皆さん、福岡県の糸島エリアで栽培されるレモンをご存じでしょうか。
新たな特産品として収穫が進んでいて、この時期しか味わえない特徴があります。
博多の総鎮守、櫛田神社(福岡市)。
その近くに10月、1軒のカフェがオープンしました。
その名も「NOT SWEET」。
町家の雰囲気を残した店に入ると、奥行きのある空間が広がります。
このカフェでいただけるのが…
◆阿南文平さん
「糸島グリーンれもんのソフトクリームです」
◆記者リポート
「ありがとうございます。見た目もおしゃれですね」
糸島の「レモン」を使ったソフトクリーム。
「黄色」ではなく「緑色」のレモンを削りトッピングしています。
◆記者リポート
「ソフトクリームの甘さにレモンのさわやかな酸味がぴったり合います。口の中でレモンの香りもふわっと漂います」
このカフェは「糸島れもん」のコンセプトショップで、その味わいを様々な形で楽しめます。
カクテルのような見た目の「レモンスカッシュ」に…
堂島ロールを手がける洋菓子店とコラボしたロールケーキは、クリームに糸島れもんを混ぜ込んでいます。
カフェを立ち上げた阿南文平さんは元々は飲食店を経営するバーテンダーですが、7年前から農家としてレモンの栽培も始めました。
◆阿南文平さん
「栽培される場所と使う場所の距離が近い福岡県内においては、一番新鮮フレッシュな状態で使えるレモン。糸島でレモンの栽培が始まっていることを知ってもらいたい」
それにしても気になるのは、この「色」。
阿南さんがレモンを栽培する農園を訪ねると…
◆記者リポート
「どれも黄色じゃなくて青々としていますね」
◆阿南文平さん
「はい。10月頭からグリーンの状態から糸島グリーンれもんとして毎年出荷しています」
国内で多く流通するレモンは海外産で、長時間かけて日本に届くまでに黄色く色付くといいます。
そのためグリーンレモンは国産ならでは。
しかも、緑色のレモンは収穫時期が10月上旬からわずか2カ月ほどと「希少」です。
◆記者リポート
「酸っぱい。酸っぱさはあるんですけどツンとした酸っぱさではなくてまろやか。清涼感のある酸味です」
◆阿南文平さん
「黄色のレモンに比べると香りが強いというのが一番の違い。若々しいというかフレッシュ」
去年のバレンタインにはチョコレートブランド「ゴディバ」とコラボレーションした商品も販売され話題となりました。
少しずつ認知度が上がっている「糸島れもん」。
7年前、阿南さんが栽培を始めたきっかけは…
◆阿南文平さん
「このエリアに耕作放棄地が多くてどうにかしたいという地域課題があって、糸島はもともとかんきつミカンなどは作っていたので、レモンもいけるんじゃないかと」
耕作放棄地を再生・活用するため、同じく飲食店を経営する知人と共同で荒れた農地を借り上げ、1本1本レモンの木を植えていきました。
その数あわせて1000本。
しかし、レモンの栽培は順風満帆とはいかず…
◆阿南文平さん
「3カ月後にトマトみたいに植えてすぐ収穫できるわけではなくて、スパンが10年くらい。事業の採算まで。これだけ手をかける項目があるんだというのは始めてからわかった」
さらに皮まで食べられる阿南さんのレモンは除草剤を使わないため、草刈りだけでも一苦労でした。
決して“甘くはなかった”レモンの栽培。
その経験はカフェの店名の由来にもなっていました。
様々な苦労を経て誕生した「糸島れもん」。
最近は全国から発注が増えてきているといいます。
◆阿南文平さん
「糸島の特産品となり糸島といえば「グリーンから出すレモン」だよねとなれば嬉しい。とれたてのレモンがこれほどまでに香りが強くて素敵なことを知ってもらいたい」
阿南さんの熱意とこだわりが詰まった「糸島れもん」。
11月からは黄色く色付き始めるため、フレッシュな味わいを楽しめるのはあと1カ月ほどです。
この糸島れもんは現在、福岡県内を中心に全国の菓子メーカーや飲食店に出荷していて、スーパーや直売所では買えない希少なレモンです。
紹介した福岡市博多区のカフェ「NOT SWEET」では、糸島れもんのスイーツやドリンクを味わえますし、さらにレモンそのものも販売しています。
糸島れもんを使ったほかの商品もあります。
福岡県内で人気の和菓子店「富貴」では、糸島れもんを練り込んだ丸い形のカステラを販売しています。
爽やかな香りが大好評だそうで、春日市の本店のほか大野城市と福岡市の店舗でも販売しています。
そのほかにも、福岡では有名ホテルやレストラン焼き鳥店などでも使用されています。