客が従業員などに迷惑行為を行う「カスハラ」が社会問題となっています。三重県では全国初となる“罰則付き”の条例制定を目指していますが、こうした取り組みでカスハラを防止することはできるのでしょうか?

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■カスハラで「罰金50万円」!? 全国初の条例制定へ

10月14日、三重県議会の委員会に、2026年度に制定を目指す「カスハラ防止条例」の基本方針が示されました。

基本方針では、正当な理由がないにも関わらず、大声を出したり、長時間にわたるなどして、店員に謝罪を求めたりする行為などを「特定カスハラ」と定義しています。

これらの悪質な行為に対し「禁止命令」を出しても改善されなければ、50万円以下の罰金を科すことなどを盛り込む方針です。

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難波聖子県議:
「客観的に、録音するとか動画を撮るとか、そこで判断をするのか?」

三重県の担当者:
「録画やカメラとか、証拠書類をひとつの判断材料として、意見をいただくことになっております」

曽我正彦県議:
「カメラなどを設置できないような職場も多々あると思います」

三重県の担当者:
「事業主さんの方で対応していただくのかどうかも含めて、ご指摘の点も含めて検討していきたいと思っています」

全国で例のない、罰則付きのカスハラ防止条例に、街の声もさまざまです。

うどん店:
「『異物が入っていた、どうしてくれるんだ』と、明らかにお客さまの方で入れたような…。(条例は)ありがたいです」

カフェの客:
「どこまでで線引きするかでしょうね。あまり細かいところまでしちゃうと、ギクシャクしちゃうと思いますけど」

■命を守るため…ハラスメントは「断固拒否」

愛知県大口町のさくら総合病院では、すでに対策を進めています。およそ600人の職員が、年間のべ13万人の患者を受け入れていますが、かつては患者からのハラスメントに悩んでいたといいます。

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小林豊病院長:
「看護師さんに罵声を浴びせるとか、体を触るとか。入院生活をしている中で、敷地内でたばこを吸ってしまったり。入院生活は、われわれが設けたある一定のルールの中で過ごしていただかなきゃいけないんですけど、それを守れない方は一定数いらっしゃる」

24時間365日体制の医療現場で、業務に支障をきたせば、他の患者の命に関わる恐れもあります。

さくら総合病院では、2年前に患者からのハラスメントを断固拒否すると宣言しました。病院内の各所に警告するポスターを掲示し、身の危険を感じた場合は、院内放送で職員を集めるなどのマニュアルを作成しました。

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こうした努力によって、現在はハラスメントが疑われる行為がなくなったといいます。

小林豊病院長:
「過剰な権利を主張するような患者さんや、そのご家族に対するけん制球としてだけではなくて、医療機関を管理する者から、そこで働くスタッフに対するメッセージ。過剰なストレスを抱えないように、適正な形で医療機関を運営していくという、外と中の両方に対するメッセージとなる」

■「正当なクレーム」か「カスハラ」か 難しい“境界線”

三重県が制定を目指すカスハラ防止条例では、店側が客から「著しい迷惑行為」を受けた場合、まず県に申し出をします。これを県が審査し、認められれば、知事が禁止命令を出します。

その命令が出たにも関わらず、客がカスハラを繰り返した場合には、50万円以下の罰金などが科されるというものです。

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では「著しい迷惑行為」とは何なのか?三重県が示した基本方針では、正当な理由がないにも関わらず、大声や長時間にわたり謝罪や面会、利益供与を要求するなどとされていますが、その「境界線」はあいまいです。

例えば、すいている高速バスで席に座ろうとしたら、すぐ隣に別の客がいました。これに対して、席を替えてほしいというのは「カスハラ」でしょうか?

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カスハラの問題に詳しい、日本ハラスメント協会の村嵜要代表理事によりますと「交渉をすること自体は問題ないが、長い時間粘って出発時間が遅れるなど、バスの運行に影響があればカスハラにあたる」としています。

また、大声で威圧したり、捨て台詞を吐くなど、従業員に不安を抱かせるのではなく、必要な内容を淡々と伝えれば、カスハラにはならないとしています。

東海テレビ
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