日本のコロナ対策と結果は「奇跡的」
「日本の中途半端なコロナウイルス対策がなぜか功を奏している」
米国の外交専門誌「フォーリン・ポリシー」電子版に14日こう題した記事が掲載された。
「コロナウイルスとの闘いで、日本は全てやってはいけないことをしてきたように思えた。例えば、テストは人口の0,85%しか行っていないことや社会距離の取り方も中途半端だし、なによりも国民の大半は政府の対応に批判的だったのだが、その死亡率は世界で最低だし医療崩壊も起こさず感染者の数は減少しており、不可思議なことながら全てが正しくいっているように思えるのだ」

記事は、14日現在で日本のコロナウイルスによる死者が687人、人口比で100万人中5人に当たり、米国が100万人中258人、スペインは584人、独でさえ94人であるのに比べて極めて少ないのは奇跡的だとしている。
記事は、日本の死者数は検査数が少ないため過小評価されているかもしれないとしながらも「他に肺炎などの死者が急増した兆しもない」という日本の医療専門家の話を紹介している。
秘密は「思いやる気持ち」や「潔癖症」?
それが「強制」ではなく、政府の「要請」で達成されたことに記事は驚く。特に政府が「ヒトとの接触7割から8割減」をお願いすると、ほとんどそれに近い数字が達成され、ゴールデンウィークの新幹線の乗車率が5%ほどだったことを挙げている。

記事は、その秘密は計り知れないとしながらも、日本人に他人を思いやる気持ちが強いことや潔癖性であることが背景にあるからかもしれないと結んでいる。
日本のコロナ対策については「海外から批判続出」などとよく報道されていた。またニューヨーク・タイムズ紙に「日本はコロナウイルスを処理できない。それでオリンピックを開催できるだろうか?」という日本の大学教授の投稿も掲載され、日本は国際的な標準で対応できていないと内外で信じられていた。
「集団免疫」方式を採用したスウェーデン
対照的に評価の高かったのがスウェーデンの対応だった。
スウェーデンは、コロナウイルスの感染を防止せずに多くの国民が感染することで免疫を獲得する「集団免疫」の考えから商店の営業など容認しマスクの着用も義務化されていなかった。全ては国民の「自主判断」に委ねたわけで「封鎖より自主性が奏功」とマスコミに評価されていた。

ところがスウェーデンのコロナウイルスの死亡者は増え続け、これを書いている時点で3674人に上った。人口100万人に360人と人口比では米国を上回った。だからと言ってスウェーデンが間違っていたということにはならないだろう。
国それぞれに国民性や政治のあり方に違いがある以上は対応に差があるのは当然だし、それを他国がとやかく言う権利もないだろう。
ただ「政治は結果だ」というのであれば、コロナウイルス対策がいかに「中途半端」なものであったとしても、その結果死者が「奇跡的」と言われるほど少ないのであればそれなりに評価されるべきだろう。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】