときれいな服を着たいという声も多く、小学生まではルールを守るものの、中学生になり「紺色、白色」ルールから解放されると、長い間、身体の中に隠されていたものを思い出すかのように、すぐに連日ファッションショーのごとく服を変える生徒もいるという。

この国では、自分のやりたいようにやる事が大事で、周囲に合わせたり、配慮したりしない。

まわりも大きな問題がない限り、自由を尊重しようとする。

別な言い方をすれば、誰が何をしようが、批判したり、つぶしにかかったりすることがなく、放っておいてくれる。
まるでフランスの精神「自由・平等・博愛」に従っているように。

小学生で高級な制服を着ることになった児童には、その人物が着ている服の価格に構わず友になり、制服をめぐる大人の思惑などに惑わされることなく、自由な精神を育ててほしいと思う。

3月半ば、雪が降りエッフェル塔も「白色の服」を身にまとった。

【執筆・写真:FNNパリ支局長 後藤譲 】  
 

国際取材部
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