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「定年後は地元に恩返しを」――富山市八尾町の中井義則さん(77)は、大手電機メーカーでの勤務を終えた60歳の時から16年間、町内会と自治会の役員を務め上げました。10月23日に全国組織の大会で長年の功績を認められ表彰された中井さんの歩みを追います。

「地元に貢献していない」先輩の一言がきっかけに

会社人生を終えた60歳のとき、中井さんは地域の先輩から「お前は今まで会社人で地元にまったく貢献したことない。定年と共に集落のことで協力せよ」と声をかけられました。

「恩返し、地域にお返しするという気持ちで始めました」と中井さん。副区長から始まった地域活動は、やがて町内会の上部組織である自治振興会の役員へと広がっていきました。

学校統合という難題に立ち向かう

中井さんが自治会の役割の大きさを実感したのは、旧八尾中学校と杉原中学校の統合問題でした。

「反対する地域の方々の意見をいかに聞きながら納得いただくか、当初、喧々諤々のスタートだった。大きな声も出して言い合ったこともあった」

合意形成は容易ではありませんでした。最終的には杉原地区にあるコミュニティセンターやスポーツアリーナに隣接して新校舎を建て、生徒の利便性を確保する一方、「八尾」の名を学校名に残すことで住民の理解を得ることができました。

新しい学校の校旗や部活動の備品は、自治会が地元企業から集めた寄付で賄われました。

地域と行政の架け橋として

中井さんは自治会の重要な役割について、こう語ります。

「地域の皆さんの不平不満を含めて聞きながら行政に要望していく、積極的にね。それが自治会に対する皆さんが頼りにする部分じゃないか」

地域の子どもたちの育成にも尽力してきた中井さんの取り組みについて、杉原こども園のすこやかこども福祉会・浅生幸子理事長は「いろんな形で文化祭とかにも子どもたちが全部参加する。地域に愛着を持った子どもを育てる点で、大変中井さんの尽力は大きい」と話しています。

「第二の人生」と呼べる充実した16年

自治会の活動は無償のボランティアです。しかし中井さんは、定年後の16年間の活動を通じて得たものは人生において掛け替えのないものだったと振り返ります。

「本当にたくさんの方と出会ったのが今の自分の財産になっている。第二の人生。自治会は」

人口減少や高齢化で町内会の維持が難しくなる中、中井さんの歩みは地域コミュニティの大切さと、定年後の生きがいについて考えるヒントを私たちに与えてくれています。

富山テレビ
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