SDGsの取り組みをお伝えする「フューチャースマイルプロジェクト」
今回のテーマは、普段私たちが目にする食品トレーです。物価高など時代が変わる中で身近なものが日々、進化する姿に注目します。
【毛利祥子記者】
「普段私たちが利用するスーパーマーケット。食品が乗せられているこのトレーは、福山市の会社が作っているんです」
福山市に本社を置く「エフピコ」。食品トレー容器の国内シェア・約3割を占める国内最大手です。現在は1万種類以上の容器を作っています。
食品トレーが日本で使われるようになったのは、スーパーマーケットが誕生した約60年前と言われていて、その後、食生活やライフスタイルなど、時代に合わせて絶えず進化を続けています。
【毛利祥子記者】
「この容器はコロナ禍の持ち帰り需要が高まったときに開発された商品なんですが、開けてみますとスイカの断面のようなデザインになっています。蓋の裏はエンボス加工になっていて、蒸気が垂れないようになっています。蓋と本体を切り分けて食べやすい作りになっているんです」
特徴的なデザインと高い機能性を併せ持つ容器。トップシェアを支える要因の一つは、アイデア豊富な開発チームにあります。年間1500から2000もの新製品を作っています。
トレーはモノを入れるだけじゃない。
実際に販売している店側のニーズに、いかに寄り添えるかが開発のポイントだと言います。
【エフピコ 総合研究所ジェネラルマネージャー 広末康弘さん】
「底面にマットを敷いているが、それを極力少なくできればと。肉だったら若干の汁が出る、いうものを保持しておくという機能にしております。スーパーから、人手不足で陳列した後、徐々に解凍していくという話もいくつか聞いて、冷凍で固まった状態だからドリップが出るよということから発想を得たものでもあります」
例えばこちらの刺身用のトレー。曲線上の部分に切り身を乗せると立体的に見えるようになっています。
”つま、り”…、刺身の「ツマ」が必要ない画期的な容器なんです。
さらに、下のくぼみにドリップが溜まるよう改良した高機能なトレーは、消費者にアピールしたいポイントです。
消費者を意識したものづくりはこんなところまで…
2003年に開発された「セーフティエッジ」と呼ばれる縁の特殊な加工で、本体やふたで指をけがしないように作られています。
そして、今問われているのが「環境」への配慮です。
機能はそのままに、プラスチックの使用量を少なくし、環境にも人にも優しい容器が求められています。食品を乗せるだけにとどまらず、いかに付加価値をつけ、人手不足やフードロス削減といった、現代の課題を解決できるかが問われています。
【フレスタ多治米店 水産部長 浅野健太さん】
「どうしても今、人件費だったり、コストが上がってきている中でツマ、ここもお金がかかっているところだと思うが、そこを削減したのが大きいと思います。多種多様で、色が多いところが一番ありがたいところ。その中でフレスタに見合った商品を多種多様作っていただいていることがありがたいところだと思います」
この日行われていたのは、企画会議。小売店から営業担当者に寄せられた意見を新製品につなげます。
【打ち合わせの様子】
「今、米の価格高騰しているというのがあって、それに対して今398で、この容器で売っているんですけど398を498に変えたい、498の価格アップに負けない容器を作ってほしいという要望があっています」
物価高に頭を悩ませる弁当を販売する店舗からの相談。要望を丁寧に拾い上げ、形にしていきます。
【打ち合わせの様子】
「現行より一回り大きくして、米が高くなっているんですけど、値段据え置きではなく、値段を上げるので、一回り大きくして、いっぱいごはんが入るよと、ボリューム感を出したい」
「つまり感を出そうと思ったら全体的に赤がある方が絶対いいと思う」
トレイの容器にできることは何か?
値上げを感じさせず高級感を演出する。開発担当者の腕の見せ所です。
今回は赤や黒、金色を取り入れたデザインを印刷することになりました。まとまった意見はすぐ設計に移し、製品化します。このスピード感が1万種類もの豊富なラインアップにつながっています。
さらに、リサイクルへの対応は喫緊の課題です。脱プラスチックが叫ばれる以前から、環境を意識したものづくりが根付いています。
1992年には世界初となるリサイクル食品容器を開発。
実は、食品トレーとして再生できるのは、お湯を入れる容器以外で爪楊枝で簡単に刺せるもの。多くがゴミではなく、資源として再利用できるようになっています。全国3カ所にリサイクル工場を設け、スーパーなどに設置された回収箱で、集めたトレーを生まれ変わらせています。
福山市の工場に集まるのは1日約6トン。知的障がいがある人の雇用を積極的に行い、流れてくるトレーを白色と柄物、再生できないものに選別します。
お湯や洗剤でしっかりと洗浄してから細かくすると、1cm角ほどに小さくなりました。それから熱を加え、ペレットと呼ばれるプラスチックの粒にして再生トレーを作っています。
作る、再生するだけでなく、別の形でも環境問題の解決にアプローチします。2020年には、環境保護団体などに助成する基金も創設。毎年全国の団体を応援し、持続可能な社会を目指しています。
日々の暮らしを快適にしてきた食品トレー。さらなる進化に向けて歩みは続いてます。
【エフピコ 総合研究所ジェネラルマネージャー 広末康弘さん】
「我々の代表からよく言われるのが、”頼んだらできるんだろう”というのがあって、それに必死に応えていくというのが苦しみであり、チャンスをいただく機会かと思っております。時代とニーズにあったものを作りたい。お客さんの困りごとをしっかりと伺って、それに対応する容器を作りたいなと思っています」
いつも手にするトレーに、目を向けると感じられる社会の変化。商品を包み支えてきたトレーの容器は生活を、陰ながら支えてくれる存在になりそうです。