「1分ナンテ待たせるもんですか」と書かれた看板が掲げられている長野県松本市の大衆食堂。67年続く店の人気メニューはカレーで、提供スピードの早さ、変わらない味が魅力だ。先代の父親から引き継いだ2代目夫婦が今も伝統を守り続けている。

「カレー」が人気 67年続く大衆食堂

松本市蟻ケ崎にある昭和レトロな店構えの大衆食堂「キッチンモーリ」。

看板メニューは「カツカレー」。

看板メニュー「カツカレー」
看板メニュー「カツカレー」
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洋食中心にさまざまなメニューがあるが、多くの客が「カレー」を注文する。

市内から:
「辛かったり、スパイスの香りが強いわけではなく、誰でも子どもでも食べられるかなと思って」

カツカレー
カツカレー

店を営むのは森健悟さん(76)と妻の育世さん(72)。夫婦で67年続く食堂を守り続けている。

キッチンモーリ 2代目店主・森健悟さん:
「あっという間でもあったかもしれないけど、やみくもにやっていたのでそれだけ年代を経た」

「1分ナンテ待たせるもんですか」

「キッチンモーリ」は1958年に先代の父・森英司さんが松本市大手に1号店をオープン。

当時、周辺にはバス停や映画館があり、待ち合わせに利用する客が多くいた。

そこで、先代の英司さんは「1分ナンテ待たせるもんですか」と書かれた看板を設置。

1号店
1号店

すぐに提供できるカレーを看板メニューにすると人気となった。

健悟さん:
「忙しい人にはすぐ召し上がっていただける。それをもってアピールしようと」

人気店となった「キッチンモーリ」。1967年には蟻ケ崎に2号店を構えた。

慶応大学を卒業 教師を経て店を継承

健悟さんは慶応大学を卒業後、都内の高校などで英語教師をしていたが、店を継ぐため1978年に帰郷。

英司さんのもとで店を手伝いながら料理を学んだ。

健悟さん:
「なんとなく自分の家で商売をやっていると、それ(店)をやるという方向でやってきた」

キッチンモーリ 2代目店主の森健悟さんと妻の育世さん
キッチンモーリ 2代目店主の森健悟さんと妻の育世さん

1981年に育世さんと結婚。2002年、先代が引退する時に1号店を閉め、今は2人で2号店を切り盛りしている。

妻・育世さん:
「2人でやっているから、どっちが欠けてもできない。だんだん年を取って、話した時に『そうだね』『そうじゃない』とか言ってくれる相手がいるのはありがたい」

カレーは注文から提供まで30秒

2人は先代からの伝統を守り続けている。1つが提供の早さ。

今も「1分ナンテ待たせるもんですか!」の看板を設置している。

記者がストップウォッチで注文してから提供までの時間を測ってみると…

約30秒でカレーを提供
約30秒でカレーを提供

健悟さん:
「はい、お待ちどうさま」

客が他にいないときでしたが、注文から提供まで約30秒で提供された。

さすがにカツカレーは1分以内は難しいという。

隠し味にしょうゆ

そして、もう一つ守り続けているのがカレーの作り方。

オーブンで焼き上げた自家製のルーにケチャップ、ウスターソース、隠し味のしょうゆを加え、鶏ガラのスープで煮込んでいく。

健悟さん:
「ただソースだけじゃ日本人の味には淡泊だから、隠し味としてしょうゆを入れる」

懐かしい味のカレー
懐かしい味のカレー

どこか懐かしい味のカレーに仕上がった。

この味を求めて常連客が集う。

一番人気は、サクっと揚げた豚ロースのトンカツにカレーを合わせたカツカレー。

常連客
常連客

10年通う常連客:
「いつも同じ味でね、おいしい。長年来ているので、味に慣れちゃった」

約60年ほど通う常連客:
「昔からの味、これがほんとのスタンダード、俺に対して。今だとカレー屋さんもスープだとかいろいろやるけど、これが純粋ですよ」

5年通う常連客:
「奥さんも明るいし、気楽にしゃべれる」

「体力が続く限り続けたい」

どこか懐かしい雰囲気の店と60年以上変わらない味。

夫婦ともに70歳を超えたが、「体力が続く限り店を続けたい」と話す。

キッチンモーリ 2代目店主の森健悟さんと妻の育世さん
キッチンモーリ 2代目店主の森健悟さんと妻の育世さん

妻・育世さん:
「長いことやっていると、30年、40年ぶりとていう方もいて『やっていてありがとう』なんて言われたりね。やれるところまでという感じですかね。元気でいれば、やり続けたいな」

健悟さん:
「さまざまな人に味わっていただいて、満足していただいて、楽しんでいただければありがたい」

長野放送
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