ハンセン病患者を強制隔離した「らい予防法」が撤廃されて、2026年で30年を迎えます。しかし、元患者や家族への偏見・差別は、いまだ根強く残っています。91歳、元患者の男性の思いです。

【2026年:元日】
〇初日の出を見にやってくる人
(若者グループ)
「地元です」
「小学校の同級生」

多くの若者や家族連れが初日の出を拝みにやってくる絶景スポット。かつて、ここは、ハンセン病患者を隔離するための島でした。

瀬戸内市のハンセン病療養所・長島愛生園。入所者自治会長の中尾伸治さん(91)。高齢化や体力の衰えなどから現在66人いる入所者のうち、自治会の役員は中尾さんだけになりました。

元旦の園内放送は、自治会長の大事な仕事です。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「明けましておめでとうございます。今年も皆さんの力をもらって自治会活動を進めたいと思います」

元患者たちを苦しめた「らい予防法」は、1996年に撤廃されました。始まりは明治時代、1907年の法律「癩(らい)予防に関する件」とされ、1931年には「癩予防法」が成立。ハンセン病患者の強制隔離が進められます。

強制隔離に反対する患者たちの活動も起こりましたが、昭和28年、1953年に改正された「らい予防法」では、ハンセン病が治る病気であることは広まらず、患者たちの反対を押し切って隔離政策が継続されました。

らい予防法は30年前にようやく撤廃されましたが、中尾さんはハンセン病療養所で80年近く暮らしています。

【2025年 大みそか】
(食事が届く)
Q:大みそかですけど・・・
(職員)
「年越しそばですね。中尾さん!今年もお世話になりました」
(中尾伸治会長)
「ありがとう。またいい年をね」

取材にやってきた記者を、中尾さんはもてなしてくれました。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「昭和28年(1953年)が勝負だった」

少しお酒が入った中尾さんから、閉じ込めた思いがこぼれます。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「国家賠償請求訴訟の時、弁護士がたくさん来て、人権のことをいうからだんだん腹が立ってきた。だったら昭和28年(法改正の時)知らん顔していたのかと若い弁護士に言った。昭和28年の時も同じ人権があったのでは」

【らい予防法撤廃から30年で何が変わったか?】

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「自分からハンセン病を離れないといけないと思っている、子供たちに話す時も、障害者として受け入れてほしいという言い方をする」

中尾さんの手は、病気の後遺症で不自由になりました。障害のある入所者はいますが、現在の療養所にハンセン病患者は1人もいません。

見えない”ハンセン病”を語り継ぐことは難しい時代です。

それでも、中尾さんは、”伝えること”を諦めない覚悟を、新年の「あいさつ」に込めました。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「現在納骨堂には3765人の方々が眠っている。偏見差別を受けながらこの島をつくり育て、自分たちが村づくりをしてきた人たちのつらかったこと、厳しかったこと、その生きた姿を伝え、再びこのようなことをしてほしくないためにも多くの人たちに伝えたいと思っています」

岡山放送
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