寄生虫「アニサキス」による食中毒の報告が相次いでいることから、“生”ではなく“加熱”して食べることが推奨されているサバ。

こうした中、「安心して生で食べられる」と銘打った、サバへの問い合わせが今、増えている。そのサバが、JR西日本が養殖している「お嬢サバ」だ。

お嬢サバ(提供:JR西日本)
お嬢サバ(提供:JR西日本)
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JR西日本は2015年6月に鳥取県と「安心して生で食べられるサバ」の共同研究を開始。2017年6月から事業として本格的に養殖を始めていた。

「箱入り娘」から連想される「お嬢様」にちなんで名付けた

この「お嬢サバ」、なぜ、安心して生で食べられるのか? アニサキスの心配はないというが、一体どのように養殖するのか? そもそも、なぜ鉄道会社が魚介類の養殖を手掛けているのだろうか?

JR西日本の担当者に話を聞いた。


――「お嬢サバ」とは、どのようなサバ?

完全養殖の稚魚を、地下海水を使って「陸上養殖」することで、寄生虫が付かないため、加熱や冷凍処理をせずに安心して、生で食べられるのが特徴です。

刺身は青魚特有の臭みが少なく食べやすいうえ、白子や真子(魚類の腹にある卵)、肝まで食べられます。大きさは小振りですが、脂は甘く、しっかりと乗っています。

ネーミングは、寄生虫が付かなくなるという養殖プロセスから、“虫”が付かないよう大切に育てたという意味を込めて「箱入り娘」から連想される「お嬢様」にちなんで、名付けました。

※「お嬢サバ」の白子(提供:JR西日本)
※「お嬢サバ」の白子(提供:JR西日本)

――鉄道会社のJR西日本が「お嬢サバ」の養殖を始めた理由は?

まず、陸上養殖に参入した理由は「地域の新たな産業を作るため」です。少子高齢化や都市への人口流出により、地域の産業は衰退傾向にあります。この問題は地域に鉄道を走らす鉄道会社として、とても大きな問題です。

そこで、地域に産業を作ることにより、働く人を作り(=「雇用創出」)、住む人を作る(=「定住促進」)ことで地域経済が潤い、「地域活性化」を実現できれば、長い目線で見た時に、鉄道を使っていただける機会が増え、鉄道利用の維持・向上にもつながることを期待し、参入しました。

また、陸上養殖は「新たな地域産品」を創り出すことができます。この新たな地域産品を都市部で販売し、地域に目を向けてもらうことで、お客様に地域に足を運んでいただく(=「観光誘発」「交流人口拡大」)ことにもつなげることができます。

このような陸上養殖の可能性を信じ、まずは「お嬢サバ」の陸上養殖を地域の産業作りの先駆けとして、また、鳥取県の新しい地域産品に作り上げようとしたということです。