新潟県の花角知事は11月21日、東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働を容認する考えを示しました。この再稼働容認という判断までにどのような経緯をたどったのか振り返ります。

■2023年 福島第一原発事故めぐる県独自の3つの検証が終了

6号機が定期検査に入り、柏崎刈羽原発の全ての原子炉が運転を停止したのは福島第一原発事故の翌年2012年のこと。それから10年後の2022年…。

【岸田首相(当時)】
「設置許可済みの原発再稼働に向け、国が全面に立ってあらゆる対応を取っていく」

福島第一原発事故後、原発への依存度を減らすとしてきた政府が原発回帰を宣言。その翌年には11年の歳月をかけた福島第一原発事故をめぐる県独自の3つの検証が終わります。

【花角知事】
「これで県独自の検証は1つ区切りがついて、議論もこれから福島ではなくて柏崎の柏崎刈羽(原発)の議論を始める。その重要な材料ができ上がったと思う」

そして年末には、テロ対策の不備が相次ぎ原子力規制委員会が柏崎刈羽原発に出していた事実上の運転禁止命令が解除されました。

【原子力規制委員会 山中伸介 委員長】
「あくまでもスタートラインであるという認識」

■再稼働への動き加速 県民理解・避難道路…国・東電へ様々な要望

ここから再稼働への動きが一気に加速することになります。去年3月…

【花角知事】
「地元の理解を求めたいという電話があった。(Q.理解というのは何について?)原発の稼働について」

経産大臣が柏崎刈羽原発の再稼働について県・柏崎市・刈羽村に対し理解を要請。

【花角知事】
「国がもし稼働させたいということで進められるならば、前面に立って県民に対し原子力発電所の必要性や安全性についてしっかりご説明いただきたい」

花角知事が県民の理解を得る努力は国が前面に立って行うよう求めれば…

【岸田首相(当時)】
「柏崎刈羽原発については原発事故を起こした東京電力への不安の声があることは正面から受け止めていく」

政府が即座に対応。さらに、かねてから県・柏崎市・刈羽村が要望していた避難道路の整備も着手します。

【資源エネルギー庁 村瀬佳史 長官】
「設置決定された避難路の整備促進に向けた協議の枠組みの立ち上げはその具体化に向けた重要な1歩になると考えている」

国と県による避難道路の整備などの具体化に向けた協議が始まりました。そして今年に入ってからも花角知事の要望活動は続きます。

【花角知事】
「柏崎刈羽原発で発電される電力が首都圏に送られているだけで、地域にとって恩恵を受けていない、メリットがない」

原発立地地域の振興を求めるとともに避難道路の整備などに対する支援の対象範囲を原発から半径30km圏内のUPZまで拡大するよう要望。すると…

【石破首相(当時)】
「地元の要望も踏まえながら原発立地地域の生活環境や産業基盤の整備を進めるための特別措置法について対象地域を拡大するなど地域振興の取り組みを着実に強化してください」

政府は原発立地地域の振興に関する特措法の対象範囲の拡大を閣議決定。10月には臨時の県議会で東京電力も県の要望に応えます。

【東京電力 小早川智明 社長】
「資金拠出の額については1000億円規模を考えている。この資金拠出を進めていくにあたって今後、県と十分にご相談させていただきたい」

1000億円規模の資金提供に加え、原発の集中立地に対する不安を低減するため6号機の再稼働後1年半程度で1・2号機の廃炉を判断することを表明したのです。

■花角知事 再稼働是非判断への材料集め

再稼働を急ぐ国・東電に様々な要望を突きつけ、のませるのと同時に花角知事は再稼働に対する自身の判断を下すための材料を集めます。

【花角知事】
「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の問題についてぜひ皆さんから率直な今のお考えなり、お気持ちを聞かせていただけたら」

県内の市町村長との意見交換や公聴会・県民意識調査の実施。最後に自身の目で柏崎刈羽原発、そして福島第一原発を視察しました。

【花角知事】
「判断をする前に聞いたり、見たりしたほうがいい、考えておいた方がいいと思っていたものはもうない」

【解説】時間をかけて下した“再稼働容認”の判断

2018年の就任以降、常にこの原発再稼働という問題と対峙してきた花角知事。今回下したのは“再稼働容認”という判断でした。

〈Q.かなり慎重に時間をかけて判断を下したという印象〉

そもそも東京電力がテロ対策の不備などで再稼働の議論をできる状況になかったことも影響していますが、花角知事は原発の安全対策などについて国への要望を続けてきました。

ここへきて、ようやくその要望に対する国や東電の回答が出て安全対策などへの一定の目途がついたことで決断に至ったものとみられます。

〈Q.ただ、知事が判断材料の一つとした県民意識調査では、再稼働の準備が「整っていると思わない」と答えた人が「どちらかと言えば」も含めると6割に達している〉

その一方で、この調査では安全対策などへの理解度が高まれば条件が整っていると考える人が増える傾向にあることも示されていて、花角知事は今後の国などによる説明でこの部分は改善できると判断したと話しています。

NST新潟総合テレビ
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