プレスリリース配信元:株式会社帝国データバンク
イノベーション活動に対する企業の意識調査(2025年)

2025年度は第6期科学技術・イノベーション基本計画の最終年度であり、現在、第7期基本計画の策定が進められている。今後、策定プロセスが本格化するなかで、政府においてもイノベーション(DFFT〔信頼性のある自由なデータ流通〕の構築、サイバーセキュリティ強化、デジタル行財政改革、科学技術と産業の連携など)の推進を図っている。
そこで、帝国データバンクは、企業のイノベーション活動に対する見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2025年12月調査とともに行った。
SUMMARY
イノベーション活動は、2023~2025年の間に、企業の 35.9%が実施していた。ただし、10年前と比べると実施割合は3.5ポイント低下。タイプ別では、「プロセス・イノベーション」が19.8%で最も高く、「組織イノベーション」が19.4%で続く。イノベーションの効果では、「業務のデジタル化」の進展がトップとなるも、阻害要因では「能力のある従業員の不足」が4割近くにのぼる。今後は企業の半数近くでイノベーションに力を入れたいと認識している。
調査期間は2025年12月16日~2026年1月5日。調査対象は全国2万4,274社で、有効回答企業数は1万662社(回答率43.9%)。なお、イノベーション活動に関する調査は2015年8月実施に次いで2回目
本調査における詳細データは、帝国データバンクホームページ(https://www.tdb.co.jp)のレポートカテゴリにある協力先専用コンテンツに掲載している
イノベーション活動、企業の35.9%が実施も10年前より低下
過去3年間(2023~2025年)に、自社でイノベーション活動を実施したか尋ねたところ、企業の35.9%が何らかの形で実施していた[1]。ただし、10年前(39.4%)と比べると3.5ポイント低下した。
イノベーション活動の実施割合を規模別にみると、「大企業」が47.8%と半数近くに達していた一方で、「小規模企業」では26.3%にとどまり、規模が大きいほどイノベーションを行っていたという傾向がうかがえる。業界別では、『製造』『サービス』が4割台で高く、『運輸・倉庫』『不動産』『小売』などで低かった。最も高い『製造』と最も低い『運輸・倉庫』を比較すると、イノベーションの実施割合に18.0ポイントの差があった。イノベーション活動は、人材や時間、資金面で制約の多い小規模企業で困難さが表れたほか、業界間においても取り組みに顕著な違いがみられていた。

企業からは「AIの積極的活用を意識づける」(建設、小規模企業)や「イノベーションという言葉のもつイメージが先行している観はあるが、まずは地道に自社の業務内容およびプロセスを細かく見直し、改善できる点あれば一つずつ確実に実施していくことが肝要」(石油卸売、中小企業)などの意見が聞かれた。
タイプ別の実施状況はいずれも1割台、「プロセス」が19.8%で最も高い
過去3年間(2023~2025年)のイノベーション活動についてタイプ別[2]に実施状況を尋ねたところ、プロダクト・イノベーション[3]、プロセス・イノベーション[4]、組織イノベーション[5]、マーケティング・イノベーション[6]のいずれも1割台だった。このうち、「プロセス・イノベーション」が19.8%で最も多くの企業でイノベーション活動を実施していた。他方、マーケティング分野において比較的少なくなっている様子がうかがえる。

企業からは、「プロダクト及びプロセス・イノベーションは現在進行中であり、効果の確認は今後となる」(電気機械製造、中小企業)や「バックオフィスサポート事業において、需要があるサービスだと感じているが、新規顧客の獲得が難しい。どのようにマーケティングを実施していくのかが最近の課題」(貸家、小規模企業)などの声があがった。一方で、「プロダクト・イノベーションに関しては、マーケティング、ターゲティングとうまく組み合わせないことには進みにくい。また、単にラインナップを増やすだけではコストの増加にもつながりかねず、選択する方針が必要」(駐車場、大企業)といった、それぞれのイノベーションの組み合わせが重要だと指摘する意見もみられた。
イノベーションの効果、「業務のデジタル化」進展がトップ
イノベーション活動を実施した企業3,832社に対して、イノベーションによりどのような効果があったか尋ねたところ、「業務のデジタル化が進んだ」(36.8%)と「商品・サービスのラインナップが拡充した」(32.5%)がいずれも3割台となった(複数回答、以下同)。次いで、「商品・サービスの質が向上した」(22.7%)、「売り上げが増加した」(21.7%)が2割台で続き、「利益が増加した」「市場シェアが拡大した」「生産能力が拡大した」などを効果として捉えていた。

とりわけプロダクト・イノベーションを実施した企業では、「商品・サービスのラインナップが拡充した」が5割を超えており、自社の提供する商品やサービスが充実したと考える企業が多かった。また、プロセス・イノベーションを実施した企業では、「業務のデジタル化が進んだ」(49.8%)が5割近くとなり、全体を13.0ポイント上回っていた。加えて組織イノベーションにおいても42.8%にのぼり、業務工程や組織に対するイノベーションを進めることでデジタル化を促進していることがうかがえる。さらに、マーケティング・イノベーションを実施した企業では、「市場シェアが拡大した」(26.2%)が全体より10.4ポイント高かった。市場シェアを重視する戦略を考えている企業にとっては、マーケティング・イノベーションを実施することが効果的であることが示唆されよう。
イノベーションの阻害要因、「能力のある従業員の不足」が37.5%でトップ
すべての企業に対して、どのようなことが自社のイノベーションの実現やイノベーション活動を阻害する要因となったか尋ねたところ、「能力のある従業員の不足」が37.5%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「自社の専門部署の不足」(26.0%)、「イノベーションにかかるコストの高さ」(21.0%)が2割台、「技術に関する情報の不足」「経営層などの意識の不足」も上位にあげられた。
企業からは、「社内で新しいアイデアが出てこない」(一般貨物自動車運送、大企業)や「組織再編にともなう従業員の戸惑い」(パッケージソフト、大企業)、「JIS(日本産業規格)と業界団体(協同組合)による規制が、自由な発想の阻害要因になっている」(生コンクリート製造、中小企業)などの声があがった。

