経済成長が著しいベトナムと積極的に交流を深めてきた新潟県。新型コロナウイルスの水際対策が緩和されたことを受け、2023年1月、新潟県の花角知事がベトナムを訪問した。新潟県が描く海外戦略の展望と課題に迫る。

「新潟県を認識してもらう」 花角知事のベトナム訪問

1月11日、新潟県の花角知事が降り立ったのは、ベトナムの首都ハノイ。ベトナムは県内企業の進出など、新潟県との経済的な交流が深まっている。

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花角知事はこれまで積極的に政府との関係を築いてきたが、新型コロナウイルスの影響でその活動は滞っていた。3年ぶりとなった今回の訪問には、花角知事のほか、県内の商工会議所や企業などから約50人が参加した。

花角知事:
経済面でも人材や観光を含めて、交流活動をさらに伸ばしていきたいという、その相手国としてベトナムへの期待が高いということを強く感じている。新潟県というものをベトナムの要人の皆さんに認識をしていただく。それが一つ、今回の訪問の大事な目的だと思っている

花角知事
花角知事

働き口少ないベトナム 「技能実習生」への支援求める

新潟を知ってもらうため、最初に花角知事が訪れたのは、外国からの投資の誘致などを担う計画投資省。県は2019年、ここに企業のベトナム進出などを支援する窓口「新潟デスク」を設置した。しかし…

計画投資省・ゴック副大臣と面会
計画投資省・ゴック副大臣と面会

計画投資省 グエン ティ ビック ゴック副大臣:
こちらから見ていて、新潟デスクの皆さんはちょっと仕事が少なくて…

面会したゴック副大臣は、2月にもオンラインで新潟とベトナムの企業をマッチングさせる機会をつくることを提案した。

一方、「それ以上にお願いしたい」と求めたのが、県内にいる技能実習生の支援策だ。

計画投資省 グエン ティ ビック ゴック副大臣:
県内のベトナム人技能実習生の具体的な支援政策を考えていただきたい。例えば、長く技能実習生が新潟で働けるようにするとか、ベトナムで新潟の企業の工場で代表を務められるようにするとか

花角知事:
技能実習生が新潟で有意義な働き方ができるように、環境整備にしっかりと関わっていきたいと思う。ベトナムに戻ったあとも、何らかの形で新潟の企業などにつながるようなことも意識していきたい

こうした中、熱い歓迎を受けたのは、技能実習生の送り出し機関だ。入り口には、歓迎の横断幕が張られ、明るい挨拶をしながら生徒たちが沿道に並んで出迎えた。

技能実習生の送り出し機関
技能実習生の送り出し機関

県内のベトナム人技能実習生は、2021年10月現在で2276人。5年前の2016年に比べ3.7倍にまで増えている。ベトナムがこうした人材の交流を強化するのには理由がある。

人材送り出し機関・ESUHAIの担当者:
若い人たちがどんどん採用されてしまうことになるので、やはりキャリアの途中で失職してしまうということになりやすい

人口約1億人のベトナム。増加する人口に対して働く場所が少なく、この機関によると、今後10年間で約200万人から300万人の失業が予測されているという。

こうした中で、ベトナム人が新たに就職する場合やキャリア形成のためには、日本での技能実習の経験が一つの武器になる。

花角知事は、集まった生徒たちに呼びかけた。

花角知事:
ぜひ、皆さんに新潟の企業で、あるいは新潟の関係する職場で活躍してもらいたい。技術を身につけて、それをいずれベトナムに持って帰って、さらにベトナムで活躍してもらいたい。そういう、皆さんを新潟県は多く受け入れたいと思っている

ベトナムの旧正月「テト」 大混雑の街で現地の雰囲気体感

一方、旧正月「テト」前の街には、様々なものが並び、大混雑していた。

縁起物であるキンカンや、桃の木を担いで走るバイク。また、2023年のベトナムの干支は“猫”ということで、猫をモチーフとした商品も多く見られた。

公務の合間に街を歩いた花角知事。

花角知事:
しかし、すごいカオスだ。以前は、こういうところには来ていない。本当に24時間滞在とか、弾丸だったので、初めて

現地の雰囲気を体感し、さらに公務への熱が入った花角知事は、在ベトナム日本国大使館で大使と意見交換を行った。

前国家主席と面会 「ウィンウィンの関係」で長い交流を

そして、最後に訪れたのが国家主席の官邸だ。

面会したフック前国家主席とは、首相だった3年前の訪問時にも面会している花角知事。互いに笑顔で握手を交わした。

グエン スアン フック前国家主席:
日本との交流の中で、ベトナムは地方間の交流を非常に重視している。今後、ぜひ新潟県知事においては、引き続きベトナムとの友好交流を継続して、さらに発展させていただくことを期待している

花角知事:
投資と貿易の経済関係の交流を、地方政府としてしっかり進めていきたいと思う。加えて観光の交流、あるいは人材の交流も進めていきたいと思っている

日本とベトナムは、外交関係を樹立してから今年で50周年を迎える。花角知事は、今後も政府との関係を継続していく考えだ。

花角知事:
ベトナムは人を育てるということに非常に強い関心を持っている。それを逆に、新潟県もウィンウィンの関係で活用させてもらいながら、同時に支援することで、将来にわたって長い関係で、ベトナムと付き合っていけるんじゃないかなと思っている

成長著しいベトナムで「新潟の存在感」高めるには…

一方で、課題も残っているのが現状だ。

ベトナムは社会主義国家で共産党による一党支配体制。経済的な交流を拡大するにも、政府にどれだけ新潟を認知してもらい、後押ししてもらえるかというのが、大きな意味をなしてくると言える。

今回、面会した2人の要人が話していたのが、ベトナムに「投資をしてほしい」ということだった。ベトナムは、2022年の実質GDP成長率が8%を超えるなど、アジアの中でも成長が著しく、日本国内のほかの自治体も関係の強化に向けて動いている。

こうした中で新潟の存在感を高めるには、いかに相手に投資し、メリットのある政策を打ち出すかが重要となる。

また、花角知事は今回の訪問でベトナムの格安航空会社「ベトジェットエア」と接触する機会を伺っていた。

新潟空港の活性化に力を入れる中で、インバウンドの拡大は欠かすことができない。しかし、現地企業などとの懇親会の場に関係者を呼ぼうと県が動くも、今回の接触は叶わなかった。

ベトナムとの経済・人材交流に向けた取り組みは、今後さらに加速していきそうだ。

(NST新潟総合テレビ)

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