プロ野球・広島カープの現役選手が、指定薬物使用の疑いで逮捕された。フードを深くかぶり、うつむいたまま移送される姿は、グラウンドを駆け抜けてきた“足のスペシャリスト”とはあまりにも対照的だった。
2025年シーズンはキャリアハイの成績を残し、さらなる飛躍が期待されていただけに、ファンや球界に走った衝撃は大きい。問題となったのは、いわゆる「ゾンビたばこ」だ。

自宅から薬物、摂取に使う器具も

1月27日夜、留置所へ移送のため広島中央署から姿を見せた羽月隆太郎容疑者(25)。フードを深くかぶり、表情は確認できない。警察官に付き添われ、うつむいたまま車に乗り込んでいった。

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警察によると、羽月容疑者は2025年12月半ばごろ、日本国内で指定薬物の「エトミデート」を使用した疑いがもたれている。
エトミデートは、過剰に摂取すると手足のけいれんを引き起こし、歩行困難や錯乱状態になることもある薬物。ふらふらと歩く様子が「ゾンビのようだ」として、「ゾンビたばこ」とも呼ばれる。沖縄県を中心に摘発が相次いでいるが、広島県内での摘発は今回が初めてだ。

指定薬物「エトミデート」(資料)
指定薬物「エトミデート」(資料)

警察は12月16日、関係者からの通報を受けて羽月容疑者を任意同行し、尿を採取。その後の検査で薬物の陽性反応が出たことから捜査を進めていた。そして1月27日、自宅などを家宅捜索したところ、薬物や摂取に使われる器具が押収されたことが捜査関係者への取材でわかった。
一方、調べに対し羽月容疑者は「エトミデートを使った覚えはありません」と容疑を否認している。

“小さな体”でチーム最多17盗塁

羽月容疑者は宮崎県出身。2018年のドラフト7位でカープに入団した。

2018年の入団会見
2018年の入団会見

内野手として7年目を迎えた昨シーズンは、主に代走の切り札として起用され、キャリアハイとなる74試合に出場。チーム最多の17盗塁を記録するなど、その俊足で勝利に貢献してきた。

逮捕を受け、球団トップが取材に応じた。
松田元オーナーは「事実だとしたら、ファンの皆さんに申し訳ない。小さい体でプレーする姿を見て勇気づけられた子どもたちに申し訳ない」と話した。
今後の対応について、鈴木清明球団本部長は、本人が否認していることに触れつつも「逮捕という事実があるので、野球活動は停止という形にしたい」と述べている。
また、新井貴浩監督も「監督として大変重く受け止めている。チームの一員として自覚を欠いた行動であり、非常に残念だ」とコメントを発表した。

身近に迫る「ゾンビたばこ」の脅威

問題となった「ゾンビたばこ」は、指定薬物エトミデートを含む危険ドラッグだ。

多くは液体状で若者に蔓延(資料)
多くは液体状で若者に蔓延(資料)

一般的には、リキッド状の成分を「電子タバコ」で吸引するケースが多いとされる。電子タバコ自体は違法ではないため、心理的なハードルが低くなりやすい点が指摘されている。その手軽さも影響し、全国的に、特に若者の間で広がりを見せている。
エトミデートは海外では麻酔薬として使われる場合もあるが、日本では“未承認”の薬物で、2025年5月に指定薬物として所持や使用が禁止された。

球団によると、2025年3月の時点で「ゾンビたばこ」が若者に蔓延しているとの情報を受け、ファームの若い選手を集めて違法薬物に関する説明を行ったという。ただし、その場に羽月容疑者がいたかどうかはわかっていない。

現役選手の逮捕という事態は、球界だけでなく社会にも大きな衝撃を与えた。
実際に何があったのか、そして入手経路はどこなのか。真相解明に向け、捜査の進展が注目される。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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