今後、半数超の企業でイノベーションに力を入れたいと認識
今後、イノベーション活動に力を入れたいと考えている企業は56.5%だった。タイプ別では、いずれも2割台となっていたが、なかでも「組織イノベーション」が29.0%で最も高かった(複数回答、以下同)。業務遂行の方法や手順などの業務慣行、権限の移譲、仕事の割り振り・編成などの職場組織、社外との関係構築といったイノベーションを通じて新しい変革を進めていこうとする認識が高くなる傾向がうかがえる。

10年前と現在ともにイノベーション活動「実施あり」は20.7%
2015年調査および2025年調査の両方に回答した企業3,792社の実施状況を調べたところ、いずれの時期もイノベーション活動について「実施あり」とした企業は20.7%となり、5社に1社にとどまった。2015年調査「実施あり」かつ2025年調査「実施なし」の企業は19.3%、2015年「実施なし」かつ2025年「実施あり」は14.3%で、いずれも1割台だった。一方で、両方ともに「実施なし」は45.7%にのぼり、半数近くの企業が10年前と現在においてイノベーション活動を行っていなかった。

企業からは、「コミュニケーションが活発化し業務の標準化が進んだ」(和洋紙卸売、中小企業)や「RPAの導入によって生産効率・労働力が向上」(損害保険代理、小規模企業)など、継続的なイノベーションの効果が業務の標準化や生産効率の向上に寄与していることを指摘した意見が聞かれた。さらに、長期的に実施してきたなかで、今後もイノベーションを続ける意向のある企業からは、「組織の活性化が必要で、人事・評価制度などの大幅な改定をやろうとしている」(木造建築工事、大企業)といった、さらなる改善を進めていこうとする様子がうかがえた。また、「組織イノベーションに関しては、長年のやり方や考え方を変えることは、すぐには難しいが、徐々に変わるよう地道な働きかけが必要」(印刷、中小企業)など、時間をかけて取り組みを考えていくことの重要性をあげる企業もあった。
第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けた議論が佳境を迎えるなかで、企業が競争力を向上させるためにイノベーション活動は欠かせない。
本調査によると、企業の35.9%が過去3年間に何らかの形でイノベーション活動を実施していた。しかし、10年前と比べると、イノベーションの実施割合は低下しており、今後の“稼ぐ力”を高める取り組みが縮小している可能性がある。とりわけ、小規模企業ほど困難な状況に直面していることは10年前から変化しておらず、依然として課題を解消できていない実態が改めて浮き彫りとなった。
他方、イノベーション活動をタイプ別にみていくと、プロセス・イノベーションへの取り組みがタイプ別のトップとなり、いかに業務効率の向上やデジタル化の推進を重視しているかが表れている。また、組織イノベーションが2番目に高くなっているほか、今後の取り組みでは最も高い。企業がより筋肉質かつ柔軟な組織へ変貌することが、不確実性の高まる事業環境に対応する要となろう。中小・零細企業は、組織イノベーションやマーケティング・イノベーションを実施することによって、生き残りを図ることが可能となる。
[1] イノベーション活動として、プロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーション、組織イノベーション、マーケティング・イノベーションのいずれかを実施した企業
[2] 各イノベーション・タイプは、国際標準となっているOECD and Eurostat「オスロ・マニュアル(イノベーションに関するデータの収集、報告及び利用のためのガイドライン)」(2005, 2018)の定義に基づいている。
[3] プロダクト・イノベーションとは、自社にとって新しい製品・サービスを市場へ導入することを指す。既存の知識や技術を組み合わせたり、新しい用途へ転用したものを含む。例えば、機能や性能、使いやすさ、ソフトウェア、提供方法(サービス)について、新しいまたは既存の製品・サービスを大幅に改善したもの。有形物だけでなく小売や保険など無形物も含む
[4] プロセス・イノベーションとは、自社における生産工程・配送方法・それらを支援する活動(プロセス)について、新しい方法や既存の方法を大幅に改善したものを導入することを指す。例えば、技法や装置、ソフトウェア、生産工程、配送方法、流通方法、保守システム、購買・会計・コンピュータ処理などについて、新しいまたは既存の製品・サービスを大幅に改善したものも含む
[5] 組織イノベーションとは、業務慣行や職場組織の編成、他社や他の機関など社外との関係に関して、自社がこれまでに利用してこなかった新しい組織管理の方法を導入することを指す。例えば、業務遂行の方法や手順などの業務慣行、権限の移譲、仕事の割り振り・編成などの職場組織、社外との関係構築に関する新しい方法なども含む
[6] マーケティング・イノベーションとは、自社の既存のマーケティング手法とは大幅に異なり、なおかつこれまでに利用したことのなかった新しいマーケティング・コンセプトやマーケティング戦略を導入することを指す。例えば、製品・サービスの外見上のデザインの大幅な変更、自社にとって新しい販売促進方法・手法、販売経路、価格設定方法なども含む
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データ提供 PR TIMES
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