東南アジアの国ラオスから日本へ留学を希望する若者に寄り添う“広島出身の女性”がいます。
彼女の笑顔のワケを、現地で取材しました。
シリーズ「ラオスと広島」最終日・第五弾です。
アジア最貧国の1つラオス。
途上国の中でも経済発展が遅れている“後発開発途上国”です。
首都「ビエンチャン」。
【花岡早織さん】「おいしそう」
【留学を希望するラオスの若者】
「焼きバナナ」
【花岡さん】「バナナなの?」
【若者】「お召し上がりください」
【花岡さん】「今、敬語を勉強しているからね」
尾道市御調町出身の花岡早織さん。
ラオスから海外へ向かう若者たちをサポートする民間企業で働いています。
日本への留学や仕事を希望するラオスの人に日本語だけでなく、文化や習慣、ルールなどを教える“アドバイザー”です。
花岡さんは大学卒業後、広島県内の高校で情報科の非常勤講師として勤務し、その後、「青年海外協力隊」として2年半、首都・ビエンチャンでパソコンのインストラクターを務めました。
ラオス語がわからず教材がない中での授業に無力感を感じたといいます。
【KPS・花岡早織さん】
「帰国していろんな経験をして、いろんなものを培った今だったら、何か貢献できることがあるのではないかと思った」
その後、再びラオスへ…
【花岡早織さん】
「一番自分にとっても心地いいし、能力を発揮できるところがラオスなのかなと考えるようになった」
【花岡早織さん】
「こんにちは」
「今こちらが日本語の教室。日本に行くのが決まった人や行きたい人のために日本語を教えています」
花岡さんが働く会社では、年間2、30人ほどのラオスの若者を日本に送り出しています。
《日本語の授業の様子》
「皆さんは、日本に行ったことがありますか?」
「いいえ、ありません」
この日も、日本語と向き合う若者たちの姿が…。
【花岡早織さん】
「(KPSでは)就労で行かせるというよりは、まず日本語学校に留学してもらう。その後働いてもらうというプログラムを組んでいる」
20歳になるバオさん。
「こんにちは」
【バオさん(20)】
「日本の文化に興味があります」
Q:日本ではどんな仕事をしたい?
「私は介護がしたいです」
貧しい家庭で育ったというバオさん。
“家族の生活を助けたい、そのためには知識を付けたい”留学を決意し日本語を勉強しています。遠くで暮らす家族も応援してくれています。
【バオさん(20)】
「いつも頑張ってください(と家族が言ってくれている)。一生懸命、日本語を勉強します」
この企業がサポートする留学生の多くは、「奨学金留学」を利用しています。
日本の企業などが日本語学校の学費を支援するかわりにその会社に就職するのが基本的な流れです。
ラオスの若者たちに学校や仕事の内容を単純に紹介するのではなく、「人生のためになる何かを提供したい」と話す花岡さん。
具体的な活動の1つが平和の大切さを伝えることです。
ラオスではベトナム戦争の時の不発弾が数多くあり、いまも死傷者が出るなど大きな課題を抱えています。
周辺の国では、いまも紛争が起きている現実もあります。
“広島出身者”として自分にできることは何か?
平和について考えてもらうワークショップを開くなど模索する日々です。
【花岡さん】
「8月6日は祈る日だと思って祈ってきたんですけど、だんだん祈っているだけだな自分、と思うようになって。原爆落ちた時代を経験していないので、そこを雄弁に語ることは難しいですけど、爆弾が人に対して何をもたらすかとか、それで悲しい思いをしている人がどれだけいるのかとか、そういったことについてはアプロ―チできるのではないかと思って」
協力隊員の時には、被爆し白血病で亡くなった佐々木禎子さんの物語「おりづるの旅」をラオス語に翻訳するなど、“平和への思い”を自分なりにかたちにしてきました。
【花岡さん】
「すごく真剣に考えてくれて琴線に触れた時間だった。ラオスに来ていろんな文化の違いは感じたんですけど、平和を祈る気持ちとか、平和がいいよねという思いは同じです。それを原爆展で感じました」
ラオスの若者とともに歩む花岡さん…
【花岡さん】
「人が成長する場所に寄り添えるのはすごく幸せな仕事だと思います。どんな形になるかわかりませんけど、ラオスにはずっと関わっていくんだろうなと思います。ここが自分の居場所なので」
自分が選んだ道を自信を持って歩んでいきたい。
だから、花岡さんは笑顔でラオスの若者たちに接しつづけています。
《スタジオ》
ラオスの皆さんに限らず、日本に働きに来ている方、勉強しに来ている方、外国籍の方が本当に多いのですが、来る前にこうやって皆さん努力されているんだと感じました。
【コメンテーター:元カープ・山内泰幸さん】
「花岡さんのアドバイスにも自信の経験が生かされてると思います。若い人たちの新たな挑戦に携われていることにすごくやりがいを感じておられるんじゃないでしょうか」
ラオスから日本への留学希望というのは多いんでしょうか?
【コメンテーター:武蔵野大学、叡啓大学・保井俊之教授】
「ラオスだけでなく東南アジアのいろんな国から日本に留学したいという人たちが増えてます」
円安とか日本の競争力が相対的に落ちてるんじゃないか、日本は最近元気ないんじゃないかという指摘もありますけど、それでも東南アジアの若者が日本を目指してやってくるのは、どういったポイントがあるでしょうか?
【コメンテーター:武蔵野大学、叡啓大学・保井俊之教授】
「ソフトパワーと言って、「漫画見ました」「アニメ見てました」「日本に関心を持っています」「日本にぜひ行きたい」という若者がたくさんいるんです。
そういう人たちが、日本に来てくれて日本とその国の架け橋になってくれるのはとてもいいことだと思います。
排除ではなく、多様な人が繋がっていくことで平和が保たれということを我々は教えてもらっている」
花岡さんもこれを支援とは思わずにお互い助け合って補っていくんだという思いを大切にしているということでした。