報道陣に囲まれガッツポーズを見せるのは 大相撲・九州場所で初優勝を果たした ウクライナ出身の関脇・安青錦関(21)です。
安治川部屋に所属し、 故郷・ウクライナ国旗の青色からとった四股名で 今や大人気となった安青錦関。
おばあちゃんが「タッチ~!」とすれ違いざまにハイタッチに応じる姿も。
記者とのやり取りで“おちゃめさ”も
優勝から一夜明けた24日朝、会見に臨むとさっそく持ち前の“おちゃめさ”を披露!
記者:
マナーモードは絶対でお願いします!
安青錦:
俺もかな~(スマホを渡す)
記者:
昨夜(23日夜)は何時に寝た?
安青錦:
朝5時くらい。
記者:
あまり寝ないまま今ここへ?
安青錦:
はい。気合で! (優勝決定戦は)今年の最後の一番だったし、悔いが絶対残らないように良い相撲で 終わりたいなという気持ちで土俵に上がりました。
23日夜の九州場所・千秋楽。
本割で大関・琴櫻を破った安青錦関は、12勝3敗となり横綱・豊昇龍との優勝決定戦へ。
力強く前に出ると、横綱の背後へ回り込み 「送り投げ」で横綱・豊昇龍を撃破!
初土俵から所要14場所での優勝を果たしたのは史上2番目のスピード記録です 。
史上最速での大関昇進も確実とした安青錦関。
記者:
おめでとうございます!
安青錦:
ありがとうございます。
記者:
新たな番付けで新年を迎えることになりそうだが ?
安青錦:
嬉しいですけど、またもう1つ上の番付けあるんで、そこに目指していきたいです。
21歳の若武者が手にした賜杯。その名の通り、故郷に“錦”を掲げた安青錦関。
“ウクライナ出身選手初の優勝”を掴むまでには多くの人の支えがありました。
家族と離れ2年前に初土俵 “両親を日本へ”
2年前、「新弟子検査」に臨んだ当時19歳の安青錦関。 家族への思いを口にしていました。
「お兄さんだけウクライナにいます。お父さんとお母さんはドイツにいます。お父さんお母さん日本に来て美味しいご飯食べたりとか買い物したり(したい)」
家族と離ればなれで過ごしながらも“大相撲で活躍して両親を日本に招きたい” という思いを胸に、稽古に励み続けました。
そして23日夜、初優勝を決めると 袴姿で師匠・安治川親方の元へ。
安治川親方:
おめでとう!
ガッチリと握手、そしてハグをかわした2人。 親方も愛弟子の快挙に目を細めます。
相撲ジャーナリストの横野レイコさん:
(安治川親方は)外国人力士を入れるということに積極的ではなかったが、(安美錦関が)すごく真っすぐに見つめる相撲をやりたいんだという真摯な気持ちが親方に伝わって、この子なら一緒に部屋を盛り立てていける”という思いで(受け入れた) 。
師匠について、安青錦は10月の会見で、こう話す。
「親方の現役のときの相撲は今でもよく見て勉強になるし、細かいところ教えてもらってるんですけど、どういうことかは言えませんけどバレちゃうので!(笑)」
「自分たぶん安治川部屋じゃなかったら、こんなに早く三役に上がってないと思ってるんで…親方のお陰です。」
来日のきっかけは「ハロー!」の出会い
そしてもうひとり、安青錦関を支えた“恩人”について安青錦は
「きっかけとしては2019年に相撲の世界大会に出て、その時に関西大学のキャプテンと知り合って…」 と話す。
当時18歳の安青錦関が笑顔で肩を組むのは 関西大学の相撲部でコーチを務める山中新大さん。
安青錦関が日本へ来るきっかけとなった人物です。
関西大学相撲部コーチ・山中新大さん :
(2019年の)世界大会で彼がウクライナ代表として出場して、本当にいい相撲を取ってて、僕の方から「ハロー!」と話しかけたのが最初の出会い。
15歳ながら18歳以下の世界大会で 3位に輝いた安青錦関。
山中さんから声をかけ、交流が始まったといいます。
その後、ロシアによるウクライナ侵攻が始まると…
関西大学相撲部コーチ・山中新大さん :
ロシアによる軍事侵攻が始まって2022年の2月の下旬に僕の方から『大丈夫?』というふうにメッセージを送ったら、彼の方から『日本へ避難できますか?』とメッセージが来て。
戦火を逃れて日本へ。
山中さん家族の元に下宿しながら 稽古に励んだといいます。
その後、角界入りすると、山中さんの名前「新大」を自らにつけた安青錦関。
今場所、ついに初優勝を果たしました。
関西大学相撲部コーチ・山中新大さん :
3年前ずっと一緒に住んでた子が、大相撲幕内で優勝してるって考えたら、本当にいろいろこみ上げてくるものっていうのはありましたね 。
様々な人たちに支えられた日々。
力強く前に出る相撲で快進撃を続けた安青錦関。
強さの源となったスポーツジムでの 筋力トレーニングを支えたトレーナーは
「師匠の教え、日頃の稽古、 ジムで意識的に取り組んだものが合わさり、15日間しっかり表現できた事が安青錦関の強さだと感じております。」 と話す。
故郷の人たちにも勇気を 角界は“3強時代”へ
安青錦関も来店し、 ボルシチなどを堪能したという 都内のウクライナカフェでは―――。
カフェで働くウクライナ人のイリーナさん:
まるで自分の息子か孫が成し遂げたような嬉しさでした。ウクライナ人にとってはとても大きな出来事です。
NPO法人日本ウクライナ友好協会副理事長のウクライナ人男性:
安青錦の優勝みたいな嬉しいニュースに私たちはとても勇気づけられて、もう1回がんばろうという火が燃えてきて本当に誇りに思っています。これからも頑張っていただきたい。
NPO法人日本ウクライナ友好協会 副理事長の男性そして、今も尚、戦火の最中にある故郷 …ウクライナの街からも喜びの声が聞かれました 。
ウクライナ・キーウにいる女性:
昨日喜びながらこのニュースを見ていました! こんなに素晴らしいウクライナ人がいるのだと 驚きました。
優勝から一夜明けた会見で、安青錦は―――。
「ウクライナの友達だったり、両親からも連絡いただいて。お母さんは泣いてましたね。お父さんも泣いてたらしいですけど自分には見せなかった。」
相撲ジャーナリストの横野レイコさん:
豊昇龍関も次は絶対に負けないと言って、ケガを治した大の里関も復帰しますし、3強時代”の幕開けだと思います」。
角界は“3強時代”へー。 初土俵から史上最速での大関昇進が確実な安青錦。
気になる伝達式での「口上」は!?
記者:
大関昇進の「口上」は何を話す?
安青錦:
きのう(23日)親方に『自分で考えろ』と言われたんですけど(会場笑)。俺だったら『頑張ります』しか出ないから、自分らしく考えていきたいです」。
大関昇進の伝達式は26日に行われます。
