寿司職人として修行を重ねるこちらの男性。

一人前を目指して「日々鍛錬」ですが、そこには、もう一つの意外な顔がありました。

真剣な眼差しで寿司を握るのは香川県出身の花城瑞樹さん、22歳です。

富山市内の寿司店で今年4月から修行に励んでいます。

*花城瑞樹さん
「小さい頃から寿司職人って非常にかっこいいなと」

この春就職するまで料理人としての経験はなく子どもの頃からの憧れを胸にゼロから挑戦しています。

先輩から包丁の扱いから握りの所作までマンツーマンで教わります。

練習で握った寿司の評価は…。

*とやま鮨 早川健一さん
「まだお客様に出せる商品ではない。シャリの大きさもバラバラ、こうすれば倒れてしまうお寿司。これはやり続けることでしか会得できないので、これからの伸びしろが楽しみ」

お客さんに自分が握った寿司を出せるのは年明けの見通し。

一人前の寿司職人を目指す花城さんですが、実はもう一つの顔があります。

もう一つの顔、それはウエイトリフティング選手です。

花城さんが富山に来た理由の一つが、勤務先が導入した「デュアルキャリア採用」です。

県内で飲食店を運営する富山市のビーラインが導入した制度です。

アスリートとして競技を続けながら、寿司職人としても働けるようアルバイトではなく、正社員として収入を安定させることで競技に打ち込める環境づくりを目指しました。

*ビーライン 大坪悟社長
「時間と給与が月のスケジュールの中でしっかりと組み立てられることによって競技にも打ち込める環境があると考えている」

会社では実業団選手とは違う寿司を握る経験そのものが、アスリートのキャリアにもつながるといいます。

*ビーライン 大坪悟社長
「日本人が(世界に)誇れる食文化寿司と自分が成し得たいスポーツの2つを地球上どこに行ってもできる環境を作るというのは本人にとっても非常にメリットがあることで、当社にとってでき得る最大のサポート」

中学時代から全国大会で優勝を重ね、日本大学在学中には2度の日本一に輝いた花城さん。

花城さんを魅了する競技の世界。

*花城瑞樹さん
「記録という面では完全に数値化されている。記録を1キロでも超えた瞬間が本当に楽しい」

その一方、練習で得たパワーは、寿司職人の修行に思わぬ形で影響して苦労することも。

*花城瑞樹さん
「まず、シャリをやわらかく握る(必要がある)。どうしても競技柄力を入れてしまうので、シャリを固く握ってしまうのでそこが困っている」

練習拠点は、富山市内にあるジム。

去年のパリ五輪に出場した村上英士朗選手が監修した施設です。

その村上選手の存在も花城さんが富山に来る大きな理由となりました。

*花城瑞樹さん
「目標ですね。オリンピアンになりたいというのもあって。(村上選手は)目標どころじゃないですね」(村上選手も競技をしていたというのもあって)環境は悪くないのだろうなとだいたい考えていた」

日中は寿司店で働き、夕方からはジムで練習。

仕事と競技の両立の裏には様々な工夫があります。

*花城瑞樹さん
「ゴールデンウイーク中とかお盆期間中は店が忙しい時期というのもあり、その時は練習強度を下げるが、練習時間を長くしたりして逆にお客さんがあまり来ていない時に練習強度を上げてその分時間も多めにとっている」

ウエイトリフティングと寿司職人。

勤務先が設けた「ディアルキャリア採用」では、「アスリート手当」や試合日などに充てられる「アスリート休暇」も設け、挑戦を支えています。

花城さんを支えているのは、職場の仲間たちも同じです。

*花城さん
「(試合の後)上司からご飯に誘われて、「頑張ったな」と言われたことがうれしかった」

村上選手の母・直江さんも、花城選手を見守る一人です。

*村上直江さん
「モチベーションは(村上選手より)花城くんの方があると思う。英士朗選手はいつも黙ってやっていてるが、彼はよし頑張るぞと自分に声援を送りながら、練習するタイプなので見ていても面白いし、応援している」

寿司店を訪れた客からも期待の声が上がります。

*リポート
「奥で魚をさばいている彼、ウエイトリフティングで優勝するほどの選手なんです」

来店客は
「えっ、そうなんですか、見た目わからないですよね。脱げばわかるってことですか。一番上のオリンピックを目指してもらいたい」

寿司を握る手とバーベルを握る手。

その手で夢を掴もうと奮闘する二刀流アスリート、花城瑞樹さん。

2つの道で一流を目指す挑戦の日々は続きます。

*花城瑞樹さん
「オリンピックに出場し、結果を残したい。欲を言えば金メダル。一番がいちばんカッコいいので。寿司リフターといえば花城だという感じになれば」

富山テレビ
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