原爆の悲惨さを被爆樹木が語る…絵本に込めた平和へのメッセージ【広島発】

カテゴリ:国内

  • 被爆樹木が主人公となり語りかける絵本を作った藤原美香さん
  • 「被爆樹木の多くが爆心地に向いて傾いている」という研究結果を知り絵本作りを決心
  • 藤原さん「絵本が平和について考えるきっかけになってくれれば」

「被爆樹木」が絵本に

今年、1冊の絵本が完成した。被爆樹木が主人公となり、語りかける。
「わしはあの日がわすれられんわしはうごけんしはなせんけどつたえたいことがあるんじゃ」

この絵本を作ったのは広島市南区に住む藤原美香さんだ。

藤原美香さん:
やっぱり生きてるんだなっていうのをすごく感じます。これは直接会いにいかないと、写真なんかじゃちょっと伝わらないなっていうのは実感しました

普段、小学校で絵本の読み聞かせのボランティアをしている藤原さん。
ボランティア仲間の村本さんに協力を依頼し、「被爆樹木」を題材にした絵本を作ることにした。

村本美香さん:
実際にあった原爆について、被爆樹木のことだったので、私も広島で育ったので、その(藤原さんの)伝えたいって気持ちは本当に共感できました

全く経験のないところから絵本の制作に取り掛かった藤原さん。
読み聞かせボランティアの経験から、小さな子どもたちにも見てもらえるものを目指した。

藤原美香さん:
とにかく怖くない、怖くなくて手に取ってもらえる絵本にしなくちゃいくら作ったところでだめだろうなと思っていたので

普段は中学生と高校生の子どもを持つ母親として家事に追われる毎日だ。

ーどんなお母さん?

長男 雅弥さん(中学3年生):
う~ん、優しい

長女 彩花さん(高校3年生):
(お母さんは)ポジティブで、結構いろんなものに挑戦するタイプ。平和巡りをした時に、実はこの木は被爆樹木なんだよっていうのは軽く知ってたけど、そんなに詳しくはなかった

藤原さんが絵本を作ろうと思ったのは「被爆樹木の多くが爆心地に向いて傾いている」という研究結果を知ったからだ

爆心地の方向に傾いた桜の木。

被爆で傷つき反対側よりも成長速度が遅れる

この研究を行った筑波大学の鈴木雅和教授は、木が傾いたのは爆心地側が被爆で傷つき、反対側よりも成長速度が遅れたためではないかと考えている。

筑波大学 鈴木雅和教授:
爆心地側と反対側の差が時間とともに累積していって、木の形として爆心地に向かってお辞儀をしているような、けがもまだ癒えていないし、それでも生き続けていることの、被爆遺産としての重要さに、改めて気が付いた

あの日、多くの傷ついた人々がこの木の近くまで逃げてきた。
藤原さんは被爆樹木のメッセージを強く感じた。

藤原美香さん:
忘れないでって言ってるんだなって思ったんです。(樹木のことを知って)本当に私だけかなと思うぐらい鳥肌が私は立ったんですけどね。(完成したら)絵本を持っていろんなところに回りたいなって

絵は広島市在住のイラストレーター・瀧川裕恵さんに依頼した。

瀧川裕恵さん:
すごい体験をしてきた木たちに対して、色を鮮やかに生き生きしたものを表現したいなっていう…

5月下旬、ついに絵本が完成した。

絵本のタイトルは「きっときこえるよ」。被爆樹木が原爆が投下された日のことや、原爆によって家や友達を失った悲しみを語る。

「あの日原子爆弾というおそろしい核兵器が広島におとされたんじゃ。たくさんの人たくさんの物たくさんのわしの仲間なくしてしもうた」

絵本をきっかけに被爆樹木にも接してもらいたいと広島市内の被爆樹木の地図や解説も加えた。完成したのは150冊で制作資金は趣旨に賛同してくれる人たちからの支援で集めた。構想から1年半、思い描いていた通りの出来栄えとなった。

藤原美香さん:
中の絵と表紙がつながるんですよ、一つの絵になる。こういう風にしてるんですよね。まあ素敵。楽しみですね。これをどうみんなが見てくれるか…

忘れたいと思ったけど忘れてはいけない

藤原さんたちは出来上がったばかりの絵本を持って、制作を支援してくれた人たちの元を訪ねた。

藤原美香さん:
絵本をお届けに参りました

品川俊子さん:
本当にすばらしい。がんばられましたね

1945年に生まれた品川さん。父親の仕事の関係で北京で生まれたが、原爆で祖母と叔父が亡くなった。
同じ家にいて助かった叔母から大人になってから一度だけ当時の話を聞いたことがあったという。

品川俊子さん:
本当にその場におばあちゃんがそこにいて、ここまで出せて、それでも助けられないわけですよ。そのうちに火が回ってきて熱くなってきて、そこにおれないような状態。広島にはあなたのおばあちゃんみたいな人がね、何百人も何千人もいたことを忘れないでねって言ったんですね

本当は忘れたいと思ったけど忘れてはいけない…そんな思いから夫婦でピースボランティアの活動を行ってきた。

品川俊子さん:
若い方がね、それ(被爆樹木のこと)を感じてくださったことが嬉しい。よく作ってくださったなって。ちっちゃいお子さんもお母さんたちも、感じてもらえるんじゃないかな

完成した絵本は地元の小学校や図書館にも寄贈し、読み聞かせの活動を行っていくことにした。

平和について考えるきっかけになれば

この日、広島市南区の翠町小学校で絵本の読み聞かせの授業が行われた。
2年生の子どもたちに静かに語り掛ける。

藤原美香さん:
平和がええのう、平和ってどうしたらつづくんかのう、なあわしらに会いにきてくれんかそしたらきっとわしらのこえがみんなにも、きっときこえるよ

児童:
木の気持ちになってみたら、学校の友達とかがいなくなって、とても悲しい気持ちになると思いました。戦争はよくないから、二度としてほしくない

藤原美香さん:
小さな一歩をね、(平和について)考える、考えるきっかけですよね、そのきっかけに、この絵本がなってくれればと思ってますので

村本美香さん:
私たちもできることを少しずつちっちゃいことからやっていければと思っています

被爆から74年。

被爆者の高齢化も進む中、”物言わぬ証人”として今も原爆の実相を語る被爆樹木。
今度は絵本に形を変えて子どもたちへ平和の尊さを伝えていく。

FNN.jpプライムオンラインでは、8月6日(火) 8:00頃から、
平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)の様子を以下のURLにて配信予定です。


https://www.fnn.jp/live/1

(テレビ新広島)

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