譲渡が難しいと判断され、殺処分の対象となった犬たち。毛は抜け落ち、その姿は哀れに痩せ細っている。これから何が起こるのか、犬たちは不安そうに身を寄せ合う…そんな彼らの命を救いたい。保護犬の“最後の砦”として活動するNPO団体を取材した。

“殺処分ゼロ”を目指す

福岡・大野城市に2024年7月にオープンした「ピースワンコ・ジャパン福岡譲渡センター」。
広島県を中心に関東や関西など全国で保護犬の譲渡センターを運営するNPO団体で、九州には初進出となる。

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施設の犬たちは、愛護管理センターで殺処分の対象になった犬たち。引き取らなければ殺処分になってしまう。「ピースワンコは、行き場がなくなった子たちの最後の砦かなと思います」と話すのは、店長の本川咲子さんだ。

“殺処分ゼロ”を目指すピースワンコジャパン。
7月上旬、殺処分対象の犬がいるとの情報を受け、スタッフが向かった先は、福岡市の東部動物愛護管理センター。

鎖に繋がれていたのは、町をさまよっていたところを保護された際、警察官にかみついたという柴犬だ。貰い手がなく殺処分の対象となっていた。人間不信に陥っているのか、ピースワンコのスタッフが触ろうとすると不安そうにワンワンとほえる。

「この犬は、福岡のセンター“第1号”です。本当に迷子なのか、遺棄されたのか、それは分からないけど、いずれにせよかわいそうですね。我々が保護する犬は野犬がほとんどですが、柴犬が結構な割合でいます。柴犬はうなるとかかむとかで、割と殺処分の対象となるんです」とスタッフの安倍誠さんは話す。センター“第1号”の柴犬の名前は「めんたい」に決まった。

福岡県では、放浪犬や飼い主が分からない犬は一定期間、保健所に収容され、飼い主を見つけるための情報が公開される。それでも飼い主が見つからなかった場合は、動物愛護センターが保護団体などの協力も得ながら新しい里親を探すことになる。

そこで多くの命が救われるのだが、人に飼われたことのない犬や人との触れ合いが苦手でかんだりしてしまう犬は、収容期間内に飼い主が見つからず殺処分の対象となってしまうこともあるのだ。ピースワンコ・ジャパンでは、殺処分対象となってしまった犬たちをギリギリで助け出す活動に力を入れている。

数カ月単位で成長を見守る

福岡譲渡センターの引き取り第1号となっためんたい君。引き取られて半月が過ぎた。取材陣が近付くとちょっと警戒してか、ワンワンワンとほえ出す。

引き取り第1号となった「めんたい君」
引き取り第1号となった「めんたい君」

本川さんによるともしかしたら何かトラウマがあるかもしれないという。しかし「人は嫌いではなさそうなので、時間をかけて慣らしていったら、ちゃんと家族になれる」と温かく見守っている。

現在、めんたい君のほか、広島の施設から連れてきた保護犬10頭が暮らしているが、中には、まだ人との触れ合いに慣れておらず、おびえて、人前に出てこようとしない犬もいるという。そんな犬たちに対して、本川さんたちは地道に、数か月単位での成長を考えて接している。

「大変だけど、その分ちょっとした変化が嬉しかったり、1カ月前と比べて、『こんなに慣れたんだな』って思うのが、すごくかわいいです」と本川さんは笑った。犬たちに特別な訓練などはない。散歩をし、ご飯を食べ、愛情をたっぷり注いで触れあう。まずは人を信頼することが、第一なのだ。

4300頭の保護犬と里親を結ぶ

この日、施設に里親を希望する人が訪れた。保護犬の「ボタンちゃん」と触れ合いながら「サイトでボタンちゃんがいる情報を知って、写真を見たらすごいかわいいなって、実際に会ってみたら写真以上にかわいくて」と福岡譲渡センター初めてとなる里親になることを決めたと話す。

今後は、なるべくストレスを与えないように犬のペースでゆっくり距離を縮めていくという。

地道な活動が実を結び、ピースワンコジャパンでは、これまで全国で4300頭にも及ぶ保護犬を里親と繋いできた。「野犬でも、人に慣れることを知ってほしい。こういう子たちの存在がまだまだ知られいないので、こういう子たちがいることを伝えていきたい」と本川さんは笑った。

(テレビ西日本)

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