東日本大震災の発生から2026年3月で15年です。
ノンフィクション作品の執筆に向けて、毎年被災地を訪れているイギリス人の作家がいます。自らも心に傷を抱えるこの作家と三陸の人たちが交流する姿を取材しました。
※(注)一部津波の映像が流れます。

岩手県釜石市の海辺にたたずむ旅館・宝来館に、2025年12月、イギリス人の男性が訪れました。
作家で、セラピストとしても活動しているジュリアン・セジウィックさん(59)です。

来日は1年ぶり。再会を楽しみにしていた人たちがいました。

一人は佐々木守さん(71)。東日本大震災の発生当時、釜石市の防災課長を務めていました。
もう一人は、宝来館で長く女将を務めてきた岩崎昭子さん(69)です。

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「(岩手に)戻るのはとてもうれしい」

渡航費を工面し、4年連続で岩手を訪れたジュリアンさん。
そこにはこんな思いがありました。

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「大震災が僕の人生を変えた。毎年東北に戻らなきゃ。ご縁です」

少年時代から日本が好きだったジュリアンさんは、2018年以降、岩手・宮城・福島を度々訪問。
被災地で出会った人たちが心の回復を進める姿に引き付けられたといいます。

宝来館で宿泊客への語り部活動を続けている岩崎さんも、その一人です。

宝来館 岩崎昭子さん
「この経験はこれからのための準備なので、一緒に生き続けましょう、準備しましょう、勉強しましょう」

震災当日、宝来館は2階まで浸水しました。
岩崎さんも津波にのまれましたが、九死に一生を得ました。

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「昭子さんの話を聞きました。毎日毎日自分のトラウマについて話しています。強い心がある」

ジュリアンさんは被災地での交流をもとに、2021年に小説を出版します。
タイトルは「TSUNAMI GIRL」。

友人の漫画家と作り上げたこの本は、津波で祖父を亡くした15歳の少女が困難と向き合う姿を描いたもので、イギリスで権威ある児童文学賞「カーネギー賞」の最終選考にも残りました。

ジュリアンさんは普段「TSUNAMI GIRL」の本を携えてヨーロッパ各国の学校を訪ね、岩崎さんら被災者から得た学びを生徒に伝える活動をしています。

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「その回復、その強さはとても役に立つ。イギリスの生徒たちに」

そんなジュリアンさんは2022年、深い悲しみに見舞われました。
2歳年下の弟・マークスさんを亡くしたのです。(54歳で亡くなった)

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「自殺しました。彼は3回結婚、3回離婚。怒りの問題があって精神病になってしまった。悲しい、グリーフ(喪失感)、怖さ、怒り、罪悪感。たくさん罪悪感がありますね」

1年前の2024年の10月に岩手を訪問した際、ジュリアンさんは亡くなった人に思いを伝える大槌町の電話ボックス「風の電話」を訪ねました。

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「まだ寂しい。本当にごめんなさい。最善を尽くしたけど、及ばなかった。」

現在(2026年1月時点)は東日本大震災についてのノンフィクションを執筆中のジュリアンさん、再会を果たした岩崎さんと佐々木さんにプレゼントがありました。

宝来館 岩崎昭子さん
「ジュリアンすごい」

元釜石市防災課長 佐々木守さん
「すごい、ありがたい」

ノンフィクションの予告編として自費出版した冊子。タイトルは「希望が宿るところ」。表紙には宝来館の写真が使われています。

宝来館 岩崎昭子さん
「“希望のある宿”という紹介が、私が思っている宝来館への思いと全く一緒なので、それを世界の人に広めてもらっているのがすごくうれしい」

岩崎さんの紹介にはこんな言葉がつづられていました。

-毎晩宿泊客に自分の話を語り続ける彼女は、ハートウォーミングな存在-
-昭子さんは恐怖に立ち向かうことを選びました-

ジュリアンさんは震災から15年が経つ今の活動について尋ねました。

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「昭子さんは(語り部活動を)まだまだ毎日?」

宝来館 岩崎昭子さん
「毎日している」

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「何回も何回も(津波の)動画を見ると、あなたの気持ちは変わってくる?」

宝来館 岩崎昭子さん
「不思議と、何かあれを見て話し続けて変わっているわけではなくて、あったことを伝えることが自分の義務だと思っている。(発災30年の)2041年までは頑張ろうと自分の時間のタイミングを決めたので、目標があって生きるのでワクワクしている」

釜石市では津波で1064人が犠牲となりました。
震災当時、市の防災課長でその責任を強く感じていたという佐々木さん。
ジュリアンさんは冊子でこうつづっています。

-その肩にのしかかった悲しみと罪悪感は計り知れない-
-罪悪感は「全く消えていない」と彼は言う-

そして佐々木さんが現在、二度と同じことが起きないよう全国で伝承活動に取り組んでいることも紹介されています。

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「15年が経った。どういう気持ち?」

元釜石市防災課長 佐々木守さん
「震災当初はやっぱり海に行くのも嫌だったけど、今はやっぱり海っていいなと思う。普段は景色もいいし、おいしい食べ物もある。津波だけは何十年に1回とか、100年に1回とかなので、その時人間がどうすればいいかだけなので海は何も悪くないと思う」

3年前、最愛の弟を失い、三陸の人たちとの交流を自身の回復にもつなげてきたジュリアンさん。
岩手で過ごす時間は特別だと言います。

イギリス人作家 ジュリアン・セジウィックさん
「直接に感情とか思いとか、触ることできる。とても大切ですね。イギリスではみんなが希望を探しています。だから本当の話(ノンフィクション)を読んだら、もしかしたら役に立つ」

未曽有の災害を越えて歩み続けてきた三陸の人たち。
ジュリアンさんはその姿を世界に伝えるノンフィクションを、2027年までに書き上げるつもりです。

岩手めんこいテレビ
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